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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 7 ( No.7 )
- 日時: 2009/10/27 22:16
- 名前: 仲矢真由乃 (ID: 4kTDCa8M)
「どうした? 風邪か?」
「風邪に見えるのか?」
そうだとすると稲田の目が節穴だということが発覚するのだが。15年かけて初の欠点発見になるかもしれない。
「プロデビューか……。ようやくというか、もうというか」
「自分からしたらようやくだがな」
稲田が薄い笑みを浮かべる。嬉しいのを抑えきれないことが丸分かりだ。稲田は時々子供のような表情を見せる。
「それで、貴博が一度こっちへ帰ってくるらしい。それならということで、家でパーティーをしようということになったんだが、どうだ?」
「勿論行く」
稲田にとっても私にとっても息子のような貴博君の祝い事となれば、出かけなければならぬまい。幸いと言うべきか、私の帰りを待つ妻もいないことだしな。……いや、やはりそれは不幸だ。
「そう言うと思ったよ、明日の午後7時からだ。貴博は5時ぐらいに顔を出すと言っていた」
「了解だ」
「じゃあな」
「おお」
稲田が軽く手を振りながら店を去る。
私は再び新聞を手に取りながら、明日持っていくプレゼントをどうするかの思考に没頭し始めた。
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