ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺と世界の夢戦争〜Mind war〜 ( No.2 )
- 日時: 2009/12/04 16:56
- 名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)
war:0 忘却と言う名の舞台の上のニチジョウ
俺だって一応青春真っ盛り、幸せで楽しい事に溢れている毎日を過ごしている。それにもう高校生だ。いくら怖い夢を見たからって一週間もすれば忘れてしまう。
あの時の、俺も忘れていたんだよな……。
※ ※ ※
黄昏時に、並木道に沿ってうっすらと黄色に色づくイチョウの葉を眺めながらゆっくり歩いて家路に就くのが最近の俺の日課だ。
なんて少し洒落た事を言ってみたが、俺の通っている高校の、特に俺の住んでいる築十ウン年の割には防音設備が悲惨な事になっていて毎晩俺を悩ませている、とにかくボロいマンションの周辺に住む奴は皆通っている、当たり前の事を少し恰好良く言ってみたかったのだ。他の奴とは別として俺はそんな年頃なんだよ、多分。
傍から見れば独り言を呟きながら時々表情を変えている様は正に「ヘンジン」であろう。だが俺は変人ではない。法条 優希(ホウジョウ ユウキ)と言う立派な名前もあるし、後ろを振り返ればまだうっすらと我が学舎、私立春星高等学校が見える。身元も、多分学歴も分かっているなら変人じゃないじゃないか! 至って普通の高校生以外に何と呼ぶんだよ!? 自慢じゃないけどな、成績も運動神経も何もかもが並だ。こんな個性の無い人間が変人の訳ないだろ!? 変人に三指ついて土下座して謝ってこい!!
「わぁっ!! いきなりそんな事大声で言うから驚いたじゃん。にしてもユキちゃん、真面目に……頭、大丈夫? 今度、従兄弟が勤めている腕が良いって評判の病院、紹介しといてあげようか?」
俺は背後に潜んでいた人物に対し、ある予測をした。奴だ。絶対に、奴だ。栗色の長い髪を後ろに大きなヘアクリップで纏めた見た目美少女、中身極悪のアイツ……
「やっぱり予測通りで御座いましたか。って、いつから俺の背後に居た!? どこまで聞いてたんだよ! ってか毎日毎日ストーカーするな! そしてユキちゃんって呼ぶなあああぁぁぁ!!」
叫びは虚しく周りに響いただけでアイツは聞いていなかった。むしろ満面の笑みを浮かべている! ヤバい、ヤバいぜ大佐!! 敵はトドメを刺そうとしていますよどうしましょう!?
「ん、大丈夫。安心してよ。最後まで一語一句聞き逃さないで聞いてたから」
「笑顔でそんな事言うなよ……」
ああああぁぁぁさらば俺の青春…。そうだ、何もかも背後で笑っている森川 千歳(モリカワ チトセ)のせいだ! 畜生! アイツは成績も運動神経も並外れて天才的なのに、なのになんでそれを良い方向に使わないで俺を虐げる方に使ってるんだよ!! 畜生! ちょっと顔が良いからって調子に乗りやがって! つか、あのファッションセンスは意味分かんねーよ。何でジャージを制服の上に羽織ってるんだ!! 男のロマンが! 煩悩があああぁぁぁ!!
「もしもーし、ユキちゃん。チャネってるのは分かったから戻って来て。イタいから。幼稚園児に指差されてるよ」
「好きにしろよ……」
そんなこんなで結局、背後に千歳を残したまま、再び歩こうとした時、周囲の風景にそぐわない黒塗りの車が目の前に止まった。
それが、悪夢再来の鍵だったのかもしれない。
