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Re: Start Code -始まりの暗号- ( No.13 )
日時: 2009/12/08 22:26
名前: 威世-Ise- (ID: RwzJGXJK)

Code3 狂い人の死の宴

口元の血を拭き取り、屡祈はブレスに右手で触れた。
触れられたブレスは徐々に蒼い光を灯し始める。
「夜櫃、周りに出てきた奴らの相手お願いしていい?」
その言葉に周りを見渡すといつの間にかグランドフィルと同じ姿をした化け物達が夜櫃と屡祈を囲むように集まっていた。
「分かった。お前はグランドフィルに集中してろ」
そう言って腰元から銃を取り出し弾を詰めた。

屡祈の合図で夜櫃は発砲を始め、ぞくぞくと集まる化け物達を倒していく。
「っ……。キリがねぇな」
荒れる呼吸を整えつつ周りに目を向ける。
広間の中心では屡祈とグランドフィルの激しい戦闘が目に入る。
お互いにあまり良い状況とは言えない。
「どんどん出て来やがって……。邪魔くせぇんだよ!!」
だんだん命中力の下がる自分の腕に夜櫃は焦りを感じ始める。
そのせいで余計な力が入り、命中率は下がるばかりだった。
「夜櫃!! 後ろっ!!」
屡祈の声に夜櫃は後ろを振り向く。
「マジかよ……」
彼の後ろには今にも襲い掛かろうとする化け物の姿があった。
集中力の低下が招いた結果だった。
前方にばかり気を取られ、背後の敵の気配に気づくことが出来なかった。
少しでも攻撃を防ごうと後ろに飛び移り、身を守る体勢に入る。
(来る!!)
そう目を瞑った時だった。

「大丈夫か? 少年」

なかなか来ない痛みを不審に思い、硬く瞑った目を開ける。
自分の目の前にはオレンジ色の明るい髪をした青年が立っていた。
青年の手には屡祈と同じブレスがつけられている。
そして何よりも驚いたのは目の前に広がる光景の異様さだった。
「ホント何者なんだよ……」
目の前の青年は片手で化け物の攻撃を抑えていた。
怪力……の一言では済まされないだろう。
「早く立ちな。敵はまだまだいるからね」
そう言われ、夜櫃は素早く立ち上がり青年の隣に立った。
「お前も特殊部隊の奴?」
「ん? あー俺? そうだよ」
そう言って化け物の腕を掴み投げ飛ばした。
夜櫃から見れば異常にもほどがある光景だった。
自分があれほど苦戦していた相手をほんの一瞬で投げ飛ばしてしまうなんて。
これほど自分の非力さを感じることはないだろう。
小さく舌打ちをし、夜櫃は銃を構え化け物達に鉛弾を撃ち込んでいく。
「やるねぇー。少年」
化け物達の勢いが青年の加勢によってだいぶ抑えられた頃だった。
屡祈達も決着が近いのだろう。
屡祈がグランドフィルを壁に打ちつけ、大きな物音が屋敷中に響いた。
「あっちもそろそろ決着みたいだね」
オレンジ髪の青年が笑顔で夜櫃へ言葉をかけた。
「そうみたいだな」
夜櫃は一言そう返し、砂埃の立ちこめる先を見つめた。