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Re: 戦場のジュリエット ( No.33 )
日時: 2009/10/22 12:59
名前: ☆:.:苺羅:.:☆ ◆RP4/4zHHbo (ID: fQl/VR.0)
参照: 時は昭和の戦時中、暗黒の時代の中で一生懸命生きた少女が居た——by戦場のジュリエット

*14—凛子目線—



 私は、桜から今日は純也君が風邪をひいて休んでいると聴いて

 心配になったので、家にお見舞いにいくことにした。

 花束をもって、貴方の大好きな紅茶を持って……。

 戸を叩くと、叔母さんの声がした。

 そして、ドアが開く……。

 「はいはい……あらっ凛子ちゃんじゃない、どうしたの?」

 「いえ……純也君のお見舞いにきまして」

 「……? 純也なら……いないわよ」

 私は耳を疑った。

 「えっ!?」

 「特攻隊に志願したらしいのよ……」

 「そっ……そっそんなぁあ……」

 私はその場に座り込んだ。ショックだった。

 しばらくして、叔母さんは家の戸を閉めた。
 
 私も何とか立ち上がって、家に重い足取りで帰る。

 貴方の居ない世界なんて……考えられないよ……。

 私、どうしたらいいの……?

 その日は、食事もろくに喉に通らず、9時ごろには布団の中に入っていた。

 悲しい気持ちを抑えるために、早く寝た……。

 ——真夜中頃……1945年3月10日。

 「……て! ……きて! ……おきて!」

 突然、母の声がした。目を開けると、母は何か焦っている。

 「……なぁに? こんな真夜中にー」

 「空襲がっ……空襲がきたのよ!」

 私は一気に目が覚めた。すぐに防空頭巾を被って、外へ逃げることにした。

 外へ出ると、もう炎が燃え上がっていて、まるで地獄のようだった。

 そこで私は……思いついたのだ。

 この炎にまみれたら、死ぬことができるんじゃないかって。

 もし死んだら、あの世で貴方に逢えるかもしれない……。

 貴方がいない世界に、未練なんてもうないの……。

 立ち止まる私に気付かずに、家族とお手伝いさんは逃げていった。

 私は、そのとき桜をみつけて声をかけた。

 桜は逃げながらもこちらをみる。

 「凛子っ! 何してるの!? 逃げないと……」

 「……いいのよ、私はここで。純也君の居ない世界なんて考えられないの……」

 「えっ!? ……どういう意味?」

 「知ったのよ……あのあと、家にいったら、純也君は特攻隊に志願したんだって」

 「…………」

 ついに、私の周りに炎が襲い掛かってきた。

 熱い……私……死ぬのね。

 みるみる炎は私の体につきまとって、燃やしていった。

 「凛子————!」

 桜のこの声だけ聞いて、私はふっと意識を失った。

 本当はわかってた、純也君が私じゃなくて桜をみていたことを……。

 本当にもう未練なんてないわ。

 ありがとう、さようなら……最後にいうわ、純也君。

 私はあなたのことが、世界で1番大好きでした。