ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 真実ノ詩 ( No.5 )
- 日時: 2009/11/21 14:35
- 名前: 幸隆 (ID: nkm2s9o8)
第一章〜始マリノ夜〜
陽はすっかり沈んでしまった
辺りはすっかり闇に包まれている
ただ頼りなく今にも消えてしまいそうな街灯だけが
この暗い山道を照らしている
ついさっきまで白く冷たく闇夜を照らしていた月は
雲に隠れてしまったせいで
いつにも増して不気味な場所に思えてくる
「・・・すっかり遅くなっちまったな・・」
男は家路を急いでいた
いつも何となく通り過ぎていた道は
なぜか果てしなく無限に続いているように感じられる
何故かはわからないが
自分は永久にこの道を抜け出すことができないような
不安な感覚に襲われる
(・・・はやく帰らないと・・・)
そのとき突然、街灯がバチッと音を立てて消えてしまった
「・・・!」
不安な気持ちがじわじわとの胸の奥からこみ上げてくる
男はいっそう足を速める
やがて風が吹き始めた
それは生暖かく男を包み込んだ
道沿いの木々の葉が風に吹かれ
ざわざわと不気味な音を立てる
(・・・・気味が悪いな・・)
その時だった
ザッ・・・・ザッ・・・・
それは不気味な程に男の耳に響いた
男は足を止め後ろを振り返って見る
(・・・・なんだ?・・・)
しかし音はもう聞こえない
何だったのだろうか
足音のようにも聞こえた
誰かいるのだろうか
いや気のせいにちがいない
おそらくこの不安な気持ちが
そんなくだらない発想をさせているのだ
男は心にそう言い聞かせ再び走り出す
走らねば永久にここから抜け出せない
なんの根拠もないそんな不安を
どうしても拭い去ることができない
(なんだ・・・?この感じ・・・)
・・・ザッ・・・・・ザッ・・・・・
やはり気のせいではない
“何か”が自分の後をつけてきている
男はさらに足を速める
・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・
音の感覚が徐々に短くなっていく
男はたまらず駆け出す
「うわーーーーーーーー!!!」
・・ザッザッザッザッザッザッ・・
足音の主も合わせて走り出す
足音が段々と近づいてくる
「なんなんだよ!!」
男も負けじと全速力で走る
ザッザッザッザッザッザッ
もう足音はすぐ後ろまで来ている
ザッザッザッザッザッザッ
もう逃げられない
そんな気持ちが胸をよぎった
と、その瞬間足音がぱったりと止む
「・・・え?」
後ろを振り返っても何もいない
男は安堵した
全身の力が抜けた
「・・・ふぅ・・・」
男はゆっくりと山道を我が家に向かって歩き出した
ドンッ・・・
「っ痛!!・・・なんだ?」
男は何かにぶつかった
(こんなとこになんかあったか?)
雲が風に流され白く三日月が姿を現す
そして男がぶつかった何かが
白く不気味に姿を浮かび上がらせる
「・・・・ひ・・・・ひぃぃぃぃぃぃ!!」
男の背筋は凍りついた
全身を不気味になびく漆黒の衣でつつみ
不気味に笑みを浮かべるそれは
まさに“死神”そのものだった
チクン・・・・
胸に死神の手が置かれている
(・・・・え?・・・)
何が起きたのか全く分からなかった
死神が手を離すとそこからは真っ赤な血が溢れ出していた
男は力なくその場に倒れこみ
その後二度と息をすることはなかった
・・・・まず一人・・・処刑完了・・・・