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Re: _________紅 ( No.6 )
日時: 2009/10/28 23:05
名前: 架凛 ◆V3sV8pUxpk (ID: nujUYaTi)

第二章 記憶

 ここは水の国、リーアス。
 三大陸の中でも一番水が豊かな国だ。
 人々は水を敬い、いつも水と助け合って生きていた。
 そんな平和な生活も今、音をたてて崩れおちてゆく……。


 「おじいさま、お願いです。私も行かせてください!!」


 リーアス国の城の中。
 玉座を前に、必死に頼み込む者がいた。
 流れるような長く艶やかな髪に、深く吸い込まれそうな蒼い瞳。
 彼女の名前はライファ=リーアス。
 この国のれっきとした姫である。


 「ならぬ。そなたは儂の後継ぎじゃ。死なせる訳にはいかぬ。」


 重々しい声でそういったのは、現王のガイア=リーアス。
 ライファの祖父にあたる人物だ。
 
 「そんなっ!!私は……私は国の人達を守りたい…。」

 「うむ…。本来ならばお前の父が後を継ぐはずだったのじゃが……。」

 「……。」


 ライファは幼い時、病気で母ファーナを亡くした。
 そして父カイスは……自分を守る為に死んだ。
 ライファの目に、今でも焼き付いて離れない、カイスの最後の姿。
 自分を守るために、自らを盾にして戦った背中。
 天才的な科学者で膨大な魔力の持ち主でもあった。
 そんな父に、ライファは何を思っているだろう。


 ライファの目から涙が溢れ、頬を伝った。