ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: *戦場のジュリエット ( No.9 )
- 日時: 2009/10/17 12:18
- 名前: ☆:.:苺羅:.:☆ ◆RP4/4zHHbo (ID: fQl/VR.0)
- 参照: 時は昭和の戦時中、暗黒の時代の中で一生懸命生きた少女が居た——by戦場のジュリエット
*03
「ただいまー」
私は学校から帰宅した。居間へいくと、心なしか家族みんなの元気がないようなきがした。
「どうしたの?」
私は恐る恐る、すぐそばに座っている兄の大和に話しかけた。
「……親父に……赤紙が届いたんだよ……」
「えっ!?」
親父……緑介から赤紙を見せてもらった。
確かにこれは赤紙だ……。
「お袋……元気出せよ」
大和がお袋……春代をなぐさめた。
春代は自分の顔をおおって、ただただなくばかりであった。
隣では姉の花も涙を流している。
「皆元気出せ! 俺はお国のためにちゃんと奉公してくるよ」
そんな家族をなぐさめるかのように、緑介は呟いた。
——次の日。
駅にはたくさんの人たちが、出兵される人たちを見送りにきていた。
「千崎緑介、お国のために奉公してまいります!」
「万歳、万歳!」
見送りに来た人は、国旗を振ってそういった。
何が万歳だ……本当は自分の家族が、戦地へいくなんて悲しいはず。
でも「生きて帰ってきてね」なんていったら、兵隊から「非国民」といわれるから、仕方なかった。
私もいやいや「万歳」をいったが、家ではやはり涙を流してしまった。
「皆! ……今日から俺が親父代わりになるよ」
長男である大和が、皆をなぐさめるようにそういった。
大和はまだ18歳。徴兵されるのは20歳からだから、まだ徴兵はされない。
出来れば……早く終わってほしいよ、戦争なんて。
次の日、学校へ向かう途中、純也と凛子に会った。
「桜おはよう。……親父さん、徴兵されたんだってな」
純也が残念そうにそういった。
「うん……」
「ふんっ! いいじゃない別に。日本国民はお国に奉公するのが常識だわよ」
嫌味ったらしく、凛子がそう呟いて薄笑いを浮かべた。
「凛子……そういうこと……いうなよ」
「何がいけないの? お国のためになれるのよ?」
「そうだけど……」
「生きて帰ってこなくてもいいし」
凛子の父も徴兵された。本当は凛子だって悲しいはず。
「それより今日はぁ、純也と一緒に海へいきましょうよー」
凛子が話をそらすように、純也にそういった。
「そうだな、いこうか」
そういって凛子と純也は去っていった。