ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 俺と世界の夢戦争〜Mind war〜 ( No.13 )
日時: 2009/11/20 22:32
名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)

war:7 両手に花は別名、両手に危険物 II

 俺は精神世界でいつも酷い体験ばかりしてきたが、今回は別だ。むしろ精神世界に感謝する。有り難う!! え、何故幸せかって? それはな、今回飛ばされた場所が運良くてな、もう少し動いたらカノンちゃんの短い短いスカートの中が見えそうなんだ!! あ、うぉぉお!! 見えた! 白くて、フリフリした……あ、なぁんだ。カボチャパンツ「ちょ、何見てんだよ!? このスケベ!!」

(カノンちゃんは激怒したら男口調になるんですね、萌えますなぁ。でも流石にヤバいです、痛いです。みぞおちに渾身の重い一撃を食らいました。あのブーツって爪先硬そうなのに、カノンちゃんは容赦ないなぁ)
 
 と、軽く魂が口からはみ出していた時に、隣から聞き覚えのある危険人物の声がした。

「うわぁ、ユキちゃんってばいつからあたし以外の女の子にも手を出すようになったの!? 何て言うかなぁ、見境ないタラシなんだね、千歳は悲しいわ」

 あれ、天国から千歳の声が聞こえるぞ? と重い首をゆっくりと、機械的に動かしてみると、そこには正座して顔は笑っているが心は阿修羅の如く怒り狂っている彼女が居た。

「あ、いや、今のはええと、そう、事故!! 偶然なんです! ごめんなさい! ごめんなさい!!」

 と、俺的には重傷な体だったのも気にせず板についた素早い動作で土下座のポーズをとった。
 千歳はそんな俺に哀れむような眼差しを向け、長い溜め息をついた。

「まぁユキちゃんが変態なのは今から始まった事じゃないし、諦めるよ。んで、変態ユキちゃん、この可愛らしい魔女さんは誰なの? 知り合い? そしてここ、どこ?」

 あれ、やっぱり怒っていらっしゃいますね? そう思った疑問を確信に変えるかのように千歳は俺の腕を荒々しく掴んで無理やり立たせ、カノンと向き合う形になった。

「あ、えーと、この子はカノンちゃん。何だっけ? 確かヴェリエスリル、って言う小さな村出身の、正真正銘の魔女。装備アイテムは星のステッキ。今居る場所はカノンちゃんの方が分かっていると思う」

 と当たり障りのない紹介をするとカノンにも一応常識があるのか、小さく頭を下げて口を開いた。

「カノンです。宜しく。現在地は法条 優希のフィールド、J-23番地、メリスヒリッジって言うほとんど民家しかない極小の村よ。ちょっと前に行われた小規模な夢戦争の戦地になった場所だから今は荒れてて村人のほとんどは死滅したわ。って、こんなに用語だらけの説明じゃ分からないわね。じゃあこの先にある書籍館ショジャクカンに行けば資料なんて山程あると思うわ。だからそこに行ってこの世界について勉強すること」

 俺の時は粗雑な扱いだったのに。なんだよ、この差は。と小さく不満の声を漏らしたが誰も聞いてなかったので大人しく二名の危険人物達について行く事にした。

※  ※  ※

 程なくして女同士だからか、千歳とカノンは打ち解け、楽しそうに談笑をして歩いていた。美少女二人が戯れる姿は絵になるなぁ。今度カメラでも持ち込めないか試してみよう。などと変態世界を展開させながら三十分位歩いただろうか。結構遠いんだな。

「さ、着いたわよ」

 と、カノンが足を止めて指差した建物は赤煉瓦の壁に、繊細な細工を施された頑丈そうな石の扉がついた、どう見ても立派な建物だった。

「あ、ここは書籍館じゃないわよ。書籍館はこの世界に関するありとあらゆる資料が置いてあるから警備も頑丈でね。だからここは中に入る為の手続きをする、言わば役場みたいな所ね」

  建物の中はやはりと言うか、イメージ通り洋灯の淡い明かりのみで薄暗く、各窓口に置いてあるデスクランプがなければ書類を書くのは少し難しいだろう。その雰囲気に合わせて待合席のソファーやミニテーブル等の家具も落ち着いたダークブラウンで統一され、一流のホテルのロビーを連想させた。

「じゃ、あたしは書類書いて来るから二人は座ってて」

 そう言い残してカノンは窓口へ歩いて行った。役場内を見渡すと、カノン以外にも魔法関係に携わっていると思われる服装や他にも現代日本ではハロウィンの日以外では見掛けないような装いをしている者も多く、むしろ俺と千歳の方が浮いている気がした。
 千歳と共にソファーに腰掛けて待っていると、数分後にカノンの苛立った叫び声がハッキリと聞こえた。

「ハァ!? 何で書籍館に行くのを許可してくんないのよ!? ふっざけんなぁぁぁぁああ!!」

 ……貴方はまた何をやらかしてしまったのですか?