ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 青空兎【ソラウサギ】 ( No.53 )
日時: 2010/04/01 13:08
名前: 狂乱 (ID: M2SneLVI)

【14】
「キュー?キュー!!」

リンクスは温室をうれしそうに駆け回る。

「あはは。おい!待てリンクス!!」

小淵くんが笑いながら追いかける。

昔私達は楓さんが住んでいる喫茶店で放課後を過ごしていた。

今はもうあそこに行けないから、麻ノ葉さんの砦であった温室で過ごすしかない。

「なんでリンクスは姿が見えないのかな?」

私は宿題の手をとめカリンちゃんに聞く。

「×××は質問好きだな…。私だってわからないことはあるんだぞ?」

カリンちゃんに返されて、私はしょんぼりした。

やっぱりいらないのかな?じゃまなのかな?

「おい。そうしょげるな。お前はどう思う?」

カリンちゃんが笑って私にデコピンする

「……多分。心だけこっちにあるんだと思う。」

「私もそう思う。つまりリンクスはもう死んでいるが、リンクスには自覚がないから心だけ生きている。」

「つまり、幽霊ってことッスね?」

透明リンクスを抱きながら小淵くんは口を挟む。

「まっ、そういうことだ。」

カリンちゃんは手をあわせてそういった。納得。

「さて。リンクスは見つけた。×××。つぎは?」

「えっ?次?んん…わかんない…」

もちろん分からない。キミは捜してとしか書いてない…。

小淵くんがため息をつく。

「はぁー。天吹さん。まったく役にたたないッスね。言い出しっぺは自分なのにわかんないばっかりじゃないッスか…。」

“役立たず”心に冷たく響く

「おい。晟。取り消せ。×××も精一杯やってるんだ」

“精一杯やってなんにもできないの?”カリンちゃんが言った言葉が心で変換される…。

“役立たず” “役立たず” “役立たず” “役立たず” “役立たず” “役立たず” “役立たず” “役立たず”

冷たい声がそう言い放つ…。

「おい。×××。大丈夫か?」カリンちゃんが心配する。

いつの間にか私の周りはぐちゃぐちゃになっていた。

宿題のプリントはちぎれ。カリンちゃんにもひっかき傷がついている。私の腕にはカッターが握られていた。

「落ち着くッス……危ないッス…保健室に…」

“どっかいけ。役立たず。お前なんかいたら迷惑だ”

小淵くんが言った言葉が心で変換される…。

ここにいたくない…。 私は温室を飛び出した。

後ろからカリンちゃんの声がする…小淵くんの声がする…リンクスが鳴く…。