ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

五話 ( No.8 )
日時: 2009/11/16 20:06
名前: 羽夜 ◆RZNKdBQtkc (ID: xYJBB/ey)

「それじゃあ、真神様に感謝ですね……」
ふいに言った闇紅の言葉。無愛想だった彼女の顔が、優しい笑顔になった。それを横で見ていた暗紅は、
「うん、下界でこんな美味しい物を作る人間を創ってくれたからね」
「何か少しずれている様な」
「いーのいーの! さ、ファミリーレストラン、行くよ!」
 そして二人は五歩くらい歩いた後、空へ飛び立った。明け方の五時、遠い遠いファミリーレストランへ二人は向かう。遠いがとても美味しい、ファミリーレストラン。五時間くらい飛ぶが、とても美味しいのだ。そう、闇人、聖人御用達のレストラン、と言ってもいいであろう。

 靴の音を鳴らし、空を飛んでいた闇紅と暗紅は地に着地する。そして、二人の前にある建物は、古い。今にも壊れそうでもないが、壁の白いペンキが色落ちしている。そして、看板には茶色の板に青のペンキで、『dream』と書かれている。
「夢子さん、居ますか?」
「夢姉! 居る?」
「暗紅ちゃん、闇紅ちゃん! 如何したの?」
「何って、ご飯食べに」
「レストランに来てご飯食べない馬鹿は居ないと思いますよ」
「あはは……そうね」
夢子さんと言われる人物は苦笑いしながら二人に言う。そして、すぐに厨房に戻った。
 並里夢子ナミザトユメコ、二十二歳だ。職業はファミリーレストランdreamのオーナー。大きい黒目に黒髪の一つ括り。そして、今日は水色のTシャツに茶色の七部丈ズボン。その上には夢子さんが愛用しているピンクのエプロンがある。そして、dreamとは、名前から取っており、そして夢子さんの夢がファミリーレストランのオーナーだったからだ。即ち、dreamとは、夢子さんの夢の結晶の様な物なのだ。ギャグ等は言っていない。しかし、人間にこのレストランはあまり人気が無い。見た目が古いから、美味しくないとでも思っているのだろう。だが、食べに来る人間は、食事した後に満足気に腹を摩りながら帰るそうだ。それくらい美味いのだ、夢子さんの料理は。だが非常に街から離れている場所にある為、客はあまり来ないが。そして、今の時間帯はまだ誰も来ないので夢子だけで働いている。朝は来る客が少ないのだ。
「出来たわよ。暗紅ちゃんはチキンカレー、闇紅ちゃんは麻婆豆腐ね」
「嗚呼、有難うございます」
「うんうん、今日もいい匂い!」
闇紅が笑いながら言う横で、暗紅が流石! と言うように言った。そして、三十分で完食した筈だが、暗紅が二回もおかわりして一時間半も掛かってしまった。
「……食べるのは遅いのに食欲があるって如何いう事でしょうね」
「んー? まあいいでしょ」
 暗紅は闇紅の言葉を適当に流す。歯に掛かった食べ物を爪楊枝で取りながら。

 「ご馳走様でした。どうぞ」
と闇紅は言い、お金を夢子さんに渡す。
「そんなによく来てくれるの、貴女達だけよ?」
「当たり前! 美味しいんだもん」
「……また来ると思いますよ」
「待ってるわ」
 夢子さんは、満面の笑みで笑い、そう言った。