ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 戦場のジュリエット ( No.34 )
- 日時: 2009/10/22 13:21
- 名前: ☆:.:苺羅:.:☆ ◆RP4/4zHHbo (ID: fQl/VR.0)
- 参照: 時は昭和の戦時中、暗黒の時代の中で一生懸命生きた少女が居た——by戦場のジュリエット
*15—桜目線に戻ります—
私は、純也の家の前まで走った。
真実が知りたくて……一生懸命走ったの。
貴方は生きてるよね?
今日もどこかで……生きてるよね?
ねぇ……ねぇ?
私は何度も同じことを呟いて、自分を落ち着かせようと思った。
こうしないと、私の心が破壊しそうだったから……。
純也の家の戸を思いっきり思いっきり、叩いた。
「はいはいはいはい!」
叔母さんが、めんどくさそうに声をあげて戸を開ける。
「……あら、桜ちゃんじゃない、どうかしたの?」
「純也はっ……純也はっ……いますか!?」
「…………中に入ってみなさい」
「あの、純也は……?」
「いいからはやくっ!」
叔母さんの声の威力がすごくて、私は家の中に入った。
なんだかお線香の匂いがする……いや、まさかね……。
私は、叔母さんに連れてこられた部屋の戸を思いっきり開けた……。
「……っ!」
やっぱり、悪い予感は当たってしまった……。
仏壇の純也の父の写真の横には、純也の写真が並べられている……。
「純也はねぇ……特攻隊で死んだの……」
叔母さんは目に涙をためて、ハンカチで目頭を押さえていた。
私も目に涙をためていたのは、いうまでもない。
「……なんで死んじゃったの!? ねぇ……生きていてよ! なんで……なんで!?」
私は泣け叫びながら、そういった。でも純也は生き返らない。
「純也がねぇ・・・・行く前に、この手紙を渡してくれたのよ……桜ちゃんにって」
そういって叔母さんは、1枚の手紙をくれた。
「愛しき千崎桜様。
お元気ですか、この手紙を見ているということは
僕はもう、この世にいないということなんですね。
それでも、貴方が生きていれば、それで幸いです。
僕は出撃しました、お国のために頑張りました。
だから僕が死んでも、悲しまないで下さい。
僕はずっと、桜のことを空から見守っています。
まだ、こちらの世界には来てはいけません。
ゆっくり……ゆっくり、こちらの世界にきてください。
そのときは、それからの日本がどうなったのか
お話してください、待っています。
純也より」
私は「うわあああ」と大声で泣いた。
その日、私は何をしていたのかははっきり覚えていない……。
2009年4月。
私はいつの間にか、81歳になっていた。
私は結婚していないから、子供だって当然いない。
あれから本当に、目まぐるしく日本の経済は発展していった。
1960年代には、高度経済成長期といって、経済白書には「もはや戦後ではない」と記されたほどだ。
64年には東京オリンピックまで開幕した。
80年代〜90年代にかけて、日本の経済はまたおとろえていった。
そして、平成不景気の今にいたる。
それでも戦争のない、日本に生れてきた貴方達は恵まれてるほうだとおもいます。
私達世代は、戦争から頑張って日本の景気を直してきました。
貴方達の世代も、きっと何か変えれるはずです。
でも、これだけはお願いです。
戦争は絶対にしないでください、戦争ほど愚かなものはありません。
私はこのことを、孫宛に手紙をかいて、残した。
そして私は静かに目を閉じた……そのうち意識がなくなった。
2009年4月某日、千崎桜死去。
桜の花びらが、舞い散るうららかな春のことでした。
きっと今頃あの世で、純也と逢っていることでしょう。
戦場のジュリエット(完)