ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第四話 二重人格 ( No.27 )
日時: 2009/10/30 20:35
名前: 架凛 ◆V3sV8pUxpk (ID: nujUYaTi)

 ここはリーアス国の真南に位置する街、ファラノス。
 川と湖が多く、リーアス国の中では一番自然が豊かな街だろう。
 そして、街の中心には不思議な丘がある。
 暑い日も寒い日も丘の上だけは心地よい暖かな風がふくのだ。
 そんな丘の上に、一人たたずむ者がいた。

 後ろで三つ編みにした白銀の髪に、透き通るような空色の瞳。
 何よりも目をひくのは、左目を覆い隠す眼帯。

 少年とも少女ともとれるその風貌だが、今は少年といっておこう。

 「良い天気……だね。」

 瞳を閉じ、気持ち良さそうに言う。
 しかしその頬には少し寂しそうな微笑が浮かんでいた。
 少年の側には誰もいない。
 それなのに誰かに語りかけるような話し方をする。

 「戦いが……始まるよ。」

 少年がそう呟いた時、一人の兵士がどこからともなく現れた。
 
 「将軍……じゃなくてアイス=フローライト様。
  西の方角から敵が攻めてまいります!!」

 兵士は早口でそう告げた。

 「うん……ありがとう。僕も行くよ。」

 焦りの表情を浮かべる兵士とは裏腹に、いたって静かな声でいった。

 「あの……[将軍]は……?」

 「エルツは寝起きだから機嫌が悪いみたい。
  起こさない方が良いと思うんだけど……起こす?」
 
 「い、いえいえ!!けっ結構です。はい。  では、参りましょう。」


 アイスは兵士に続き、二人で丘を降りる。

 ……いや、三人というべきか。

 と、まぁこの言葉の意味はすぐに分かることだろう。

 「アイス様ラファーロ軍がもうすぐそこまできております!!」

 丘の下で待機していた別の兵士が言った。

 「……あと、ここまでどのくらいかかるかな。」

 「十分はかからないかと。」

 「そっか……。」

 アイスは考えるような表情をしてうつむいた。
 そして顔をあげると静かに言った。

 「ライツ起こすね。僕、戦うの苦手だから。」

 「は、はい……。」

 兵士は少し怯えたような表情をしたが覚悟を決めたように答えた。