ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺と世界の夢戦争〜Mind war〜 ( No.7 )
- 日時: 2009/11/14 01:51
- 名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)
war:5 旅と戦争は道連れだらけ
口の端を凶悪そうに釣り上げた女は軽やかに荷台を飛び降りて偉そうに告げた。
「じゃ、アンタはあたしと一緒にこれからの旅について行く事! 決定!! いやぁ、思わぬ所でお宝ゲットしたのはラッキーね。正史の人間ってのがちょっと軽く拷問したくなる程腹立つけど……仕方ないわ。妥協してあげる」
えーと、そこのお姉さん、人に指差してはいけませんよ。と言うか俺に拒否権は無いの!? この選択肢は強制なの!?
「いきなりついて来いなんて言われて簡単に分かりました、なんて言ってついて行く人の方が遥かに少ないと言うか疑った方が良いですよ、それ。まず人に何か言う時は自己紹介をするべきじゃないですか?」
こんなちょっと強気な女の子も千歳によって攻略済みさ。それよりも目の前の子もなかなか可愛いなぁ。金髪に紫色の瞳で魔女の帽子を被ったミニスカゴスロリだぜ!? 良いですなぁ。
「どこ見てんのよ変態!! ったく人がせっかく自己紹介してあげようとしてんのに! あたしはカノン。ヴェリエスリルって言う小さな村出身の魔女よ! 今まで骨抜きにしてきた男の数は星の数より多いのが自慢よっ!」
やっぱり駄目だ、コイツ。と俺の常識が叫んでいたが、そんなもんは無視だ。電波属性も好みだからな!!
「はぁ。まあ仕方ないですね。情報が無い状態で動くのは危険ですし。色々教えてくれ「うん分かった分かった。あたしについて来るのねじゃあレッツゴー!」
スルーされるのは慣れてます。大丈夫です。悲しくなんかありません。
「じゃ、行くわよー!! あ、あんたの分際でアタシに口答えするなら容赦なく星落とすからねっ!」
わお。装備アイテムが星のステッキなんて素敵ですね最高です。
「へぇ。星を降らせる事が出来るんですか。じゃあ昼間ですけど今降らせる事って出来ますか?」
その言葉を聞いたカノンがまた悪魔の笑みを浮かべた。あれ、俺何か危険な事言ったっぽい?
「ふっふっふ。オーケーオーケー分かったわ。でも勘違いしているようだから一つ言っとくわね。アタシの星は夜空のちっぽけなのと違って惑星とかの星だから。痛いわよー」
「え、ちょ、待って下さ「ハイ、どーん!!」
どーん!! って。どーん!! って何だよ……調子に乗らなきゃ、良かっ、た。
こうして女の子女の子騒いでいた不埒な魂は星となった。そして本日三回目の意識が薄れるのを実感した。
※ ※ ※
「……っつー。まさか、アレ本当に星降って来てんのか? だとしたら、死んでるよな。俺」
頭を鈍器でスイカ割りしたようななんとも言い難い痛みに襲われて、目を覚ましたのはテレビの音が鈍く頭に響くだけの寂しいリビングだった。頭以外にも、頬がヒリヒリと痛く、ナイフで軽く斬られたのを思い出して、頬に指を当てたが傷の感触は無く、あの時放たれた少女の言葉を思い出した。
「やっぱ夢じゃねーのか? ……ん? そだ、ラーメンは!? どれだけ精神世界? やらに飛ばされてたか知らんが、三十分以上は経ってるぞ!?」
と今更腹が訴えた空腹に対し恐る恐る後ろに鎮座して待ち構えているカップラーメンの中を覗き込んだ。
俺の予想に反して麺は少し汁を吸ってふやけてしまったが、箸を動かすとまだ暖かい湯気が立ち上って美味しそうな匂いが食欲をそそった。これはまたふざけたカラクリか何かなのか!? そうだ、そうに違いない。タイマー代わりの時計の短針は確か寝る前には五時過ぎだったぞ? 今はええと、
「五時八、分」
俺は数学やら算数やら足し算やら引き算は苦手なんだけど、まあ計算してみようじゃないか。俺はカップラーメンが出来上がる三分後までテレビを見て待つ事にしました。ええと、その時確か五時二、三分でした。そして俺はうとうと寝てしまいました。夢、いや、精神世界の中では少なくとも三十分以上経過していた筈です。でも目を覚ますと五時八分でした。さてこれはどういう事でしょうか? 回答者の法条 優希さん、答えをどうぞ!!
(つまり、あの世界と現実では時間経過の速度にズレがあるって事だよなー。どんだけ俺の頭はファンシーでメルヘンなんだよ。もうこれは千歳の言った通り病院行った方が良いのか?)
でも俺は深く考えると頭がショートするタイプなんだ。だからまずとりあえずメシだ! 少し伸びてしまったとは言えまだ美味しくいただける!
俺は軽く夕食を平らげ、後は何事も無く一日が終わった。ただ少しだけ違ったのは、夜、寝る事が少し恐ろしかった。精神世界の事もあるが、
「夜に気をつけてね」
と囁いた千歳の言葉が頭から離れなかった。
