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Re: 戦場のジュリエット ( No.23 )
日時: 2009/10/19 16:42
名前: ☆:.:苺羅:.:☆ ◆RP4/4zHHbo (ID: fQl/VR.0)
参照: 時は昭和の戦時中、暗黒の時代の中で一生懸命生きた少女が居た——by戦場のジュリエット

*11



 1945年7月31日。
 
 アレから何度も空襲がやってきた。

 それでも生きている自分……。なんなの? 私って。

 ただただ早く戦争が終わることを祈っていた。

 郵便受けを覗きに行く。……2通の手紙が入っていた。

 1枚目は大和、2枚目は緑介からだ。

 「母さん、花、桜へ
 元気にしていますか? 俺もまぁ元気。
 東京は空襲で焼け野原になったらしいですね。
 俺は今、憎き鬼畜米英を討つために、一生懸命です

           大和より」

 「春代、花、桜へ
 元気にしていますか? 自分は今、シナで戦っています。
 毎日毎日、戦友が死んでいきます。
 それでも自分は、お国のために天皇陛下のために頑張ってまいります
      
        父より」

 こんな手紙ばっかりがくる。

 それでも生きていてくれてる、ということが確認できただけでも嬉しかった。

 でも本当は「生きて帰りたい」とか、書きたいのだろうけど。

 軍人がまず、手紙を拝見するのだ。

 軍にとって不利な手紙など、戦争を批判する手紙であれば、それは相手へ届かない。

 こうして私は毎日毎日、手紙を戦地へ送り続けた。

 今日も郵便受けを確認する……1通の手紙が入っていた。

 緑介からだろうか……大和からであろうか。

 差出人の名前は「二十純也」であった。

 私はびっくりして、手紙の封を切る。

 「千崎桜さんへ
 暑い日差しの中、いかがお過ごしでせうか。
 この度、僕はもうすぐ出撃することになりました。
 桜……今まで、18年間ありがたう。
 凛子もさぞがし、悲しんでおられるでせう。
 でも僕は、国のためになれて光栄です。
 ……最後にいいます。
 僕は実は君のことが、大好きでした。
 凛子の許嫁で、叶わぬ恋だとわかっていたので
 ずっと凛子が好きといってました。
 そうしないと、僕の心がこわれそうだったからです。
 本当は桜のことが愛しくて、溜まりませんでした。
 本当にありがたう、そしてさようなら

            純也より」


 私は喜びが胸にいっぱいに溢れるとともに、悲しみがあふれ出た。

 純也が本当は私のことを想っていてくれたのは、すごく嬉しい。

 だけど、もうすぐ純也はこの世にいなくなってしまうのだ。

 私はその場に泣き崩れた。