ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 青空兎【ソラウサギ】 ( No.70 )
- 日時: 2010/04/02 15:01
- 名前: 狂乱 (ID: M2SneLVI)
【17】
喫茶店にはすぐついた。ドアも開いてるようだ。
この前のことは許してもらおう。楓さんだって自分の弟に会いたいはず!
私はそう思いながら思いっきりドアを開けた。
『カラン カラン』
チャイムが響く。
少しすると楓さんが2階から降りてきた。
私が来たことに驚いているようだ。
「なんで…もう来ないと思ってたのに…」
「この前はすいませんでした!説明はあとです!はやく来てください!!キミに…弟さんに会いに行きましょう!!」
楓さんはもっと驚く顔をしたあと、うつむく。
「きっと弟くんは会いたくないでしょう?あんなこと言っちゃって…私のせいで死んでしまったのだし」
「そんなことない!キミはあなたのために鐘を鳴らし、あなたのために死んだんです…。きっと元気に過ごしてるあなたに会いたいはずです…。」
私は一生懸命真剣にキミの代わりに思いを伝える
「………」
楓さんは黙っている。
きっと楓さんはつらいと思う。私がどんなに言ってもそれは私の言葉だから…。第三者の言葉だから。
「楓さんの気持ちもキミの気持ちも私にはわかりません。変なこといってすいませんでした。ただ、キミともう一度会うことが苦にならないのであれば私と一緒に来てください。」
楓さんが、息をのむ。
楓さんがキミとの関係を忘れてしまいと思うならいかないほうがいい。
自分を傷つけてしまうから
私は楓さんを見つめる。
気持ちもわからないのに、キミが待ってるからなんて、言えない。
だからこそ楓さんを見つめ続けた。
「……行きます。連れて行ってください」
小さなかすれた声で、手を伸ばしながら確かにそういった。
張りつめた空気がゆるみ、泣きたくなった。
進むか、止まるか、決めるのは楓さん。
本当は私は一緒に行ってほしかった。でも気持ちが分からないからこそ言えなかった。
そんなこと無理にいえば、楓さんはもっと傷ついてしまうと思ったから。
でも、それでも—
私は差し出している手を握った。
「ありがとうございます。楓さん。一緒に行きましょう」
私は顔中で明るく笑った。
重なる手と手がじんわりと熱くなる。
私をじっと見つめ、楓さんも、ぎこちないけど微笑んだ。
「……はい」