ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ——電脳探偵部—— (帰って参りましたぁ!) ( No.20 )
日時: 2009/10/30 16:59
名前: 空雲 海 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)

「何よあんた達! そっちが——」
「自分にも非があるんじゃねぇーのかとか考えねぇーのか?」
空雷先輩が真剣な声で言う。
「お前『反抗期』って知ってるか?」

母親に一筋の汗が額に流れる。
「反抗期っつーモンはなぁ……一旦親と子供が向き合う時期なんだ。お前は向き合ってるか?」
……反応しない母親。
「これ見てみろ」
空雷先輩が来瀬さんを指差す。

「これ何て言うか知ってるか? DVって言うんだよなぁ……さてこれは果たして親と子供が向き合ってるか?」
空雷先輩の声の鋭さ、目線。
何もかもが母親を捕らえている。

「向き合ってねぇーよなぁ! お前は横道にそれてDVに走ったからだよぉぉ!」
空雷先輩が怒鳴る。
「反抗期になる理由なんて人それぞれあるんだよ——」

「ちょっと待ってよっ!」
母親が空雷先輩の言葉を止めた。
空雷先輩は急に割り込んできてイラッとしている。
「言ったでしょ? あなた達は騙されてるんだって! なのになんで——」
「まだわからないの?」

雨雲先輩が言った。
「曇先輩はこう言ったわよね。『何か理由があったんじゃないか』って。その答えに彼女は泣いた——これどういう意味か分かる? 彼女の涙は悔し涙だった……。それは、自分の気づいて欲しい信号にあなたは気づいてくれなかったから。だから聞いたのよ。『何か理由があったんじゃないか』って」

「……う……そ……」
「嘘じゃない」
……訳が分からないというような顔をする母親。
「何なの? 一体……その信号の意味は」
母親の問いに空雷先輩が答える。
「こいつの信号の訳はなんだかわかるか? こいつ学校でいじめられてるんだよ」

その瞬間、大きく目を見開く。
「その反応、知らなかったんだな? なんで……なんで俺達が知ってるようなこと、母親が知らねぇーんだよ!」
そして、壁を思いっきり叩く!

振動がこっちまで伝わってきそう……。
「気づいてくれなかったんだよなぁー……打ち明けることが出来なかったんだよなぁー……なんで一番身近に居る親が気づいてやらねぇーんだよっ! だから反抗的な態度になったんだろ!? そうだろ……来瀬……」

最後の方は涙声になって聞こえなかった。
来瀬さんは、涙を流しながら小さく頷いた。
「お前子供と何年暮らしてるんだよ……異変に気づいてやれよぉー……」

空雷先輩の目から涙が出る。
母親はうつむいて眉を震わせている。
「お前自分の子供の目ぇー見てしっかり言葉交わしたこと最近あるか?」
……沈黙。

「ねぇーだろうなぁー……。だからこんなことになってんだもんなぁー……」
そう言った空雷先輩は、来瀬さんと母親を引き寄せる。
そして、強引に顔を持ち、あと少しで鼻先がくっつくような距離に置く。

「ちゃんと目を見ろっ! 今しかねぇーぞ」
……数秒の沈黙。
お互い見詰め合って、一体相手が何を考えて、次に何をしたいのか……まるで、相手の心を透視しようとしているみたいに……。

その時、
「朱音」
母親がかすれ声で来瀬さんの名前を呼ぶ。
「ごめんね……」
涙でいっぱいの声でいい、優しく来瀬さんを抱きしめた。
その行動と発言に驚いた来瀬さんは、その後笑顔になった。

そして、そのまま母親は来瀬さんに倒れこみ、二人は固く抱き合った。
二人の涙と笑顔が光っていた……。