ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 真実ノ詩〜死神ハ夜闇ニ笑ウ〜 ( No.14 )
- 日時: 2009/12/08 22:54
- 名前: 幸隆 (ID: yZjDspcK)
5、「黒い森」
辺りは木々が生い茂っている
葉が空を覆い尽くし、この森の山道には殆ど光が届かない
ざわざわと葉が揺れて音を立てているのがとても不気味に感じられる
鳥のさえずりさえもが明日葉の心を不安な気持ちにさせる
聖也は暗い森の中で車を走らせていた
明日葉は不安になって聖也に声をかける
「兄さん・・・ほんとにこの道で合ってるの?」
「ああ間違いない」
明日葉は自信たっぷりの聖也の言葉に少しの安堵を覚える
「・・・・たぶんな」
「そうだよね、さすがにこんな山奥だと何処にいるかも分かんない・・・って
・・・・はぁ!?」
どうやらもうしばらくこの森からは抜けられそうにない
明日葉の不安が倍に膨らんでいるにも関わらず聖也は相変わらず気ままに運転を続けている
「あのねぇ・・・」
「大丈夫だって。一本道なんだからさ」
「え?地味に分かれ道あった気がするけど?」
「・・・・・・
俺が大丈夫だっつったら大丈夫なんだよ!
黙って俺について来い!」
明日葉はやけに理不尽な言い訳をする聖也に、絶対黙ってついていきたくないなぁ、と思った
が、それを言うと車から下ろされそうだったので黙っていることにした
「ところであの手紙のことなんだけど・・・」
不安な気持ちを払いのけるように明日葉は会話を始める
「なんだ?」
「あれって差出人の住所とか書いてなかったの?」
「ああ、あったぞ?調べたら今から行く村の住所だったから恐らく村人の誰かが送ってきたんだろうが、番地が書いてなかったことを考えると、送り主が犯人の可能性も十分考えられるな」
「内容は?」
「ん?ああ
今自分の住んでいる村で祟りに見立てた奇妙な事件が立て続けに起こっている。
お前が探偵をしていると聞いたから頼みたい。
どうか助けてくれないか。力をかしてくれ。
また詳しくは後日直接会いに行ったと時にでも話す、だったかな」
「なんで手紙で詳細を話さなかったんだろう」
「さあな、直接話したほうが伝わりやすい、ということも考えられないこともないが・・・」
「あれ?」
「どうした?」
明日葉はあるものに気がつく
「祠だ・・・」
「死神を祀ってるってやつだろうな」
それは暗い森の奥のほうでひっそりとたたずんでいた
まるで誰も寄せ付けないようにそこに建てられたかのようだった
「ほら、村が見えてきたぞ」
聖也が言う
視界が段々明るくなりのんびりとした平和なかんじのする村が見えてきた
こんなところで本当にそんな惨劇が起きているのだろうか
だがその平和さは不気味なほどに静けさを携えていた
この静けさがまるで、嵐の静けさとでも言うように・・・