ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ——電脳探偵部—— ( No.6 )
- 日時: 2009/11/01 12:41
- 名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918
「今回のデリート計画は——」
「ごめんなさぁーいっ! お邪魔しまぁーすっ!」
私達は一斉に大声をあげる。
電脳探偵部のみんな、そして来瀬さん。
私達は、ななんとっ!? 来瀬さんのお家にお邪魔していますっ!
「おっお母さん……。私のお友達。入れてもいいでしょ?」
来瀬さんが脅えた様子で言う。
お母さんは
「そんなのお断りよ。さっさと帰ってちょうだいっ!」
そう言い思いっきりドアを閉めるお母さん。
その時っ!
「まぁまぁそう言わずに」
曇先輩がドアに足を引っ掛ける。
「入れてくれたっていいでしょ?」
来るぞっ来るぞっ来るぞっ!
そう言って、曇先輩がニコッと笑う。
キターーーー! 曇先輩の悪魔の微笑みっ!
その瞬間、お母さんの動きが止まり、静かにドアを開けた。
「入ってもいいって」
無邪気に笑う曇先輩。
私は来瀬さんの肩をギュッと持ち、グイッと体ごとこっちに向けさせる。
「いい? 来瀬さんはあんな先輩について行っちゃ駄目よ」
私が力を目に込めて言う。
この言葉の意味が分からない来瀬さんはキョトンとしている。
そして、そのまま私は家に入った。
訳が分からないという顔をした来瀬さんを引っ張って——。
「さて——。計画は発表しました。そこで、おさらいをしたいと思います」
曇先輩の言葉で始まった。
私達は今来瀬さんの部屋で円になって座っている。
曇先輩を時計の12としたら時計回りに、私、雨雲先輩、空雷先輩、来瀬さんとなっている。
「計画はまぁ簡単に言えば、劣り作戦。まず、劣り役が暴力を受けてその場面を私達が抑えるというもの——。劣り役は——来瀬さん」
曇先輩の鋭い目が来瀬さんを捉える。
これは誰しもが反対した。だって、もうデリートするのにもう暴力を受けなくていいじゃない——っていうのが、私の考え。
だけど、この考えは暴力を受けなければ始まらない。
だから一番暴力を受ける確率、そして受けやすく相手がやりやすい人——それは、来瀬さんしかいない。
「もう来瀬がやらなくたっていいじゃないか!」
空雷先輩がガラクタ山から吼える。
「この計画しかしっかり場面を抑えられないんです」
曇先輩が「空雷先輩は、全然わかってない」というような表情で言う。
「だからって、デリートするときぐらい暴力を受けなくたっていいんじゃないんですか?」
私が言うと、雨雲先輩が相づちを打つ。
「いいんです」
このか細い声は来瀬さん。
「このデリート計画は、私は全然反抗してないのに、あなた達にだめもとで頼んだんです。これくらい、わたしがやります。もう……慣れてますから」
そして、力のない笑みを見せる。
来瀬さん……こんな事、本当は慣れたら駄目なのに……。
この来瀬さんの言葉は、私達に大きく圧し掛かってきた……。
——絶対にこのデリートは成功させなければならないっ! 来瀬さんの為に——!
私達は決意した。
その目で来瀬さんを見る私。
その時っ!
「朱音……ちょっとこっちに来なさい」
お母さんから言葉がドア越しに掛かる。
「はい……」
か細い声で答える来瀬さん。
その時、私達を見る。
その目は恐怖で脅えている目……呼んでも、大声で叫んでも、誰も助けに来てくれない孤独感……。
そんな目を私達は見てきた……だから助けたいっ!
——行って! 前に進んでっ! きっと私達が助けに来るっ!
私達はそんな思いを込めて、来瀬さんに見つめ返す。
来瀬さんは、そんな私達の目に答えるように、綺麗な笑顔で出て行った。
「さて——」
曇先輩が立ち上がる。
「ここからが本領発揮です」
- Re: ——電脳探偵部—— ( No.7 )
- 日時: 2009/11/01 12:41
- 名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918
私達はドアを細く開けて見る。
……誰も居ない。
「リビングの方に行ったんじゃない?」
雨雲先輩が静かに言う。
「その可能性は大ですね。行ってみましょう」
私達は部長の曇先輩を筆頭にして階段を下りる。
その時っ!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
リビングから悲鳴が聞こえた。
「この悲鳴ってもしかして——」
「来瀬のだぁ!」
雨雲先輩と空雷先輩が言う。
「急ぎましょう!」
私達はもう足音なんか無視してリビングに駆け込む。
そこには——。
「何だよ……これ……」
空雷先輩が冷や汗を流しながら言う。
そこには、全身傷だらけの来瀬さんが押されて倒れたような状態でいた。
ハァハァと息を切らし、腕、足、背中、首辺りまで暴行の後が生々しくあった。
「この子、最後までよくもまぁ悲鳴なしで絶えたと思ったら……この子達が助けにきてくれるとでも思ったのかしら? まぁ実際助けに来たような感じだけどね」
フッと鼻で笑う母親。
「てめぇー!」
空雷先輩が曇先輩を押しのけてグーを作る。
その時っ!
「止めて下さいっ!」
その言葉で空雷先輩の動きがピタッツと止まる。
「来瀬……?」
来瀬さんが息を切らしながら、ゆっくりと立ち上がる。
「私はまだあなた達に言われたとおり抵抗していません……だったら……今抵抗しますっ!」
- Re: ——電脳探偵部—— ( No.8 )
- 日時: 2009/11/01 12:42
- 名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918
「もうやめてよ……こんな事するの……」
来瀬さんの声が微妙に震えてる。
「こんな事して何が楽しいの?いつもいつも私をぶってばっかりっ! あなたにも見えるでしょう……? このアザ」
そう言い手足を前に突き出し、大声を上げるように言う。
「これが私に暴力を振るった証拠よっ! これが見えないなんてどうにかしてるわっ!」
口調も変わり、そのまま狂ったように続ける。
「あなたは一体何がしたいの? 私を痛みつけたいの!? それとも狂った愛!? これは私はどう受け止めればいいのっ!? こんなの……こんなの暴力でしょっ! 自分でわかってないの? トイレの回数は限られてるし、リビングにも行けない。行ったって殴られるっ! 私の居場所はどこにあるの? 返してよ……返してよ、私の居場所っ!」
その後は耳に劈くような泣き声を上げた。
「うっ……うるさいっ!」
そう言って、母親はイスの横にある金属バットを持って振り下ろす。
殴られるっ!
私はそう思い、ぎゅっと目をつぶる……だけど、一向に生身が殴られるあの鈍い音が聞こえない……。
そっと目を開ける。
そこには——
「デリート計画、開始だぜ」
空雷先輩が金属バットを掴んでいた。
ニヤリと笑う。
「お前親に反抗する根性くらい持ってるじゃねぇーか……」
そして、そのまま腕をねじ伏せる。
「いたたたたたたっ!」
苦痛の表情を浮かべ、床に座り込む。
私達は座り込む来瀬さんを取り囲むように立つ。
そして、目の前にいる母親を睨み付ける。
「あんた達……何なのよっ……!」
興奮しながら言う母親。
私達はその問いにあわせてぴったりと合わせてこう言った。
「電脳探偵部です」
- Re: ——電脳探偵部—— ( No.9 )
- 日時: 2009/11/01 13:08
- 名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918
「電脳探偵部?」
母親の頭の上にハテナマークが浮かぶ。
「来瀬朱音の母親——バグをデリートじに来ました。あなたはこの子を見てどうおもうんですか?」
曇先輩が厳しい視線を送る。
……数秒の沈黙。
「フッフッフッフッフ……アーッハッハッハッハッ!!」
突然、大声で豪快に笑い出す母親。
「あんた達おかしいんじゃないの?」
「あんだってぇ?」
「空雷」
雨雲先輩が空雷先輩をたしなめる。
「何がおかしいんですか?」
私が聞くと、ギロリと目を光らせる。
「あんた達、この子に騙されてるわよ」
えっ!?
私達は繭を八の字にさせる。
「この子、ご飯食べ残したから注意したのよ。そしたら何て言ったかわかる?」
……沈黙。
「この子、『別に私が作ってって頼んだんじゃないからどうしようと勝手でしょ?』って言ったのよっ!」
声が上がる。
そして、私達の目線が来瀬さんに向けられる。
手に、汗が出てきているのか光っている。
「それからよ、この子が反抗するようになったのはっ! 私の言う事なんて全然聞かないっ! 夜遅くに帰って来たり、食事に手を付けなかったりっ! だから正そうと思ったのよっ! そうじゃないとこの子ちゃんとしてくれないんだものっ! 私は教育をしたのよっ! それなのに、電脳探偵部とかどーとか知らないけど、なんて責められなきゃいけないのっ!?」
最後の方は興奮してわめき声にしか聞こえなかった。
私達の目はどんどん疑惑の色に染まっていく。
私もそうだった。
来瀬さんは相手だけが悪いみたいな言い方をした……DVは、やっちゃいけないけど、こっち側にも非はあるんじゃないかな……。
だけど——今回は駄目な事は駄目。
そして、あっちにも非はあり、あっちが悪い。
だって……私達にはあの言葉があるから。
「フッ」
空雷先輩が鼻で笑った。
「なぁーんだ、そんな事だけかよ……」
「そんな事だけって——!」
「『人殺しそうになったとか』。それとはまた別だけどよ、こんくらいの事なら誰だってあるさ」
「こんくらいの事って——……」
母親が歯軋りをさせる。
「一つ聞きたいことがあります」
曇先輩が来瀬さんに言う。
「あなた——何か理由があったんじゃないんですか?」
……来瀬さんの体が震えてる……。
「何でそう思うんですか?」
声を絞り出すように言った。
「うーん……それでは言い方を変えてみましょう。
『なぜあなたは泣いているのですか?』」
……沈黙。
そうすると、来瀬さんの目から静かに涙が流れた。
それはまるで曇先輩が予言していたかのように——……」
「あなたは今、後悔しているのですね?」
雨雲先輩が言う。
すると、次々に涙が流れ、静かにかつゆっくりと頷いた。
私達はその答えを見ると母親に向いた。
その瞳に、もう疑惑の色はなかった……。
- Re: ——電脳探偵部—— ( No.10 )
- 日時: 2009/11/01 13:09
- 名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918
不正発見! 直します。
- Re: ——電脳探偵部—— ( No.11 )
- 日時: 2009/11/01 13:09
- 名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918
「電脳探偵部?」
母親の頭の上にハテナマークが浮かぶ。
「来瀬朱音の母親——バグをデリートじに来ました。あなたはこの子を見てどうおもうんですか?」
曇先輩が厳しい視線を送る。
……数秒の沈黙。
「フッフッフッフッフ……アーッハッハッハッハッ!!」
突然、大声で豪快に笑い出す母親。
「あんた達おかしいんじゃないの?」
「あんだってぇ?」
「空雷」
雨雲先輩が空雷先輩をたしなめる。
「何がおかしいんですか?」
私が聞くと、ギロリと目を光らせる。
「あんた達、この子に騙されてるわよ」
えっ!?
私達は繭を八の字にさせる。
「この子、ご飯食べ残したから注意したのよ。そしたら何て言ったかわかる?」
……沈黙。
「この子、『別に私が作ってって頼んだんじゃないからどうしようと勝手でしょ?』って言ったのよっ!」
声が上がる。
そして、私達の目線が来瀬さんに向けられる。
手に、汗が出てきているのか光っている。
「それからよ、この子が反抗するようになったのはっ! 私の言う事なんて全然聞かないっ! 夜遅くに帰って来たり、食事に手を付けなかったりっ! だから正そうと思ったのよっ! そうじゃないとこの子ちゃんとしてくれないんだものっ! 私は教育をしたのよっ! それなのに、電脳探偵部とかどーとか知らないけど、なんて責められなきゃいけないのっ!?」
最後の方は興奮してわめき声にしか聞こえなかった。
私達の目はどんどん疑惑の色に染まっていく。
私もそうだった。
来瀬さんは相手だけが悪いみたいな言い方をした……DVは、やっちゃいけないけど、こっち側にも非はあるんじゃないかな……。
だけど——今回は駄目な事は駄目。
そして、あっちにも非はあり、あっちが悪い。
だって……私達にはあの言葉があるから。
「フッ」
空雷先輩が鼻で笑った。
「なぁーんだ、そんな事だけかよ……」
「そんな事だけって——!」
「『人殺しそうになったとか』。それとはまた別だけどよ、こんくらいの事なら誰だってあるさ」
「こんくらいの事って——……」
母親が歯軋りをさせる。
「一つ聞きたいことがあります」
曇先輩が来瀬さんに言う。
「あなた——何か理由があったんじゃないんですか?」
……来瀬さんの体が震えてる……。
「何でそう思うんですか?」
声を絞り出すように言った。
「うーん……それでは言い方を変えてみましょう。『なぜあなたは泣いているのですか?』」
……沈黙。
そうすると、来瀬さんの目から静かに涙が流れた。
それはまるで曇先輩が予言していたかのように——……」
「あなたは今、後悔しているのですね?」
雨雲先輩が言う。
すると、次々に涙が流れ、静かにかつゆっくりと頷いた。
私達はその答えを見ると母親に向いた。
その瞳に、もう疑惑の色はなかった……。
- Re: ——電脳探偵部—— ( No.12 )
- 日時: 2009/11/01 14:15
- 名前: 空雲 海 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
「何よあんた達っ! そっちが——」
「自分にも非があるじゃないのかとか考えねぇーのか?」
空雷先輩が真剣な声で言う。
「お前『反抗期』って知ってるか?」
「は?」
「反抗期っつーモンはなぁ……一旦親と子供が向き合う時期なんだ。この状態、向き合ってるって言うか?」
……沈黙。
「向き合ってるって言わねぇーよなぁー……。だって、お前は……DVに走ったんだもんなぁー!!」
空雷先輩が怒鳴った。
「反抗期になる理由なんて人それぞれあるんだよ。こいつの場合は、学校でいじめを受けてるからだ」
その瞬間、母親の目が大きく開く。
「「知らねぇーだろ……じゃなきゃこんな事ならなかったんだもんなぁ……。なんで……なんで……なんで一番身近に居る母親が気づいてやらねぇーんだよ! 気づいて欲しいからあーなったんだろ! お前はそれを見落として、違う解釈したんだろ! ちゃんと答えも何にも聞いてないのに、知ったフリしてんじゃねぇーぞぉ!」
空雷先輩が勢い欲壁を叩く。
涙目になって、静かに頬に涙が流れた。
「彼女はあなたに信号を送りたかったんです」
雨雲先輩が続ける。
「『苦しい』という信号を。『悲しい』という信号を。だけどあなたは気づかなかった……。それは、今あなたが真実を知った悲しみよりも、彼女の『気づいてくれなかった』という悲しさの方が大きいと思いますよ」
雨雲先輩が静かに言った。
来瀬さんは泣き崩れてる。
母親はうつむいて肩を震わせてる。
空雷先輩がそのまま言う。
「お前子供の目見てちゃんと言葉交わしたこと最近あるか?」
……沈黙。
「ないだろぉーなぁー……。だからこんな事なってんだよなぁー……」
そう言った空雷先輩は来瀬さんと母親を引き寄せる。
そして、強引に顔を持ち、あと少しで鼻先がくっつく距離に置く。
「俺はなぁー……根性なしも嫌いだが、それ以上の根性なしも大ッ嫌いだぁ!」
……最後はこの家中に響くような大声を上げた。
急にシンと静まり返るこの場。
その時、
「朱音」
母親がかすれ声で来瀬さんの名前を呼ぶ。
「ごめんね……」
涙でいっぱいの目で言う。
その発言に驚いた来瀬さんは笑顔になった。
そして、そのまま母親は来瀬さんに倒れこみ、硬く抱き合った。
二人の涙と笑顔が光っていた……。