ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 真実ノ詩〜死神ハ夜闇ニ笑ウ〜 ( No.13 )
- 日時: 2009/12/08 22:15
- 名前: 幸隆 (ID: yZjDspcK)
4、「滅びの村の伝説」
2の続きです
「俺達の住んでいる鹿羽村には死神にまつわる伝説が残っているんだ」
「でもそれが事件とどんな関わりがあるんだよ」
聖也が尋ねると孝夫はふぅ、と一息ついて話し始める
「それは今から何百年も前の話だ・・・」
今から数百年前
鹿羽村には人間と死神が共に暮らしていた
死神とは言われているように確かに見た目は骸骨そのものだったが村ではその温和な性格と強大な力から守り神同然の存在だった
人間達は死神を恐れることもなく当たり前のように一緒に暮らしていた
ある日、遠くの村から何人かの旅人達がやってきた
彼らは住む場所を追われてこの村にやってきたのだという
死神は共に暮らすことを彼らに勧めた
彼らは快くその提案を受け入れ、共に暮らすこととなった
しばらく経ったある日、死神が村のはずれを歩いていると森のほうから怒鳴り声が聞こえてきた
何かと思って見に行ってみると、旅人達が村人の一人を取り囲んで声を荒げていた
「や・・・・やめてください!!」
「黙れ!!あんな忌々しい悪魔となんか仲良く暮らせるか!!」
「・・・!?」
死神は驚いた
いまいましい・・・・あくま?
「とっとと何処かに追い出せ!!でないと・・・お前ら諸共この村をぶっ壊してやる!!」
おいだす・・・・?わたしを・・・・?
「そんなことは出来ません!!・・・彼は村の守り神なんです!!・・・ぐっ!!」
旅人の一人が村人の腹に蹴りを入れる
そして村人を見下したように笑い嘲った様に言う
「はははははは!!・・・・笑わせんな!!あの疫病神の何処が守り神なんだよ!!」
・・・・やく・・・びょうがみ?
・・・・わたしが?
一体私が何をしたというんだ?言いがかりだ・・・
「やめなさい」
たまらず死神は間に割って入る
「ちょうどいいところに来たな。疫病神」
「私が何をしたというんです」
馬鹿にしたように一人が答える
「ああ?お前がここにいる事がいけないんだ!!」
「それは・・・どういう・・・」
「お前がここに居ればここにいる全員が不幸になるんだ!!だからお前はここから出て行くべきなんだよ」
村人はそれに反論しようとする
「そんなことは・・・ぐは!!」
旅人はさらに蹴りを入れる
「彼らに手を出さないでください」
「はぁ?じゃあさっさとここから出てけ!!」
冷静に、淡々と死神はいう
「わかりました」
「ほう、わかってくれたか」
「その代わり彼らには絶対に手を出さないと約束しなさい」
「ああ、わかったよ」
死神は背を向け村の外へ歩き出す
焦って村人は死神を引き止める
「・・・死神様!!」
「いいのです・・・これでいいのです」
「・・・・死神様」
「幸せに・・・・暮らしなさい・・・」
こうして死神は村から去った
が、悲劇は終わっていなかった
死神は村のことがどうしても気になってこっそりと戻ってきた時のことだった
村のほうから火が上がっている
嫌な予感がする
村に走っていってみるとそこでは何人もの村人が切り殺され、辺りには血が飛び散っていた
民家は燃やされ、村はほとんど壊滅していた
「はははははははははははははははは!!」
旅人達が勝ち誇ったように笑っている
あいつらか・・・・
あいつらが・・・こんなことを・・・・
「いやー、あんとき死神を追っ払っといて正解でしたね!!」
「ああ、あんなんが居たんじゃ村を乗っ取るなんておっかなくて出来ねえからなあ!!」
死神に憎しみの炎が宿った
憎しみ・・・・憎悪・・・・もう彼を止められるものは何もなかった
「おい」
「あん?だれ・・・・うわああああああああ!!」
「な・・・なんでお前がここに・・・・!?」
「約束・・・・守らなかったな」
死神が冷たく言い放つ
「いや・・・・すまなかった!!許してくれ!!」
「お前達は約束を守らなかった。私の愛した故郷をも奪った。許すわけにはいかない」
「うわあああああ!!」
旅人達はたまらず逃げ出す
「お前達は私の心を深く傷つけた。私の胸は深く傷付けたれた。お前達もこの痛み・・・・味わうがいい」
「助けてくれえええええええ!!」
最後に今まで以上に冷たく死神は言い放つ
「死をもって償え」
「うわああああああああああああああ!!」
村中に旅人達の断末魔が響き渡った
彼らの胸には心臓に達するほどの深い刺し傷が残っていたという
その後死神は我を忘れ、逃げ伸びた旅人達を何処までも追いかけ一人残らず殺そうとした
しかし逃げ延び生き残った村人達に説得され、怒りを沈め封印された
そして村の祠に今も祀られているという
「つまり殺され方が余りにも伝説に似ているから死神の祟りだと思っているわけだ」
聖也が聞くと孝夫は困ったように答える
「ああ。何か余計なことをしたら・・・今度は自分の番だ・・・・と思っているらしい」
「なるほどね・・・」
聖也は腕組みをして考え込む
「だから、頼む!!この事件の犯人を見つけ出してこの惨劇を止めてくれ!!」
「わかった・・・じゃあ明日、村に行くことにしよう」
「ありがとう・・・聖也。じゃあ帰るよ」
「ああ。またな」
「明日葉君も・・・・またな。」
「あ、はい」
孝夫は会釈をし、部屋を出て行った。
明日葉が聖也を見るとまだ腕組みをして考え込んでいる
「どうしたの?」
すると聖也は予想外の台詞を口にした
「・・・・あいつ、孝夫じゃないな・・・」