ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 青空兎【ソラウサギ】 ( No.12 )
- 日時: 2010/03/28 20:39
- 名前: 狂乱 (ID: M2SneLVI)
【2】
学校の校門をくぐると、そこは去年とはガラリと変わった風景があった。
中学校として使っていた旧校舎はなくなり、高校であった新校舎共々新しくなっていた。
体育館と温室は見た目変わっていない。きっと中はピカピカになっているに違いない。
唯一変わっていないのはシンボルである鈴鳴りの塔で、何もなかったようにただ青い空へと高くそびえ立っていた。
昇降口にはクラス発表の張り紙があった。
私は3−A。生徒が“減った”のか去年「D」まであったクラスは「C」まで減っていた。友達の小淵晟くんとカリンちゃんと一緒だ。
やったー。私は思わず頬がゆるんでしまった。
だがなんだか違和感のあるこの張り紙。よく見ると中学1年生のクラスについて何も書かれていなかった。
春休み中だれも鐘を鳴らさなかったのかもしれない。
だがそんなことあるのだろうか?だいたいそういう時はロードが入学させているはずだ。
私立だが生活も保障されお金もかからないので入学希望者はおおいはず。
少々謎が残るなか。見たい人が多いので私はそこをどけ、教室へと向かった。
カリンちゃんは教室にいなかった。まだあのとき寝ていたのかもしれない。寝坊するときもあるのだろう。
代わりといってはなんだが、小淵くんが窓際の席で本を読んでいた。彼にしては珍しい…というか初めて見る光景だった。—ちなみに私の席は廊下側の端、1番前。“あまぶき”なのだから当たり前だ。
私は早速小淵くんの肩をそっとたたき、明るくはなしかけた。
「おはよう!久しぶりだね小淵くん」
「……あの…スンマセン。だれですか?」小淵くんからは疑問文がかえってきた。私は驚いたのと同時にジョークなんだと思った。
「なにいってるの?小淵くん。私のこと忘れちゃうなんてひどーい」
「あの…ホントだれっすか?」なんだかイライラしている。本当に忘れているようだ。
「…小淵晟くんだよね?ほら加藤だよ。もう天吹だけど…」私は催促した。小淵くんは顔をしかめる。
「悪いけど加藤さんも天吹さんもしりませんよ。スンマセン。ちょっと用事あんで。」そういうと小淵くんは本をしまって教室からでていった。
朝の学活が始まった。カリンちゃんの席は空っぽ。小淵くんは私を忘れている。
まるで違う世界にきているようだった。あんなに仲がよかったのになんだか裏切られた気分だった。
窓から見える青い空だけが静かに、変わらない世界を証明していた。