ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

2 ( No.2 )
日時: 2009/10/24 00:29
名前: 仲矢真由乃 (ID: PIWwehw3)

「やあ」

聞き覚えのある声に新聞から顔を上げると、声の本人の姿が目に入った。我が友人の稲田である。

「お、久しぶりじゃないか」
「忙しくてね」

彼とは高校以来、15年ばかし続く友好関係を保っている。おそらく親友というものであろう。いや、訂正する、親友だ。断言できる。

「やっぱり大変か、孤児院の経営は」
「孤児院という呼び方は止めてくれ、と前に言ったはずだが」
「そうだったな、すまない。何だったか、児童養護施設?」
「合っている。まあ、孤児院というのが普及しているからしょうがないといえばしょうがないがな」

そう言って稲田は苦笑する。
男の私が言っても稲田はさほど嬉しくは思わないだろうが、彼は非常に良い男である。それは顔立ちだけではなく、性格等々も含めての評価だ。
容姿はといえば、それは端整な顔立ちをしている。彼は私と同期であるので、もう33というオッサンなのだが、私はともかく、彼ならば20代前半と言っても誰も疑わないだろう。まったく羨ましい限りだ。私なんぞは最近、ある友人に「立派なオッサンになったな」としみじみと言われたばかりだ。着実に中年へと歩みを進めている。とても恐ろしい。
また、稲田は性格も大変よろしい。15年付き合ってきた私だから言える、全くの事実である。彼以上に男前な性格をしている男性に、私はまだ会ったことがない。
さっきの会話であったが、彼は児童養護施設、「桜の蕾」を経営している。彼は成績等も非常に優秀であり、様々な大学から引く手あまただったのだが、それを全て蹴ってその道へ進んだ。その進路は中学の頃から決めていたらしい。

多少の友人補正はあるかもしれないが、それを省いたとしても彼は素晴らしい人物だと私は思っている。