ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ——電脳探偵部——  ( No.32 )
日時: 2009/11/15 15:22
名前: 空雲 海 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)

「はぁ?」
五人全員の声が揃う。
「意味わかんないしっ! 何で急に出てきて私達の邪魔するのよっ! っていうか、あんた誰っ!」
一色さんの問いに雨雲先輩が答える。

「そうね。まずは自己紹介から。私は桜 雨雲。彼女は柳川 海晴。彼は楠 空雷。私達は朱音ちゃんと助けに来ました」
「助けに?」

「そうです。私が依頼したんです。この電脳——」
来瀬さんが禁断の言葉を言おうとした瞬間に、空雷先輩が口をすばやくふさぐ。
「……まぁ、彼女の言うとおり、依頼っていうか、まぁお願いされただけなんだけど」

雨雲先輩が来瀬さんの言葉をフォローする。
……。こういう時はコンビプレーを発揮する電脳探偵部。それがもっと持続していれば、私はあの重たい扉が軽く思えるのに……。
「はははは。気にしないで、話を続けましょうか、雨雲先輩」

私が最終フォローをする。
「ええ、そうね」
目では「海晴ちゃんナイス!」という目。
そりゃどうもありがとうございます。
「それで、あなた達がこの状況を助けるために、ここに来たと?」
「そうです」
一色さんの問いに声を揃えて言う。

「あらそう……。あなた達は大きな勘違いをされてるようですね……」
一色さんがゆっくりと口を動かして言った。
「はぁ?」
「来瀬さんは何とお願いしたの?」
「『助けて』と」
「バカじゃないの」

氷のように冷たい一言が来瀬さんを包み込む。
「あなたは全然わかってないから、生きる価値もないし、もしかしたら……」
ニヤッと笑い、
「自殺する価値も無いのかもしれないわね」
言った。

「それじゃぁ、あなたは生きる価値も無ければ、人に『自殺する価値もない』と言う価値もないわね」
「…………」
沈黙。
「……今誰が言ったの?」
「私よ」
雨雲先輩が堂々と言う。

「悪いけど、『あんた今なんつった?』から空雷が勝手に突入するところまで、見てたわ。それに朱音ちゃんはこんな言葉言ってたわよね……『そんなの決める権限だって誰にもない。自分もね』って。その通りよ」
「お前……!」

「今あんたが朱音ちゃんの事いっぱい決め付けてたけど、そんな権限誰だってない。あんたが……この教室を牛耳っているけれど、そんな事一体誰が決めたの
?」
「私が決めたんだっ!」
声を張り上げる。

「この教室は私に従っている。誰も文句を言わない。それでいいじゃないっ! 誰も文句を言わないということは、それに賛成しているという事でしょう?」
「それは自分の勘違いだな」
「なにっ!?」
空雷先輩が続ける。

「なぁーにが『誰も文句を言わない。だから従っている』だ。それは、自分の力でみんなを抑えてるだけじゃねぇーかっ! それはな、ただ『怖い』という恐怖心だけで従っているんだ。そんなの真じゃねぇーよ」
「みんなの目を一回よく見てみればいい」

雨雲先輩が目をみんなに走らせる。
そして、五人はみんなを見る。
「わかるでしょう? ……あなた達を怯えた目で見つめるみんなが」
「…………」
沈黙。
その時っ!

『アンタなんか生きる価値なんてないのよっ!』
『消えろっ!』
学校のスピーカーから一色さんと南野さんの声。
これは……!

Re: ——電脳探偵部——  ( No.33 )
日時: 2009/11/15 15:37
名前: 空雲 海 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)

『さっさとあんたなんか氏ねばいいのにっ!』
『氏ねっ!』
この声はこの五人の声……。
「こんなことやる人物なんて、一人しかいないわよね……」

「ああ……」
「曇先輩!(だっ!、よっ!)」
私達の声が揃う(最後はバラバラ……)。
「何なのよっ! これっ!」
五人がパニックになってると、プチッと切れる。
『皆さん、この声は一年A組に所属する一色 青、南野 黄、緑葉 速美、水理 乃々、村空 咲。系五名の『いじめ』時の音声です』

うっひぁーっ! 曇先輩、はっきり「いじめ」って言っちゃったよっ!
『被害者は来瀬 朱音。この放送が信じられない方は今すぐに一年A組の教室に行って下さい。尚、この放送が物的証拠となるので、『いじめ』グループはそこに居てください。繰り返します……』

……完全に曇先輩だな。
「さぁーて。どうする? この声が瓜杉 曇だと教師達はすぐにわかるだろう。それで、すぐにここに駆けつけてくる。ここでは瓜杉グループの御曹司、曇の言う事ははっきり言って絶対的だ。逃げ場はねぇー」

「今放送した物的証拠がある限り、逃げられたとしても疑いは晴れない。もっと濃くするだけ。しかも、全校生徒に聞かれたんじゃ……もう終わりかな?」

雨雲先輩と空雷先輩が止めの言葉を言った。
「そ……そんな……」
一色さんの気の抜いた言葉で、五人全員が座り込んでしまった……。