ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 逢屋−アワセヤ− ( No.13 )
日時: 2009/11/14 19:05
名前: 歪-Hizumi- (ID: kjkAYU9X)

第四夜 二代目主

「えー……と。ちょ、ちょっと用事を思い出してしまいましたので」
良くある言い訳をしながら音楽室の扉に手をかけた威玖を帝が止めた。
「ダメダメ。逃がさないって」
帝は笑顔のまま逃げようとする威玖の腕を掴んだ。
笑顔と反面に帝の声はいつもの明るくお調子者のような声でなく、真面目な低い声だった。
その何とも言えない恐怖のような感情に威玖は音楽室の扉から手を離した。
「で、威玖君? さっきの質問の答え、聞いてないんだけど」
その言葉に威玖は下を俯き、帝から顔を逸らした。
「んー……。やっぱりそう簡単には教えてもらえないかぁ……」
そう腕を組んで悩む表情を見せる帝に威玖は問いかけた。
「……一つ、いいですか? そんな事を聞いてくる貴方達は何者? そして何を根拠に僕を逢屋だと言うんですか」
その質問に帝はシエルと目を合わせた。
すると今まで椅子に座って二人の様子を見つめていた彼が立ち上がり口を開いた。
「まぁ確かに、まずは僕達の身元をちゃんと明かさなきゃダメだよね」
そう言って彼は淡々と話し始めた。
彼が話したのはこの三つの事。

帝、シエルの二人は“能力者保護団体”という団体の一員であり、この地域を任されているという事。
この地域で活動していると思われる逢屋の主が彼らの言う“保護対象”つまり人間と違う能力を持つ者だという情報を掴み調査してきたという事。
そして最終的に調査を続けた結果、雨宮 威玖がその逢屋の主と判明した。

「……こんな非現実的な話、誰が信じます?」
威玖はさっきとは一変して強気の態度を見せている。
「それに、能力者とかそんなモノ僕は聞いたことも見たこともない。第一に僕がその保護対象だって言う証拠はあるんですか?」
帝は待ってましたと言わんばかりに手を威玖の目の前にかざした。
すると帝が手をかざした場所にテレビの画面のようなものが浮かびだし、そしてその画面に数枚の写真が映し出された。
その様子を見た威玖、そして旺は驚き目を丸くした。
「これで少しは俺らが普通じゃないって思ってくれたかな? そして、この写真に写っている人物は、君だよね、威玖君」
そう言われ、威玖は俯く。
その写真に写っていたのは間違いなく彼、威玖自身だった。
その写真を見た旺も驚いている。
その写真に写っている威玖は真っ暗の空間に浮かぶ、逢屋と書かれた扉の前に立っていた。
その扉はまるで夜の空に浮かんでいるような普通ではありえないものだった。
「これを見てもまだ言い逃れが出来るかい? 威玖君」
帝の言葉には威玖は俯いていた顔を上げ言った。

「貴方達の言っている事は全て真実、そして僕は逢屋の二代目主だ……」

彼のその発言に帝とシエル嬉しそうに微笑んみ、そしてさっきから取り残されたままの旺へ顔を向けた。
「話を聞いちゃった旺には……保護団体の一員として威玖君の事守ってもらおうかな?」
何の詳しい説明もなく、話は帝とシエルと中心に勝手に進んでいく。
「詳しい事は後で話すからね」
シエルがそう言ってパチンと指を鳴らした。


その瞬間確かに音楽室にいたはずの彼ら四人の姿は跡形もなく消えた。