ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 戦場のジュリエット 完結! ( No.43 )
- 日時: 2009/10/23 13:55
- 名前: ☆:.:苺羅:.:☆ ◆RP4/4zHHbo (ID: fQl/VR.0)
- 参照: 時は昭和の戦時中、暗黒の時代の中で一生懸命生きた少女が居た——by戦場のジュリエット
番外編01「大和と蘭子」
1925年(大正14年)、某日。
ここ帝都に2つの命が生まれり。
1つは男、もう1つは女。
これからこの2人はどんな、時代を歩んでいくのでせうか。
「やーまとくん、あーそびましょ」
僕が学校の宿題を終えると同時に、女の子の声が聞こえてきた。
僕は最近、改築した文化住宅の窓を開ける。
「らーんこちゃん、いーまいくよ」
僕はそういって、窓を強くしめて家を飛び出した。
このやりとりが、僕と蘭子の合言葉になっている。
時は1932年。暗い時代に入り始めた頃。
僕……千崎大和と、友達の百屋蘭子は7歳だ。
蘭子の家はすっごくお金持ちで、僕の家は普通の庶民。
だけど、蘭子はいっつもこんな僕と遊んでくれる。
「何して遊ぼうか」
「鬼ごっこでもしない?」
「いいなーやろうか……でも2人じゃつまんないね」
「じゃあ他の人も誘おうよ!」
蘭子はそういうと、一目散に走り出した。
僕もそのあとを追う。……4、5人の友達を呼び出した。
僕と蘭子はこの4月に、尋常小学校に入学したから友達はいっぱいできたんだ。
僕達は皆でじゃんけんをした。
そしたら見事に、僕はパー、他の皆はチョキになった。
「大和君鬼ね、にっげろー」
「……いーち、にー、さーん、よーん、ごーう……」
僕は10秒数えだした。
「……きゅーう、じゅう! ……よし、いくぞ」
僕は逃げていく皆を片っ端から追いかけた。
結構走りには自信があるんだ。だからあっという間に皆捕まえちゃった。
でもあと1人、なかなか捕まえれない子がいた……蘭子だ。
追いかけても追いかけても捕まらない、僕はとうとうこけてしまった。
痛いよ……痛いよ……。僕は半泣きになってしまった。
「大丈夫? 大和君」
蘭子が僕を心配してくれて、やってきた。
蘭子はポケットから絆創膏を出すと、僕の膝にぺたりと貼ってくれた。
「いたいのいたいの、とんでいけー」
蘭子がそういうと、なんだか痛みがちょっと消えてきたみたいだ。
僕が立ち上がるまで、蘭子はずっと僕にかまってくれた。
そんな蘭子が……僕は好きになっちゃったんだ。
続く
- Re: 戦場のジュリエット 完結! ( No.44 )
- 日時: 2009/10/23 14:05
- 名前: ☆:.:苺羅:.:☆ ◆RP4/4zHHbo (ID: fQl/VR.0)
- 参照: 時は昭和の戦時中、暗黒の時代の中で一生懸命生きた少女が居た——by戦場のジュリエット
1938年、4月。
前年から日中戦争が始まった。
僕……じゃなくて俺は、中学生になった。
蘭子も一緒の学校にきてほしいけど、女子は女学校へいく。
セーラー服姿の蘭子はとても可愛くて、ドキッとしてしまった。
俺もブカブカの学ランをきて、学校への道を歩む。
「大和っ!」
後ろから蘭子が声をかけてきて、俺はまたドキッとした。
「おっ……蘭子か、おはよ」
「今日は映画でもいかない? 面白そうなのがあるの」
そういって蘭子は、映画の切符を見せてくれた。
好きな子と映画なんて、なんか付き合ってるみたいだな。
「いっいいよ……」
「ほんと? うれしーやったぁ♪」
そういって飛び跳ねる、餓鬼みたいな蘭子がまた可愛い。
学校を終えると、俺たちは映画館へ向かった。
男女が何かを演じている……。
…………。これって恋愛映画かよ! 題名とかみてそれっぽくなかったけど、恋愛かよ。
くっそう、好きな子とこんなの見たら余計気まずくなるじゃんか。
蘭子はこのことを承知で、俺を誘ったのか?
映画が終わっても、俺はまだどきまぎしていた。
もうこれは……伝えるしかない!
「あの……蘭子」
「なぁに?」
「そのさ、あの、えと、んーっと。俺は……お前のことが好きだ」
「えっ!? えっ! うっそぉ……」
蘭子はなんか、嬉しそうな驚いてるような、そんな表情を見せる。
「実は私もずっと好きだったの」
それから俺と蘭子の、男女交際がはじまった。
まだ13歳なのにけしからん……なんていう声もあがったけど、そんなの関係ない。
俺は幸せな日々を送った……。
だが、不 幸 が 訪 れ る。
- Re: 戦場のジュリエット 完結! ( No.45 )
- 日時: 2009/10/23 14:13
- 名前: ☆:.:苺羅:.:☆ ◆RP4/4zHHbo (ID: fQl/VR.0)
- 参照: 時は昭和の戦時中、暗黒の時代の中で一生懸命生きた少女が居た——by戦場のジュリエット
1939年、5月。
俺は2年になって1ヵ月たったが、どうも調子が悪かった。
こんなときは、蘭子といれば、気持ちが晴れる。
俺は久しぶりに蘭子の家を訪ねてみた。
家の中に入る……だが、とんでもない光景が待ち受けていた。
蘭子は自室で、布団の中に入っているのだ。しかも苦しみながら……。
「蘭子っ!」
「ん……あ、大和君……はぁ……はぁ……」
「どうかしたのかよっ!?」
「私、なんか……苦しいの……うっ……」
そういって蘭子は気を失った。
「蘭子!」
そして、蘭子はすぐさま病院へと運ばれた。
それから俺のお見舞いの日々が始まった。
病室をノックして、俺はドアから顔を覗かせる。
そしたら蘭子がいつものように顔を覗かせるのだが、今日は違った。
皆が蘭子の廻りを取り囲んでいるのだ。
「らっ蘭子!?」
「……あ、……やまと……くん……」
心なしか、蘭子はなんだか元気がなかった。
「私……もうだめみたい……今まで頑張ったけど、これ以上は無理みたい……はぁ、はぁ……ありがとうね」
蘭子はそういって、静かに目を閉じた。
「蘭子————!」
1939年5月某日、百屋蘭子死去。
肺結核だった……。
俺は今でも、蘭子のことは忘れない。
絶対に忘れない