ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

六話 ( No.11 )
日時: 2009/11/16 20:11
名前: 羽夜 ◆RZNKdBQtkc (ID: xYJBB/ey)
参照: 光とは人間、魔とは闇人、天とは聖人。光を壊し、求める—— by:宝箱 闇人生活物語

 「夢子さんの光だけ、取れないんだよね」
「取りたくないだけですよ。多分」
二人は晴天の空を飛びながら話している。勿論、闇世に帰る為。
 「あのさ……人神って居ると思う?」
「如何したんでしょうか? 急にそんな事」
人神ヒトガミとはある一冊の本に載っている人間の神の事である。本には、真神様とか人神が神様になった事があるとか。だがそれを信じていない聖人や闇人が殆どだ。勿論、暗紅や闇紅も信じている訳では無い。その可能性がある人を見ているのだ。それが、並里夢子。二人は、あの光だけ何かが違う。そう思っているのだ。
「人神、でしょうかね?」
「分からないよ。とりあえず、お父様に訊いてみるかな」
そんな顔も合わせない二人の会話。危ないから前を見ているだけだが。数分経っただけなのに少し灰色になっている雲が増えているから中々前が見えないのだ。
「と言っても、お父様居るかな……もしかして出かけてて怪我してたり……」
「貴女が帰って来るまで居るでしょうよ、親バカだから」
心配して言う暗紅だが、それを遮り、冷めた目で闇紅は言う。そして、二人は空の向こうへ行った。つまり下界では見えない場所に行ったのだ。

 「雲、凄い……前が見えない」
「灰色でモクモクしてる、って事は雨が降るのか」
二人はまだ上界の闇世に向かっている途中である。二人とも腕を顔に当てながら目の前を見る。風が強いのだ。台風だろうか、と二人は思うが台風が近付いているのなら外に出れない筈。否、その前に知らせてくれる筈だ。
 「……暖かい。風は?」
と、暗紅は言った。闇紅は、暗紅の方を向いて「知りませんよ」とぶっきらぼうに言い、そしてすぐに前を向いた。
 「はあ、疲れた……」
 闇紅は独り言を呟く。前を向きながら。