ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

9 ( No.9 )
日時: 2009/11/07 22:42
名前: 仲矢真由乃 (ID: jYd9GNP4)

さて、その日の夕方である。
私は買い込んだケーキを手に、店を閉めて家を出た。
徒歩で5分ほどで、桜の蕾に到着する。
小さな幼稚園ほどの敷地を持つその家には、現在約15人程度の子供たちが住んでいる。今、一番年上の子は晶ちゃんだったと記憶しているが、どうだったか。
何はともあれ、小さな看板の横にあるチャイムを押す。しばらく待つと、幼い子供の声がスピーカーから聞こえてきた。

「はいー、どちらさまですか?」

名を名乗る前に、その子とはまた違う声が響いてくる。

「あ、店長さん。今開けます」
「どうも」

扉を開けてくれたのは晶ちゃんだった。

「まだ貴博さん来てないですけど、あがってください」
「ありがとう」
「ケーキ、持ちますよ」

いくつか持っていた箱の1つを渡す。晶ちゃんが少し鼻を箱に近付けて、中身を確かめようとしていることに気づき、若干和んだ。可愛らしい。

「館長さん、店長さんいらっしゃったよ」
「お、来てくれたか」
「当然だろう」

中に入ると、折り紙の鎖がリビングを彩っていた。いかにもな手作り感が暖かい。ただ、その中にいる稲田は微妙に浮いているた。子供たちだとぴったりなのだが。