ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺と世界の夢戦争〜Mind war〜 ( No.19 )
- 日時: 2009/12/05 14:10
- 名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)
war:11 誰が為に彼等は死に急ぐ I
「今回は単なる報告とヒントを与えに来ただけよ。無知故に死なれたら困るし、何よりもゲームは難しい方が面白いじゃない」
殺人少女は余裕たっぷりに告げて、自身の少し傷んだ腰まで届く長い白髪を手でかきあげた。
「殺人少女殺人少女言われるのは癪に障るわね。説明ついでにヒントをあげるわ。私だって貴方の知っている神月 杏樹よ。だけど私は彼女を上回り、そして下回る。原点であり、模造品。意味分からないでしょ? 更に難しい事を言うと、彼女と私は共に存在しないといけないけど、私は彼女をそれ程必要としない。つまり、現実世界のひ弱な神月 杏樹に手を加えようが私には関係無いのよ。だから私を消去したいなら直接消してみなさいな。無理だと思うけどね?」
俺は何が何だか良く分からないが、とにかく馬鹿にされていると思ったら、自称杏樹は重い溜め息をついて、早口で説明を続けた。
「さて、コイツ物分かり悪いし、私だってフィールドや実験場の調整とか忙しいから手早く色々教えるわね。まずはパーティーメンバーが揃ったそうね。人の持ち物奪って自分の物にするなんてなかなか面白い事するわね。まあそれは置いといて。これからは容赦なく貴方の方へ刺客を送り込むから、力を合わせて彼等を倒して私の元へ来て、王手の宣言をしてみなさい? 今から楽しみね。それと、これからは自由に貴方は精神世界にリンク出来るようになったから。目を閉じて意識を集中させれば飛ぶ筈よ。以上でヒントは終わりよ。せいぜい悪あがきしなさいな」
そして自称杏樹はまた俺に考える時間を与えずに消え去った。いつもいつも、アイツは何の為に俺の前に姿を現すんだ?
そしてまた一瞬の内に景色はいつも通りに戻った。だが問題が一つ。精神世界にいる間も、現実世界では若干進んでいる事だ。もう少ししたら女子が来てしまう。いや、別に走る姿を後ろから想像するのも楽しいんだけどね、もし女子に抜かされたら男としての威厳が無くなっちゃうじゃん?
「ユキちゃんってば遅いねー! あははは!!」
ほらもう後ろから音も無く千歳に追い抜かされちゃいました。私めの威厳はいずこ? 千歳なら理由を話せば一発で分かって下さいますよね? でも彼女、もう私めの隣になんかおりません。遥か遠くの、私めの前の方、六名先におられます。こうしている内にもどんどん先へ疾走してしまう。私めは特に遅いって訳ではなく、普通なんでございますよ?
と俺はどんどん怪しくなってゆく敬語で脳内説明をしていた。千歳が見えなくなる頃には目から、汗とは別のしょっぱい液体が僅かに流れたのは俺だけの秘密だ。
※ ※ ※
先生のくだらない話をうとうとしながら聞き流す事約十五分。ようやくホームルーム、いや、学校から解放された。そして今はまた恒例の如く千歳と一緒に下校していた。相川曰わく、美少女と登下校出来るのがどれだけ幸せなのか、その有り難みについて一度深く考えてみろ。なんて言われた。俺もその意見には激しく同意だが、何故か俺の周りに集まる美少女はロクな奴が居ない。美少女ってのは、性格も可愛くて初めて美少女って呼ぶんだろ?
「あ、ユキちゃん、さっきさ、頭の中で女の子の声が聞こえてねー、法条 優希のフィールドにいつでもリンク出来るようになった、とか聞こえてさ。それってさっきの不思議体験の事だよね!? カノン達もきっと待ってるだろうし、ね?」
ね? じゃねーよ。本音を言うと断りたい。でも断ったら確実に千歳に粉砕されてしまう。俺ってなんか哀れだな……
「ああ、カノンちゃん逹も待ってるしな。俺もなんか似たような事があってよ、えっと確か、目を閉じて意識を集中させれば良いんだっけ?」
「そ。じゃあ、せーの!」
千歳の合図で俺達は共に瞼を閉じて意識を集中させた。一瞬、エレベーターが上昇する時に体が浮くような感覚がして、再び瞼を開けると、今回はちゃんと俺達は書籍館前に立っていた。
