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Re: 戦場のジュリエット ( No.22 )
日時: 2009/10/19 14:05
名前: ☆:.:苺羅:.:☆ ◆RP4/4zHHbo (ID: fQl/VR.0)
参照: 時は昭和の戦時中、暗黒の時代の中で一生懸命生きた少女が居た——by戦場のジュリエット

*10



 空襲警報が鳴った。

 私はいつものことだと思い、すぐに去ってくれることを祈ったけど……。

 今回は違った。

 クラスター爆弾と呼ばれる、爆弾が落とされた。

 私と花と春代は防空頭巾を被って、外に出た。

 燃え上がる炎の中、必死に逃げまとう人たち。

 その多くの人々は、隅田川へ逃げていった。

 その中でも溺死する人、水温が低すぎて凍死する人がいた。

 私も必死になって逃げた。逃げて逃げて逃げまくった。

 そのときであった。聞き覚えのある声がした。

 振り向くとそこには、凛子が立っていた。

 「凛子っ! 何してるの!? 逃げないと……」

 「……いいのよ、私はここで。純也君の居ない世界なんて考えられないの……」

 「えっ!? ……どういう意味?」

 「知ったのよ……あのあと、家にいったら、純也君は特攻隊に志願したんだって」

 「…………」

 私は逃げながら、沈黙が続いた。でも話を続ける余裕なんてなかった。

 今は逃げないと……逃げないと大変なことになる。

 そのときである。凛子のすぐ傍に、炎が襲い掛かった。

 「凛子っ! あぶない!!」

 「……いいのよ、私はこれで。もう人生に飽き飽きしたわ……さようなら。あの世で純也君と逢ってくるわ」

 そのとき、凛子の体に炎が覆いかぶさった。

 その炎は凛子の体を燃やし続けた。

 「凛子————!」

 

 ——次の日。

 この日の隅田川は、死体で溢れかえっていた。
 
 それだけじゃない。道に真っ黒になった死体がたくさんいる。

 私はそれをみただけでも、吐き気が襲ってきた。

 幸い、私の家族と私は一命をとりとめた。

 昨日の……凛子が燃やされた場所に行ってみる。

 そこには、やはり真っ黒になった凛子が倒れていた。

 「凛子……」

 憎かったはずなのに、なんでこんなにも悲しいんだろう。

 私はスコップで穴を掘ると、凛子の体を埋めてあげた。

 そしてゆっくりと、両手を合わせて目を閉じる。

 「ゆっくり……お休み……ね」