ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 俺と世界の夢戦争〜Mind war〜 ( No.18 )
日時: 2009/12/03 17:50
名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)

war:10 cross×cross

 辺りを覆っていた砂埃が晴れると、そこには俺達が話し合っている間に激戦をしたのか、お互い赤色に塗れた二人の姿が在った。どうやら戦いは引き分けのようだ。
 
「はん、結局昔から相変わらず冷静そうに見えて心中穏やかじゃない剣撃だったな。貴様に裏切りは無理そうだ。直ぐバレる」
「主こそ。主は確実性を求め過ぎて隙が多過ぎるぞ。もし、神の能力者が現れなかったらいつまでも何をしていた? 主は我のように不老不死ではないのだぞ、限り有る命を有効に使おうとは思わんのか? ……まあ良い、神の能力者が居るなら色々使い道はあるしな、主がどうしても、我の存在を乞うのなら仕方なくついて行ってやろう」

 この様子だとお互い元気なんだろう。でも、思うんだ。何かまた厄介な奴が増えそうじゃない? え、気のせい? 気のせいだよね?

「チッ。コイツムカつく。絶対いつか星落としてやる……お願いします、彩人アヤト兄様。これで良いでしょ!?」

(え、マジ!? この人何者よ? あのカノンが兄様っていったぞ!? 人をゴミ同然に扱うあの、カノンが!!) 

 と驚いていたら、俺が感じていた嫌な予感は的中した。ああ、またトラブルメーカーが一人、二人と増えて来ます。もうこの際一人も二人も変わりません、ええ。傷付くのはいつも俺ですけど。

「ふむ。今の言葉、確と聞き受けたぞ。では主等、我は黒月 彩人(クロツキ アヤト)だ。詳しくはこの書籍館で分かる。以後、よしなに」

 宜しくお願いしますね、彩人さん。くれぐれも、くれぐれもトラブルだけは慎んで下さいね。

「あ、新しいメンバーが加わった所悪いんだけど、多分もう少ししたらあたし逹授業始まるから、カノン、さっき言ってたリンクを経つ方法、出来る?」

 カノンは頷いて俺達を元の世界に返した。俺の時だけ、明らかに手荒な方法で返されたのは言うまでもない。

※  ※  ※

「あ、優希君。おはよう。具合、大丈夫?」

 目を覚ました時、俺の隣に天使のように柔らかく微笑む女生徒が丸椅子に座っていた。普通ならこの状態を天国と言うのだが、相手が悪かった。千歳の話はどうやら冗談でなかった事が、目の前の存在によって示される。

「杏樹、さん。ええと、貴方こそどうしたのですか。俺の事をわざわざ見守ってくれたのは感謝するから早くしないと授業に間に合いませんよ」

 杏樹は小さく笑い、ゆっくりと首を横に振った。

「やだな、杏樹さんなんて。よそよそしいなあ。昔みたいに、杏樹で良いんだよ? 私ね、張り切って今日登校してみたんだけど、具合が悪くなって倒れちゃった。だから次の授業ってマラソンでしょ? 私はここで見学なんだ」

 杏樹はまだ神月の「物」なんだよな、と一瞬本気で心配してしまったが、アイツが何を隠し持っているのかは分からない。気を引き締めなければ。

「そっか。じゃ、俺は着替えなきゃなんねーから行くわ」
「うん、またね」

 杏樹に別れを告げ、保健室のドアを閉めた瞬間に、また別の厄介人が現れた。

「おいユキ!! なあ、あの子って昨日急に転校が決まって入って来た、あの神月グループの令嬢、神月 杏樹ちゃんだろ!? お前、あの子とどんな関係だよ!? 俺とお前の仲だろ!? 紹介してくれよ!!」

 とやたら早口で唾を飛ばしまくったコイツは相川 愁(アイカワ シュウ)。俺の親友の部類に入れたくないが一応、親友だ。コイツは身長も高いし見た目も良く、おまけにバスケ部のエースで一見モテそうな感じだが、俺が言うのもなんだが極度のバカで、その上女の子を見たら水着姿を想像してスリーサイズを見極める、超ド級の変態だ。俺は偶然や独りで妄想するのが好きで、まるっきりタイプが違うのに、何故か気が合うから不思議だ。

「バーカ。違うっての。そんな仲じゃないし。ってか付き合って欲しいなら堂々と告白しろよ」
「ハァ!? お前、馬鹿? 馬鹿なの? ああいうタイプはな、一歩一歩小さな事の積み重ねが大事でな……」

 そうこうしている内に予鈴が鳴り、俺は目の前の饒舌馬鹿を放置して更衣室へ走った。



「それでは、始め!! 女子は男子がグラウンドから出た時にスタートだ」

 体育教師の野太い声を合図に、一斉に走り出した。俺はマラソンなんて大嫌いだから後の方を適当に走る事にした。

 走っていたら、妙な違和感がした。まるで、俺だけが動いていて、周りは止まって「ご名答。よくここが精神世界との境界線って分かったわね」

 と、目の前にまた、どんな時でも裸足で、白地に赤いシミが沢山付着したワンピースを着た殺人少女が現れた。