ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺と世界の夢戦争〜Mind war〜 ( No.1 )
- 日時: 2009/12/06 22:08
- 名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)
war:-1 タイトル、無題
日常とは何か。非日常とは何か。俺の日常だと思っていた毎日は嵐のようにやって来た非日常によって容易く壊されてしまった。
いや、これが日常になってしまった。あの夢のせいで。夢、なんだよな。
そう、アレは不思議な夢だった。……夢、だった。
※ ※ ※
あれ、ここはどこだよ? 暗くて辺りが見えん。どっかに電気のスイッチか何かねぇのかよ、とぼやくのには訳がある。俺が今居る場所は何故か辺り一面暗闇に染まっていた。別に、俺は第六十感の類は信じない方だが、直感が動くな、と全力で警鐘を鳴らしていた。
何故だろう? 今動けば二度と日の光を浴びれない気がする。ええと、例えるなら、アレだ。断崖絶壁の崖の先端に立たされている感じ? うーん、駄目だ。上手く表せん。家に帰ったら現国の勉強しねぇとなぁ。多分、一昨日の小テストの結果を見せたらお袋怒るよなぁ……。あーあ。ずっとここに居てぇなあ。まぁ、テストなんてどうでも良いさ。
因みに俺の特技はどんな時でも独り言で楽しくなれる事さ。ヘイそこの仔猫ちゃん、俺と一緒にお茶しませんか!?
などと暗闇に慣れていつも通りのテンションでポージングをした時に足を動かしたので、何か柔らかいゴムのような物に包まれた硬い何かを踏んでしまった。
ん、 何か踏んだよな。ったく危ねぇな。転んだらどうする!!
と素直な感情を、舌打ち混じりに表していると、また襲って来た六感の危機に少し動揺しながら踏んだ物を見る為に顔を近づけると、ぼんやりと物体の輪郭が浮き出て来た。
んだよ、ゴムのオモチャか? 何でこんな所に置いと、く……
俺は見てしまった。「ソレ」はゴムのオモチャなんかではなく、切り離された人体の一部、それも太い血管が通ってる体の上の方、右肩と左肩の間の中心から上に伸びている、少しくびれた部分から人間の頂点に当たる部分だった。「ソレ」が一個や二個ではなく、数百、数千単位で転がっていた。確信した時、「ソレ」が放つ異様な臭いが鼻を通って脳を焦がした。
物体が何だったのかを確信したら、「ソレ」を俺の体は生理的に拒んだ。口内に広がる酸っぱい物を、服や顔が汚れるのも構わずに吐き出すと幾分かはスッキリしたが、また込み上げてきそうだった。
ここ、やべぇよ……逃げろ! 足、動け!! 動けよ!! と必死に脚に言い聞かせたが、全く動かない。
逃げたいけど足がすくんで動けずに俺は呆然と突っ立った。「ソレ」のように動かない俺と、その周りを囲んだ本物の「ソレ」達による沈黙を破ったのは断末魔と共にこちらへ向かって来る、新たな「ソレ」だった。
冷静に見ている場合ではない、早く逃げないとどんどん近づいて来る。
「あ、ひ、ぃあ」
情けない声が出てようやく足が動き、俺は両足が千切れそうになるくらい動かした。その度にぬかるんだ泥を踏んだような音と「何か」が折れて足場が崩れて転びそうになったけど、生憎俺は下を見れるような勇者じゃないから必死に踏みとどまって足を動かした。
やがて道が開けてくると、そこは雨が降っていた。……ケガをした時に体内から出る液体と同じ色の。
直接言うとつまりアレだよ、えーと、その、そう、「殺人現場」。あれ? なんだか恰好良い四字熟語みたいだなぁ。よし、リピートしてみよう。
「殺人現……」
「ようこそ、私の殺人現場へ。うふふ、また、会いましょう?」
突然、今まで中心で「ソレ」を作っていた小柄な少女が振り向いた。口元には人間が作れる表情とは思えない程の殺気立った、それでも棘のあるバラのように美しい妖艶な笑みを浮かべていた。その姿に、何故か見覚えがある気がした。
何で? こんな狂っている奴知らない筈なのに。
彼女の記憶はノイズとモザイクだらけだか、確かにある気がする。懐かしい、とさえ思ってしまう。
「あ、あのさ!! 君、どこかで出会っ……」
決死の思いで俺は少女に話しかけてみたが、最後まで伝える事は出来なかった。
※ ※ ※
目玉の機能が正常に戻った。そう思った理由は、今映し出されている風景が見慣れた自室だったからだ。最近、模様替えしたばかりの淡いブルーのカーテン、机の上には投げ出された現国の小テストと開きっぱなしの参考書、その隣にはどこにでも売っていそうな安っぽいシルバーのシャープペンシル、机の隣には空になったペットボトルや古い雑誌を乱雑に詰め込んだプラスチック製のゴミ箱。何もかも、俺の風景だ。意味なんか伝わらなくても良い!!
「は、ははははは!! 妙に怖くてリアルな夢だったなぁ」
……夢、だよな?
