ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 逢屋−アワセヤ− ( No.5 )
- 日時: 2009/10/31 10:46
- 名前: 歪-Hizumi- (ID: HGxq/uSR)
第一夜 少年or少女?
長い夜が明け、窓から太陽の光が差し込む。
その眩しさに少年は目を覚ます。
「朝か……」
少年は窓の外へその大きな灰色の瞳を向けた。
駅のホームは電車を待つ学生とサラリーマンで埋め尽くされている。
その中に灰色の瞳の少年もいた。
肩近くまである銀色の髪はホームにやって来た電車の風で乱れる。
背丈は低く、顔立ちにもまだ幼さが残っている。
私服でホームに立つ彼は一見、少女にも見える。
そんな彼は電車の扉が開くと同時に人の波に押されながらも車内に入っていった。
すごい込みようだ……やっぱりもう少し時間を遅らせるべきだった。
少年は人がぎりぎりまで詰め込まれた電車内でそう思っていた。
電車が揺れると人々も揺れる。
元々人混みが苦手な彼にとってこれ程嫌なこといはない。
気持ち悪くなってきた……。
少年は大きなため息をつき、その瞬間何か違和感を感じた。
なんだ?この違和感は……。
少年はゆっくりと後ろに顔を向ける。
「っ!!」
少年の感じていた違和感の正体は、痴漢だった。
少年の後ろにいるサラリーマンと思われる男がそうだった。
少年の頭は混乱で真っ白になっていく。
僕男だぞ!? 男が痴漢に合うってどういう事だよ!!
「女の子が痴漢に合ってまーす」
後ろからするその声に少年は驚き振り返った。
するとそこには身長の高い黒髪の青年が立っていた。
痴漢男の手を掴み上げ、青年は少年に笑顔を向けた。
その後、青年によって捕まえられた痴漢男は駅員に連れられていった。
「大丈夫か?」
「あ、はい……ありがとうございます」
少年はホームのベンチに座って青年の買ってきたお茶に口をつけた。
「にしても最近の痴漢はひでぇな。こんな女の子にまで手を出すなんて。俺は火神 旺(カガミ オウ)この駅の近くの第一高校の三年」
その言葉を聞き、少年はお茶の入ったペットボトルを落とした。
「どした?」
旺が顔を覗き込むと少年は怒りと涙混じりの声で言った。
「僕は雨宮 威玖(アマミヤ イク)……第一高校二年……男です」
一瞬沈黙が流れる。
最初に口を開いたのは旺だった。
威玖を指差し問う。
「男?」
「はい」
旺は気まずそうに立ち上がり、威玖に手を差し伸べた。
「えー……と、とりあえず学校!! い、行くぞ!!」
威玖はふくれっ面のまま彼の手を取り、立ち上がった。
学校までの道のり、二人の間に流れる空気がどんなに冷たいものだったのか……。
それは貴方の想像にお任せしましょう。