ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 裏切り戦争 ( No.22 )
- 日時: 2009/11/22 23:24
- 名前: 若月星輝 (ID: U0hMzT3c)
優しい鳥が、山の薬草を届けてくれたおかげで、山の薬草をゲットした涼二達。さて、そのころ街の方では…?
———第二十二話『それぞれの冒険-街編』———
「あ〜っもう!!!此処何処〜!!!」
乃ノ寺は、少しイライラしながら言った。
「街の薬草って、何処にあるのか分からないんだよな…。」
坂野介は、左右前後をちらちら見ながら言った。
この3人が、今歩いているところは、辺り何もない草原。小さな街だ。
「此処はなにもなさそうに見えるけど…?」
乃ノ寺は腕を組んで2人に問いかけた。
「あぁ、確かに何もねぇ、ただの田舎だな。移動しようぜ。こんな小汚い、古臭い街に居たくねぇ。」
と曝露は少しきつい言い方をした。
この街は、ただ一つの一軒家があり、建物もとても古いようだ。近くには、小さな川と、沢山の野菜が植えてある畑があった。
「んじゃぁ、次行くところは、大きな建物がある、大都会ね♪早速、この近くの○○駅から…」
『た…助けておくれ〜!!!!!』
突然、川の方から声が聞こえたのだ。
「お年寄りの声…おばあさんの声!?」
3人は川に駆けつけると、おばあさんが川に流されていたのだ。
「あ!!!今助けます!!!」
坂野介と曝露は猛ダッシュで川に飛び込んだ。
すると、おばあさんの肩を持ち上げて、草原の方へ上がった。その様子を見て、乃ノ寺も、おばあさんの屁を引っ張ってあげた。
「大丈夫ですか!?おばあさん!!!」
3人はびしょびしょになりながら、言った。
おばあさんは、笑顔で、
「ありがとう。あなたたちの御蔭で助かりました。お礼をしたいので、どうぞ、私の家に来て下さいな。」
と言った。
遠慮なくあがらせてもらった。
家の中は、いろりなど、古いものばかりおいてあった。
「どぉぞ、お茶を飲んでってくださいね…」
おばあさんは、温かいお茶を出してくれた。
「ありがとうございまーす!では、いただきまーす!」
おばあちゃんのお茶は、最高に美味しかった。
「わぁ!このお茶、美味しいですね〜」
乃ノ寺は一口飲んで言うと、
「そうかい?ありがとう。このお茶はね、亡くなったおじいさんと一緒に、作っていたお茶なんだよ。」
おばあさんは、微笑みながら言った。
でもその微笑みは、とても悲しい顔にも見えた。
それを聞いた、3人は黙り込んでしまった。
おばあさんはその様子を気にして、
「おじいさんはね、1年前に、病気で亡くなったのよ…。ガンの病気でね…。」
「え…ガン!?」
思わず坂野介は口に出していってしまった。
「そう、ガンよ。病気の事、分かっていたはずなのに、お茶作りなんてするから…。毎日毎日、楽しそうにやっていたわね…。」
おばあさんは、目に涙を浮かべながら言った。
「…それほど…お茶が大好きだったんですね。お爺さん…。」
乃ノ寺は小さな声で言った。
「亡くなった日も、お茶つみをしてたのよ。最中にいきなり倒れて…病院に運ばれたけど、もう、目を…覚まさなかったのだよ…。」
おばあさんは、涙をこぼしながら語ってくれた。
声も、とても震えていた。
「…。」
3人は何も言えず、ただ下を見て涙をこぼしていた。
「…話を聞いてくれて、ありがとうございますね。お礼に、このお茶の葉、持って行ってください。これは、此処の街にしか育たない、珍しい葉なんです。」
おばあさんの言った言葉に、曝露は反応した。
「…街の薬草!?」
曝露は咄嗟に言った。
「街の薬草の事…分かるのかい?そう、これは、街の薬草。私とおじいさんで作ったお茶だからね、絶対に役に立つだろう。」
おばあさんはそう言い、瓶に入れたお茶っ葉を、曝露に渡した。
「あ…ありがとうございます!!!」
3人はとても嬉しそうに言った。
そして、おばあさんに手を振りながら、待ち合わせ場所の船の方へと帰って行った。
その様子を見ておばあさんは、
「とても明るくて、優しい子達じゃったのぉ〜…おじいさん…。」
おじいさんの写真を抱えながら静かに目を閉じた。
そしておばあさんは、おじいさんの世界へと旅立ったのだ。
実はおばあさんも、おじいさんと同じ、ガンの病気にかかっていたのだ。
しかし、病気の事は分かっていても、病院に行きたくなかったのだ。
おじいさんが大事に育てたお茶を、無駄にしたくない、おじいさんの分まで、お茶を育てるという、気持ちがあったからだ。
もしも、このおばあさんが、病院で入院してたら、今頃おばあさんの命はあったはず。その代わり、お茶は腐れて無くなっていただろう。
おばあさんが、命をおとすほど頑張って育てたお茶だ。おばあさんに感謝しないとね。
おばあさんが倒れて、おじいさんの世界へと旅立った事は、まだ誰も知らない。もちろん、あの3人も。
街の薬草とは、おじいさんとおばあさんが、命がけで作ってくれた、お茶の事だったのだ。
————————第二十二話終わり————————