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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 3 ( No.3 )
- 日時: 2009/10/24 16:33
- 名前: 仲矢真由乃 (ID: 1YHdpXpY)
ところで、現在の位置を書くのを忘れていた。
今、私と稲田がいるのは古本屋である。経営者は私だ。
昔から古本屋という古風なにおいのする店が好きだった。結果自分で建てるまで行き着いたのだが、まあそこそこに軌道に乗り、金銭に困ることもなくなった。有難い限りである。
「どうだ、不況の波だが」
「こっちは大丈夫だ。むしろ新本を買わないで安価で済まそうとする人が多くなって客が増えている」
「なるほど」
「俺としてはそっちの方が心配だが」
「ああ、心配するな。むしろ貯金が増えた」
「増えた?」
ここでいう貯金というのは、稲田個人の貯蓄ではなく、桜の蕾の貯蓄である。
「晶は覚えているか?」
「晶ちゃんか。あのぶ……黒髪の綺麗な」
一瞬、「無愛想な」と言いかけてしまった。
今年でいくつになったか。もう中学生であることは間違いはない。小さいころから美人になると思っていたのだが、そろそろ身目麗しくなってきているのだろうか。
「昔から機械いじりの好きな子だったが、2か月ほど前、遂にコンピューターを作ってしまってな」
「ぶっ」
喉を潤そうと飲みかけていた水を噴出してしまった。
本にかからなくて何よりだ。
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