ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 〜ワンボーイ〜登場人物更新♪第2章突入!! ( No.30 )
日時: 2009/12/10 17:28
名前: 遊太 (ID: EWcIN/Ij)

♯12    『北海道へ』

帝国中学校が崩壊して1週間後.....

優は母の恵と父の裕次郎とともに車で北海道を目指していた。
目の前には引っ越しのトラック、後にはマイケルとアディを乗せた車。
「父さん。後どれくらい?」
「ん?まぁ・・・・、5時間だな。」
裕次郎の言葉を聞いて優は窓の外を見る。
目の前は青い海に雲ひとつない空が広がる。
「やだな。」
優はボッソリとつぶやく。
「でもなぁ、手抜き工事なんて最悪だな。」
「ホントよ。次の学校は大丈夫かしら。」
恵は裕次郎を見ながら言う。
「さ、さぁな。北海道は最近隕石が落ちて壊滅状態だっただろう?」
「もう!!なんでそんなところに・・・・」
恵はため息をつく。裕次郎も大きなため息をついた。
〈ため息つきたいのはこっちだよ・・・〉
優は心の中でそう思う。しかし、口には出さない。
優を乗せた車は着々と北海道へ近づいていた。

**********

東京警視庁 生活安全課

デスクがズラリと並べられ、その部屋の中に2人の男がいた。
「先輩。どうですか?」
眼鏡をかけた若い刑事が言う。
「あぁ。どうも気になるな・・・・」
30後半の刑事、郷田竜は資料を手に言う。
隣に居る眼鏡をかけた刑事、石井智介は資料を覗き込む。
「何が気になるのですか?ただの手抜き工事にたまたま火災が重った事故では?」
石井がそう言うと、郷田は席を立ち、前にあるホワイトボードに資料を貼った。
「説明しよう。よーく聞け。」
郷田は近くにあった棒をとり資料を指す。
「この事故には不審な点が幾つかある。一つは火元。火元は火種も何もない職員室前。もう一つは帝国中の学校の崩れ方。A棟だけがきれいに崩れている。これまで大きな地震や災害でなぜ崩れなかった?」
郷田が石井に問う。石井は慌てて答えを出した。
「それは・・・・分かりません・・・」
石井は首を傾げる。
「普通、崩れるのは全焼したB棟の方のはずだ。しかし、半分しか燃えていないA棟がなぜ一気に崩れる?ありえないことだ。しかも、問題はこの後だ。」
郷田は一旦席に戻り、2枚の写真を取ってホワイトボードに貼り付けた。
「この二人。青森の刑務所から逃げだした傘橋栄治と田中丸吉脱獄犯。なぜ、帝国中学校にいた?しかも、目撃者の情報では謎の集団が未来橋の下で2人を取り押さえている。もうわけが分からんわ!!!!」
郷田はホワイトボードに貼り付けられている栄治の写真を殴った。
「石井!!青森に行くぞ!!」
「へ?」
「青森の刑務所に行く途中に2人を乗せた車が事故ってんだよ!!それで2回目の逃亡。一旦青森に行って情報を得るぞ。」
「は、はい!!」
2人はスーツを着て部屋から出ていった。

**********

東京都 保険会社‘セーモ’ 10階 社長室

社長のターナーは窓から景色を眺めている。
「困ったもんだな。ホワイト。」
「優君たちのことですか?」
隣に立っているホワイトは首をかしげながら聞く。
「ああ。しかも、傘橋と田中という男は逃亡しているのだろう?見つかったのか?」
「現在、フレッカーとホーキングが単独で探しております。もしかしたら、海外へ逃亡してるかも・・・」
ホワイトがそう言うと、ターナーは席を立ち突然社長室から出ていった。

廊下には従業員が数人。ターナーはポケットから携帯を取り出す。

プルルル♪ プルルル♪

『もしもし?』
『スタンリーか?私だ。』
『あっ!社長、お疲れ様です。』
携帯の向こうからスタンリーの声が聞こえる。
『頼みたいことがあるのだが、いまどこだね?』
『えっと・・・。仕事で神奈川の方にいるのですが・・・』
『・・・・そうか。』
『頼みって何ですか?』
『神奈川の港をすべてあたってくれ。不審な船を見つけたら私に電話をまたしてほしい。』
『?分かりました。それでは。』
携帯の電源が切れると、社長はため息をついた。
「めんどうごとにならなければいいが・・・」
社長はそう言うと、社長室へと戻って行った。

**********

太平洋のど真ん中 正確な場所は不明

能力者テロリスト集団‘デミウルゴス’を乗せた船はとうとう、アメリカの領域に入った。
二段ベットに椅子とテーブルが置かれた部屋に栄治と丸吉はいた。
「平和だな〜ぁ。」
丸吉は丸い窓から見える海を見ながら言う。
「何が平和だ。俺らは犯罪者で脱獄犯なんだよ。その時点で平和は終わってる。」
「そんなこというなよぉ〜。てかさ、今更世界征服なんて無理じゃない?」
丸吉が軽い口で栄治に言う。
すると、栄治はニヤリと笑った。
「確かにな。だが、コツコツとやっていけばその内叶う。刑務所で教えられただろう。」
栄治と丸吉に頭に、ある人物の言葉が蘇る。


‘コツコツとやればその内すべてが叶う。もちろん、この刑務所から出ることもな'


「あの頃は、まだ俺らも人間だったな。」
栄治の言葉に丸吉が首を傾げる。
栄治は左手を出して指パッチンをした。
すると、指の先から小さな火が出た。
「なんで、どうして突然こんな能力を持ってしまったんだろう・・・」
「別に薬とかの副作用じゃないもんね。」
「あたりまえだろ。」
栄治が大声で笑う。
その時だった。

ガチャ

ドアが開き、ヴィンが入ってきた。
「もうアメリカの領域だから君らが捕まることはないよ。」
ヴィンは笑顔でそう言う。
栄治と丸吉はその言葉を聞いて顔を合わせて笑顔になる。
「あとはアメリカに着くまで待っててね。」
ヴィンはそう言うと、ドアを閉めて出ていった。
「やったね、栄治。」
「あぁ。とりあえず一件落着だな。」
2人は安心し、顔を合わせて笑った。