ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 青空兎【ソラウサギ】 ( No.74 )
日時: 2010/04/05 16:21
名前: 狂乱 (ID: M2SneLVI)

【19】
真っ暗闇の中どんどん下へと落ちていく…。

はっきり言えば怖かった。

ずっと落ちるだけだと思っていた。

そういえばある文学作品の主人公も兎を追いかけて落ちていく。

あの主人公もこんな思いだったのだろうか?

そう思っていたら、いきなりなだらかになって来た…


“ドスン”

尻を強くうった。 痛かったぁ…。

「お久しぶりです〜。×××先輩!」
「琉姫。だめ…。やっぱりクッションか何か敷いたほうが…。」

まるっきり同じ顔をした2人が立っている。

元気なほうが、自称“身がわり羊”の弥名梨琉姫。

三点リーダーが多いほうが、自称“居眠り羊”の弥名梨呂季。

2重人格の姉妹だ。どうやらここでは1人1つ身体があるようだ。

「るきちゃん!ろきちゃん!ここは…?」
「私の“才能”で作り出したあの世とこの世の境目にある温室。」
「るーも手伝ったんですよ?もう、姉さん。自分だけの手柄にしないでください!!」

ここでも2人の仲の良さはかわってないようだ…。

“ドスン”

「痛っ〜。」

カリンちゃんが落ちてきた。

「琉姫。早くクッションを持ってこよう…。」
「はい!姉さん!」

2人は奥へと走っていった。すれ違いに麻ノ葉さんがやってくる

「麻ノ葉!!」

カリンちゃんが麻ノ葉さんに抱きつく。

「やぁ。カリン。おっと、君には“まだ”名前が届かないね。お疲れ様。よくやった。」

この人にほめられても全然うれしくない…。

「ひどいなぁ。そんなことないだろう?」

心を読むのもやめてほしい…。

「了解。君は早く奥にいったほうがいいんじゃないかな?楓さんだって“名前”を知ってるんだから。一番最初に呼ぶんじゃなかったの?」

「いいんです…。楓さんにお譲りします…。」

本当はいやだったけどこれで楓さんが喜ぶならいい。

もう彼女には傷ついてほしくない…過去を忘れて楽しく過ごしてほしい…。

「なんだか昔とかわんないな。カリンも君も。」
「それが一番だ。麻ノ葉。晟なんか記憶がなくなってしまってな。大変だぞ」
「あぁ!あとで治そう。大丈夫。ボクは“読者”記憶のことは任せてくれ。」

そういって2人も奥へ行く。

未来さん達はおそいな…。

私も一緒について行った。

そこは学校の温室の1周り大きいぐらいの広さだった。

真ん中にはテーブルがおいてあり、希八ちゃんと楓さんが話していた。

横に置いてあるソファの1つにはカリンちゃんと麻ノ葉さんが顔を赤くしながら話していた。

時折カリンちゃんがクッションで麻ノ葉さんを叩く

琉姫ちゃんと呂季ちゃんはクッションを運ぶのを忘れ、リンクスを追いかけている。

「“雫さん”!」

懐かしい声が私の名前を呼ぶ…

「キミ!」

そこにいたのは自称“勿忘草”のキミだった。

「どうやら成功したみたいだね。楓さんも連れてきてくれてありがとう。」
「ううん。キミのおかげ。ありがとう!キミ。」

本当の名前では呼べない。“あの冬”に一回呼んでいるけど…やっぱりキミはキミだから。

「あの、これキミの…」

私は“例のノート”を渡す

「ありがとう!雫さん!メッセージも伝わってよかったよ」

キミはやっぱり笑わない…。

私は笑った

「やっと来れたッス…。」
「あら。みなさんごきげんよう。」
『すいません。遅れました…。未来ちゃんが飛び降りるのを怖がって…。』

小淵くん、未来ちゃん、加南去ちゃんも到着し、全員揃った。