ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Start Code -始まりの暗号- ( No.17 )
- 日時: 2009/12/11 21:49
- 名前: 威世-Ise- (ID: eXx5XrYY)
Code4 宴は終わる、狂い人の叫びと共に
だんだんと砂埃が晴れていく目の前を夜櫃と青年は静かに見つめる。
「決着、だな」
青年の声が室内に良く響いた。
目の前にはぐったりと倒れこむグランドフィルと左手のブレスにそっと触れる屡祈の姿があった。
触れられたブレスは何もなかったように姿を消した。
「ごくろうさん。屡祈」
青年は額の汗を拭う屡祈の肩に手を乗せ、そう言った。
「ん? あれ!? 鶯叉兄さん、なんでいんの」
オレンジ髪の青年は鶯叉(オウサ)という名前のようだ。
「あんた、鶯叉っつーのか。さっきはありがとう」
夜櫃は名前を再度確認し、頭を軽く下げた。
「いやいや。にしても珍しいなー。今時こんな素直な子は滅多にいねぇぞ?」
鶯叉は夜櫃の頭をぐりぐりと撫で回した。
夜櫃は嫌そうに彼の手をどかそうとしていた。
「……で、仲良く楽しんでいるところ悪いんだけど、夜櫃、俺について来てくれる?」
そう笑顔で問う彼の顔を見た夜櫃の瞳には警戒の色が見え隠れしていた。
「……理由はなんだよ」
さっきとはまったく違う重苦しい空気が三人を包む。
「んー……理由かー。簡単に言えば普通警察が君らを追ってるから、かな?」
その言葉を聞いた夜櫃は血相を変えて屡祈の襟元に掴みかかった。
「お前!! もしかしてアイツらを警察に渡したのか!?」
そう必死の表情で問い詰める夜櫃に屡祈を真面目な表情で答える。
「ごめんね、夜櫃。それが俺の仕事で、君らの所にいた目的だからさ」
夜櫃は舌打ちをし、屡祈から手を離す。
鶯叉はその様子を静かに見守っていた。
「てことで、ついて来てくれるかな? 夜櫃」
「別について行ってもいいけど、その前に今まであったことの説明、全部しろよ」
そう低い声音で屡祈を睨みながら言う夜櫃の瞳に彼を信頼していた時の暖かみは全くなかった。
「あー、そっか。約束したもんね、話すって。んー……いいよ。話してあげる」
その後屡祈はさっきの化け物のこと、自分達のことを話した。
「つまり、お前ら特殊警察はあの化けモン……狂人を撲滅させるために活動していると? そしてお前らのその力は自分の中のコードを具現化させたものってことか」
夜櫃はまだ納得していないような表情でそう淡々と呟いた。
「そう。物分り早い子は好きだよ」
屡祈はいつもと変わらない明るい笑顔で言う。
「てことで、これでついて来てくれるよね……。っていない!?」
さっきまで目の前で話しを聞いていた夜櫃の姿は既になくなっていた。
混乱する屡祈を見て鶯叉は大きく嘆息した。
「あ……。九十九さんに連絡すれば!!」
混乱し終えたのか屡祈が希望に満ち溢れた声でそう叫んだ。
*
その頃、夜櫃といえばグランドフィルの屋敷から既にもう五キロ程離れた路地裏にいた。
「危ねぇ……捕まるところだったわ。にしても屡祈の奴……裏切りやがって」
そうぶつくさ呟きながら機嫌悪そうに歩いていた。
路地を抜ける曲がり角で何か大きなモノにぶつかり、夜櫃は後ろに尻餅をついた。
「っ……。なんだぁ!?」
激突した額に触れながら、夜櫃は顔を上げた。
目の前には身長180はあるだろう、長身の若めの男が立っていた。
「おや? 悪かったね。立てるか?」
男は黒のスーツを綺麗に着こなしていた。
大人の魅力というのだろうか……屡祈や鶯叉とは全く違う雰囲気を醸し出していた。
「ああ。俺も前見てなかった。悪い」
そう言って立ち上がった。
立ち上がっても分かる男の背の大きさ。
背の小さい夜櫃は男を見上げて問いかけた。
「……どうやったらそんなに身長伸びんだよ」