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第三章 謎の少女 ( No.13 )
日時: 2009/10/30 07:06
名前: 架凛 ◆V3sV8pUxpk (ID: nujUYaTi)

 
 「エルドラド」通称海沿いの街と呼ばれる。
 絵本から抜け出してきたような風景と、
 様々な工芸品で有名な街だ。
 その美しい街も今、戦火にさらされていた。
 かつては民の憩いの場所であったこの広場も。

 「ふふふ………
     は、ははははは!!良い眺めだ!!」

 燃え盛る炎を見つめて笑う一人の男がいた。
 ラファーロ軍第三部隊の隊長、ブルート=ファイアリーである。
 短くきった赤茶の髪。
 明るいオレンジの瞳には、色の印象とは異なる冷たい光がやどされていた。
 ラファーロ軍の大半は魔術属性関係なしに炎の魔術を使うことができる。
 もちろん、ブルートもそうだった。
 
 「奇跡の水を大人しく渡さないからさ!!
              ははははは!!」

 笑うブルートの前に、突然白銀の何かがさっと通り過ぎた。

 「………なんだ!?」

 「はずしたわね、残念。もうちょっとだったんだけど……。
  ねぇコルア。」

 声のした方に目をやると、そこには一人の少女がいた。
 腰あたりまでのびた銀色の髪と、薄紫色の瞳が目立つ。
 そして胸に抱いているのは……
 白銀に光る____________________狐?

 「………お前、誰だ。」

 ブルートは突然現れた少女を睨み、
 先程とは全く違う冷静な声でいった。

 「あら、怖い顔。私が誰か知りたいのなら、
   まず自分から名乗るのがどうりではなくて?」

 少女は狐を撫で、怪しい笑みを見せながら言った。
 そしてブルートは名乗った。

 「我が名はブルート=ファイアリー。
   ラファーロ第三部隊の隊長だ。」

 「第三部隊?弱いのねぇ。」

 「なんだとっ!?」

 怒りに顔を歪めるブルートといたって涼しい顔の少女。

 「俺が名乗ったんだからお前も名乗れ!!」

 「私?私はフィリア。フィリア=ライトネス。」

 「………何者だ。」

 「ただの通りすがり。と考えてくださればそれでいいわ。」
 
 相変わらずの笑みにブルートは
 ふつふつと湧いてくる怒りをおさえるのに苦難していた。

 「で、抱いてるそれは何だ?」

 ブルートがそう言った瞬間、フィリアの顔から表情が消えた。

 「ねぇ。今 [それ] って言った?」

 空気が凍り付いたような気がした。
 凄まじい冷気がフィリアの体から発されている。

 「それ、ってコルアのこと?」

 無表情な顔を見て、ブルートの心までもが恐怖で凍りついた。
 遂にそれを顔にだしてしまった。

 「ぁ………ぁ。ち、違います……。」

 一軍の隊長とは思えないような弱々しい声。
 これでは面目まるつぶれだ。

 「そ、ならいいの。この子はコルア。」

 
 フイリアは再び笑みを浮かべた。