ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺と世界の夢戦争〜Mind war〜 ( No.6 )
- 日時: 2009/11/12 23:16
- 名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)
war:4 聖戦の裏は殺戮
「ここはどこ? 俺は誰? それはね、ここは戦場。貴方は神。この世界は法条 優希、貴方が創り出した世界であり、そこに私が無理やりリンクさせた事により様々な人間、で纏めてしまって良いかしら? が私と貴方を追って、私が作った抜け穴からリンクして来ている訳。お分かり?」
そう歌うように囁いた人物を俺ははっきりと覚えていた。一週間前の悪夢の原因の、死神のような少女だった。
「あら? そんな怖い顔しないで? 今は私が手を下すつもりはないから。それより、良い物見せてあげるね」
少女が指を弾いて音を鳴らすと、今まで薄暗かった部屋が所々から青白い光が差して、部屋の中の様子が分かるようになった。光を発した物は蛍光色の液体に満たされた大きな筒状の機械で、中には人間が入っていた。
「今、私達が居る場所は実験場。ありとあらゆる世界に三人位しか居ない調整さえすれば使える天然の、それも神の力を持った能力者、貴方のお陰でフィールドの影響力や能力の使用制限等沢山のデータが採れたわ。感謝する。そのデータを元に現在環境に適せるように力を制御させた能力者を培養している部屋なの。奥の部屋はね……」
俺は完全に考える事を放棄した。頬をつねったくらいの痛みじゃ目は覚めないんだな、俺は。じゃあ頬を本気で殴ってでも起きてやる! 妙な夢はもう見たくないんだっ!!
そんな自暴自棄になった俺を冷めた目で数分間見つめていた少女は呆れて、頬が真っ赤に腫れながらも殴り続けている俺の元へと音を立てずに近づき、懐からナイフを取り出して俺の頬を一閃した。頬を撫でるように伝う生ぬるい温かさに俺は息を飲んだ。
「……確かにここは夢よ。正しくは能力者による仮想的具現化世界、簡単に精神世界と呼んでるわ。でもね、精神世界で負った傷は現実世界に実体を持つ者なら目覚めた時に、外傷は見られなくても内部にダメージが溜まる。つまり貴方だって死ぬのよ。さあヒントはここまでよ。残りは自分で考えなさい」
そう吐き捨てた少女の姿が徐々に霞んで見えなくなり、完全に見えなくなると周りはまた暗くなった。
※ ※ ※
ワープでもさせられたのだろうか? 俺はさっきとは違う風景の中に居た。
壁面に木を組んで模様のようになった家、地面は無機質に舗装されたアスファルトではなくて、大きさの違う石が隙間無く敷き詰められた石畳の道が続き、その上を荷台を付けた馬車が通っていた。……なんというか、こんな光景、ロールプレイングゲームで見た事ある気がするなぁ。
でも、ゲームとは違う点が幾つかあった。一つ目は、道路や壁のあちこちに、赤黒い染みが沢山付着している事だ。二つ目は、多分俺の偏った知識による偏見なのかもしれないが、壊れた壁等に埋め込まれているのは間違いもなく弾丸であり、この時代にある武器なんて弓矢や剣じゃないのか? 銃器の類があるのはおかしいと思うぞ? まぁ一応日本でいう火縄銃なんてのは反則っぽいがあっても不自然じゃないが、威力や僅かに見える弾丸の形からして映画とかで見るピストル等よりも遥かに優れている物であると推測される。そしてそれらを確信に変える物……一見風景に溶け込んでいるかのように見える馬車の荷台の中身、それは夢の中で沢山見た、若干の差はあるがだいたいは頭まで繋がっている「ソレ」だった。
(戦争でもしてる、のか? でもどこか違和感がある。……どこだ? 何がおかしい、考えろ。いや、聞いてみるのが一番だよな)
そう思って俺は勇気を振り絞って馬車に乗って手綱を握っている男に声を掛けた。
「あの、すいません。ここって今、戦争か何かをしているのでしょうか?」
男は聞こえなかったのか、何も反応を起こさなかった。もう一回試したが、やはり何も反応はなく、もう声が届かなくなってしまいそうな時だった。どこからか声がしたのは。
「ふん、精神崩壊したこの男に声を掛けても無駄よ。それよりアンタも神月を追ってるどっかのエージェントなの? こんな常識も教えられずに仕事させられてるアンタって捨て駒なのかしらね」
と、初対面にも関わらずに言葉の猛毒を撒き散らした魔女の格好をした痛々しいこの女は誰だ? 荷台に生きた奴なんていないと思っていたのだが。
「あ、俺はその、エージェント? ではないよ。俺は法条 優希。普通の高校生だったが、白い髪に赤い瞳で昔の友人にそっくりな少女に神だの能力だの精神世界だの言われてここに連れて来られた」
女は俺の言葉に対して悪魔のような笑みを浮かべた。女性の笑みに対して嬉しさと同時に寒気を覚えるのは気のせいだろうか?
