ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

二話 ( No.2 )
日時: 2009/11/16 19:59
名前: 羽夜 ◆RZNKdBQtkc (ID: xYJBB/ey)

 「暗紅、光を刈って来たのか! 偉い!!」
「待ってました!」とでも言う風に暗紅に話し掛けるのは暗紅の父、黒世クロセと言う人物だ。次期神様候補、つまり、次の神を決める時、死神となる人なのだ。そうなると地位は上、闇人で一番偉い人になる訳だ。なので、暗紅の地位も勿論上な訳だ。
「お父様ぁっ!」
そして喜ぶ様に暗紅は大声を出す。ジャンプして黒世に抱きつきながら。
「暗紅!! 心配したが闇紅が居たから助かったようだな! 闇紅、ご苦労だ」
「いえ。こちらは何と」
「お父様、これ見て! 光だよ!」
闇紅の言葉を遮って暗紅は言う。そう、親は親バカであり、子供はファザーコンプレックス、つまりお父さん大好きっ子なのだ。人間から見ると十五歳と言う年齢なのに。親も負けず自分の子が大好きだが。少し闇紅は苛立ったが、こんな人だから、と思い諦めた。
「おお凄い! 良くやったじゃないか」
玉座に座り、暗紅の頭を撫でながら黒世は言う。
本当にこんな人が次期神様候補でいいのだろうか。そう思いながら溜息を吐きながら呟く闇紅であった。
「……こんなんでいいのだろうか」


 ……望むなら殺してあげようか?

 「私の使命であり、貴方が望んだ事。正に“一石二鳥”と言うべきかしら?」
下界で一人呟く闇紅。その下には黒髪の人間の死体が倒れている。その人間から流れた血の臭いが闇紅の鼻を突っつく。
「……この臭いだけは気に触る。私達と同じ色で同じ臭いなんて耐えられない」
「闇紅、独り言だけは言わない方がいいよ?」
驚く事に暗紅の声。何処から出てきたのだろうか。それだけが疑問だ。
「別に独り言くらい。如何したんでしょうか、暗紅」
「暇だったからついてきただけ」
「つまりストーカーですね」
暗紅に向かってキッパリと闇紅は言う。それをちゃんと聞いた暗紅は漫画表現だと心に刃物の様な物が刺さったと言う。心が傷ついたのである。
「さて、片付けないと」
闇紅は人間の死体の右足を持ち上げ、引きずる。そして一目のつかない場所に投げ捨て、光だけを取る——。
ただただ、こうして闇人は暮らしている。聖人もそうかもしれない。光はまた神の所に行き生まれ変わる。生命とはこんな物なのだ。不思議で綺麗な生命。闇人も、聖人も、人間も、こうして生まれる。

 ただ——闇人や聖人が死ぬのは、滅多に無い事だが。