ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 真実ノ詩〜死神ハ夜闇ニ笑ウ〜 ( No.12 )
日時: 2009/12/08 21:54
名前: 幸隆 (ID: yZjDspcK)

3、「依頼」



「依頼人の林孝夫です、・・・兄上はおられますか?」

「あ、いえ。でもすぐ帰ってくるはずなので、どうぞ入ってください・・・」

男は丁寧に靴を揃える

「失礼します」



孝夫は明日葉の横について歩き出す

明日葉はこっそりと男を眺める

兄のメモによるとこの男は兄の旧友らしい

しかしやはり、この男からは何か危険なものを感じる

一体、この男は何を企んでいるのだろう?




明日葉はとりあえず林をリビングに通しソファに座らせた

「お茶でもどうぞ」

「ああ、ありがとうございます」

男はにっこりと微笑む

明日葉は男からさっきまでの危険な感じが消えているのに気がついた

さっきまでの嫌な感じはなんだったのだろう

あれは、気のせいだったのだろうか





しばらく林と話していると後ろから声が聞こえた

「おお、早かったな。孝夫」

それは明日葉の兄、聖也の声だった

「あ、兄さん」

「聖也!」

孝夫は嬉しそうに聖矢に話しかける

「久しぶりだな・・・もう10年か、早いものだな」

明日葉は兄に尋ねる

「二人は一体どういう関係なの?」

「小学校のときの同級生だ」

「いやぁ・・・あん時は一緒によく悪戯ばっかしてたっけなぁ・・・」

孝夫は懐かしそうに言う



どうやら、二人の話によると二人は幼稚園から小学校を卒業するまでずっと一緒だったのだ

明日葉と聖矢は5つ年が離れているせいかまったく接点は無かった

しかし小学校の卒業と同時期に林家の実家に住んでいる孝夫の祖父が倒れたため実家のある村に引っ越すことになったという

実家には祖父と祖母の二人しか居らず、しかもその村は人里離れたところにあるために老人ホームなどもないため介護の手が必要だったらしい

しかし気になることがある

孝夫に初めて会ったときに感じた深い心の闇のようなものだ

兄の同級生、という事だそうだがやはり何か変だ

一体、この人は何者なのだろうか・・・



そのとき唐突に孝夫が話し始める

「ところで、俺が引っ越した後にお袋さん亡くなったんだって?大変だったろ」

「・・・まあな」

一瞬気まずい沈黙が流れる

「あ・・・いや・・・すまない、嫌なことを思い出させたな・・」

「いや・・いいんだ、それより依頼とやらを聞かせてもらえないか?」

「ああ、そうだな。

今回調べてもらいたいのは俺の実家がある鹿羽村で起こっている連続殺人事件だ」

「連続殺人?」

「ああ、人によって殺され方は微妙に違うんだが基本的には針で心臓を一突きってのが手口だ。

こんな事がもう5年も続いている」

明日葉は悪寒を覚える

なんと酷いことをするのだろうか



「俺の親父もそいつにやられたんだ・・・・くそっ・・!!」

孝夫は口調を突然荒げる

「そうか・・・」

そうだったのか

あの時の危険な感じは犯人に対する異常なまでの恨みだったのだろうか

「だが、警察に通報しようと何度も提案してるんだが、誰も聞き入れてくれないんだよ」

「え?・・・どうして」

普通、そんな事が起これば誰でも警察を呼ぶはずだ

なのにどうして?

「死神だよ・・・」

「死神?」

孝夫は村に伝わる昔話を語り始めた