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Re: 戦場のジュリエット ( No.24 )
日時: 2009/10/20 13:20
名前: ☆:.:苺羅:.:☆ ◆RP4/4zHHbo (ID: fQl/VR.0)
参照: 時は昭和の戦時中、暗黒の時代の中で一生懸命生きた少女が居た——by戦場のジュリエット

*12



 1945年8月15日。
 
 この日は何か、重大な放送があるとあらかじめ教えられていた。

 そして私は朝からずっと、ラジオの前で座っている。

 「まだかなー」

 そのときであった。昭和天皇による、玉音放送が始まったのである。

 ……これは戦争が終結したという、本当に重大なお知らせであった。

 それよりもまず、天皇陛下の声を聴いたのがはじめてだったので、それにも驚いた。

 「堪えがたきを堪え、偲びがたきを偲び……」

 戦争は終わった。日本は負けた。日本は負けた。日本は負けた。

 今までの放送はなんだったの——?

 日本は神風が吹いて、勝利するんじゃなかったの——?

 圧勝していたんじゃなかったの——?

 様々な思いが頭の中で飛び交う。

 日本に騙されたという気持ちと、日本が負けたという悲しみで胸がいっぱいになった。

 春代はもう、泣いていた。


 数日後から、生き残っていた兵隊が帰還した。

 多くの人々は、自分の家族と出会えたことの喜びで、家族と抱き合っていた。

 「あっ……」

 花が素っ頓狂な声をあげた。

 緑介と……大和が帰還したのである。

 「父さん! 兄さん!」

 私は思わず叫んだ。やっぱり嬉しかったし、私は大和に抱きついた。


 1946年、日本国憲法公布(47年施行)。

 1947年、学制改革。

 女性に選挙権が与えられるなど、日本の民主化が進んでいた。

 その頃の日本を支配していたのは、GHQの最高司令官である、ダグラス・マッカーサー元帥だ。

 戦後の混乱期が幕を開けた頃、花は嫁にいった。

 「桜!」

 緑介のどすの利いた低い声が響きわたる。

 「はい?」

 「……3丁目の息子さんなんてどうだ?」

 そういって緑介は、男の人の写真を見せつけた。

 こういうのばっかりだ……。

 20歳になったから、そろそろ嫁に行かなくてはならない。

 でも私は絶対に嫁にはいきたくなかった。

 純也がもしかしたら、帰ってくるかもしれないから。

 そしたら、純也と結婚できる……!

 「いやです、私は……純也君の嫁になりたいのです!」

 「何をいっているんだ。純也君は……」

 「生きているかも知れないでしょう!?」

 「何を馬鹿なことをいっているんだ!
 純也君は特攻隊に志願したんだぞ。
 生きてるわけ……」

 「そんなことないわ! 私、今から確かめにいく!」