ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Fate of Chains ( No.8 )
- 日時: 2009/11/19 18:37
- 名前: 某さん ◆PHKOj6t3P2 (ID: YpJH/4Jm)
Episode05
Craig-黒狼(ルー・ノワール)-
「ん、オレだけど」
入ってきたのはさっきの黒髪の少年、クレイグだった。静かにセシルのベットへと近づいていく。
「あ、あの、えと——」
「いや、さっき泣いてたから心配になってな。支部長には、落ち着くまで部屋に入るなって言われたんだけどさ」
そう言って近くにあった椅子を持ってきて、腰をかけるクレイグ。突然の来訪に何を話していいのか分からないセシルは、とりあえずクレイグをまじまじと見つめる。すると、先刻フランと対決していた時に使っていた銃が目に入る。
「……なんだよ」
「その銃、本物?」
セシルの視線が、自分へと向いていた事に気づくクレイグ。もっとも、視線の先はクレイグではなく、クレイグが身に着けているガンベルトの装飾銃だったが。
クレイグはガンベルトから装飾銃を取り出し、セシルに見せてみる。
「本物だよ。さっき白兎から助けてやった時に弾、撃ってただろ? オレの愛用している銃で『ジョット』って言う」
クレイグはそう言うと、ジョットをガンベルトに仕舞った。
——僕より少し歳が上くらいなだけなのに、銃なんて使っているのか……。凄いなあ。
セシルはさっきまで孤独感に包まれていたのも忘れ、すっかりクレイグの話に夢中になっている。
セシルの目か輝いているのを見て、クレイグはふっと優しく微笑んだ。
「……笑ってるな」
「え……?」
「そういう顔もできるんだな、お前」
——あれ、この人……。
あまり笑顔を見せず大人びた感じのクレイグに対して、クールな印象が根強いていたセシルだが、初めて優しい笑みを見せたクレイグに何か違う印象が芽生えてきた。
セシルはハッとする。今度はクレイグがセシルをじいっと見つめている。
「えっと、何ですか……?」
「お前、何歳?」
何を聞かれるかと思ったら、年齢というごく普通な事を聞かれ、逆にセシルは途惑った。
「14歳、です……」
「へえ、見た目の割には意外とそれなりに年いってるんだな。俺16歳。酒も飲んでるし、煙草吸ってるけどな」
——え? これで16歳……?
またクレイグをまじまじと見つめる。顔は多少幼い感じがしなくもないが、言動がどこか大人っぽいクレイグは16歳には見えない。おまけに煙草に酒も飲んでるというのも16歳には思えない。いや、16歳では駄目だろう。
——ちょっと待って? 16歳って言った?
一つ疑問に思ったセシルは、思い切って尋ねて見る事にした。
「クレイグさん……16歳で国の治安維持機関に?」
「さん付けはやめろ、気持ち悪いから。まあ色々と理由があってな、此処に入る為に銃の使い方を覚えたわけ」
ジョットを空中て回転させ、落ちてくる銃を片手で受け止めるクレイグ。
——本当に、僕より2歳しか歳が変わらないなんて思えないな。
銃をガンベルトに仕舞うクレイグを見ながら、そう思った。
——クレイグが一緒なら、やれるかもしれない。
「クレイグ——」
「なんだ」
セシルは決意した目で、衝撃的な発言をした。
「僕、トランプに入りたい」
「——は?」