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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: +.*Wing of the Dark moon*.+ ( No.4 )
- 日時: 2009/11/16 19:19
- 名前: b'`*)ノ桜姫⌒゜* ◆hjAE94JkIU (ID: kYMQpD9Q)
- 参照: http://www.doumori.com/bbs_talk/show.php?kiji_id=332573
1話 暗い森
「夜は暗い森へ行ってはいけないよ」
そんな噂を聞いたのは、何時のことだろう。
昔々、顔も思い出せない誰かが言っていた気がする。
でも、今の私の頭にはそんなこと、欠片も思い浮かばなかった。
ただ、一つのことが脳裏をよぎっていた。
「ねぇー……珠亜ー……夕飯はコンビニ弁当かなんかで適当に食っといて」
暗い静かな部屋に母親の声が木霊する。
私の親は私のことなどひとつもかまおうとはしない。
俗にいう、育児放棄ってやつか。
でも、もうそれは何年も前からことだったから私はもう慣れた。
フラフラと立ち上がると玄関のドアを開け、夜の闇の中へと飛び出した。
暗い闇の中で私はポツリと呟いた。
「砺音の家にでも行くか……」
砺音とは私の親友の名前だ。
小さいころから一緒の、何でも話し合える親友。
しかし、この闇の中、砺音の家まではかなりの距離がある。
「仕方ない……近道使うか」
そう言って私が向かったのは怖いうわさの絶えない暗い森。
自殺や誘拐事件もよくあるらしく、昼間でも誰も近付かない。
けど、これが砺音の家への一番の近道なのだ。
怖いけど、行くしかない……か。
私は暗い森の中へと踏み込んでいった。
「うわっ……暗っ……」
足元もよく見えず、一寸先は闇。
私は手探りで森の中を進んでいく。
と、その時。
「……唄?」
暗闇の中で不意に唄が聞こえた。
『闇の旋律空を切り、月光照らされ道を示す
緋色に染められて妖しい道化
蝶になりして円舞を踊り』
唄がいきなり途切れた。
その時だった。
ただただ闇だった暗い森に、赤い……光がさした。
真っ赤な真っ赤な月光が……。
世界が歪んだ気がした。
それと同時に私の意識は闇へと吸い込まれていった。
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