ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: †*。______Bloody rose ( No.16 )
日時: 2009/11/21 15:18
名前: 架凛 ◆eLv4l0AA9E (ID: 81HzK4GC)

 *Ⅲ+ 異例

 シャン———シャン———

 一人の老女が神社の境内で鈴を振り、舞う。

 その姿は気のせいか、暗闇の中でぼんやりと光っているかのようだった。

 そのそばには男が一人、座っていた。


 「ばばさま、どうですか」

 「…………」


 老女は瞳を閉じ、眉間にしわを寄せる。

 そして、ぱっと目を見開くと言った。


 「きた!」


 男は真剣な顔になり、老女の言葉に耳をかたむけた。
 老女は静かにその口から言葉を発する。


 「異例じゃ……。選ばれし者が……」
 
 「どうしたのですか?」


 老女は再び瞳を閉ざし、言った。


 「選ばれし者が……三人」

 「…………なんですと!?」


 男は驚愕を顔に現した。

 いつもなら、選ばれる者はたったの一人。

 なのに、何故三人も……。


 「選らばれし者……。一人目は、【星幻雫(ホシ カンナ)】
  村の端の小さな小屋に住んでいる、13才の少女じゃ。」

 「星、幻雫」


 男はゆっくりと繰り返した。

 老女はうなずき、二人目の名を口にする。


 「二人目は、【飛翔透真(ヒショウ トウマ)】13才。
 あの宿屋の子だ。」

 「透真なら存じております」


 男は眉をひそめていった。

 なぜなら森へ行くことは、村の者にとって死を意味するものなのだから。
 

 「三人目は、【春乃藍(ハルノ ラン)】12歳才の少女。
  そなたの娘じゃ。流よ」
 
 「藍が……!?」


 男は大声をあげて立ち上がりかけ、やめた。

 老女も悲しそうな顔をしていたからだ。


 「わかりました。ばば様、村のもの達に伝えに行きます」

 「ああ。私は疲れた。しばし休むとしよう」


 老女はそう言うと部屋の奥へと姿を消した。

 男は静かにたちあがると、神社から去っていった。

 明日は満月、一年に一度の十五夜の日。

 男は黄色く輝く月を見上げて、何か考えこむと、

 前を見据え、再び足を進めた。