ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 青空兎【ソラウサギ】 ( No.75 )
日時: 2010/04/05 16:26
名前: 狂乱 (ID: M2SneLVI)

【19】

「重大な話があるんだがね…」

麻ノ葉さんが切り出す。

全員がそっちに注目した。

「ね?勿忘草くん?」

そっちかい!

全員がキミに注目し直す

「あぁ…。ええと…」
「はっきりするッス!なっくん!」
「ボクらは今“あの世”と“この世”の境目に弥名梨姉妹がつくった“温室”にいるんだけど…」
「このままじゃ“この世”には帰れない。」

麻ノ葉さんが良いとこをとる。

「………………!!」

一瞬沈黙したがすぐに理解する!

「てことは、私達は死んだってことか!?」
「冗談じゃないわ。お父様はお怒りになりますわよ?」
『大変なことになりましたね』
「弟くん!麻ノ葉くん!どうしたらいいの?」

私達はキミと麻ノ葉さんに助けを求める

「死んだわけじゃない。ただこのまま戻るとその兎のように身体がなくなってしまう」

麻ノ葉さんがカリンちゃんの質問に答える。

「身体と一緒に戻るためには自分の“才能”をなくすのが条件となる。」

キミが続ける。

「…………………。」

沈黙する

“才能”をなくすのはかなりつらいことだ。何度も利用し、便利に過ごしてきたのだから…。

「私は戻りますわ!お父様が待ってますもの!!」
『右に同じ』

未来ちゃんと加南去ちゃんが決断する

「んじゃ。あたしも!」

希八ちゃんが赤と黒の水玉模様のマグカップに入った紅茶を飲み干す。

「OK。じゃあリンクスについて行って、この世に帰ったらもう“才能”はないからね」

麻ノ葉さんが楽しそうにいう。この展開もきっと分かっていたのだろう。

「私も行くわ!」
「楓さん?いいの?」

キミが尋ねる

「いいの、あなたにも会えたし。もう逃げたくないから…。 」
「そう、ありがとう。“姉さん”」

楓さんはそういわれ、少し泣き眼になりながら未来ちゃん達について行く。

「まってください!希八さん!」

小淵くんが呼び止められ希八さんは振り向いた

「俺は…俺はどうしたらいいっすか?希八さんを手伝いたいのに“才能”はなくしたくない!」
「フン、勝手にしな。あたしはあんたの分まできめられないからね!」
   
すごくキッパリとした答えで小淵くんは言い返せなかった。

「麻ノ葉はいかないのか?」
「あぁ。僕は身体がなくてもいいからね。“この世”
とここを行き来できるなんて最高だろう?」
「そうか…。雫は?」

カリンちゃんが私に振ってくる。

「キ、キミは…どうするの?」
「ボクは自分の“才能”がなんなのかわからない。だから帰れないんだ」
「るきちゃんとろきちゃんは?」
「るーはここを維持するため、残るです!」
「…一回死んでるし…身体がなくても遊べるし…」

みんな自分らしい答えが返ってくる…。

「私は残る!だから晟も残れ」
「えっ!?」
「きっと希八も、麻ノ葉とかキミとか琉姫とか呂季とか残ってるヤツと話したくなるだろ?そのときに手伝えばいい。」
「そうッスね!!身体がなくても希八さんに会えるッス!!」

無視されると思うなぁ…。

どうやらここに残ってる人はみんな決まってるみたいだ。

「私も残る…」

みんなが私のほうを見る

「もう、離れたくないし」」

みんな笑ってくれる。

「決まり。リンクスもすぐ帰ってきてくれる。」
「そしたらさっそくパァーと騒ぐッス!」
「…琉姫。レモネードを運んでこよう…」
「了解しましたぁ!!」

みんな一気にテンションがあがる。





私は身体がなくて幽霊になってもみんなでいられるなら怖くなかった。

それは、ずっと変わらないままでいられるってことだから。





その時— 

私は今度こそ“変わらない日々”をおくれると思い嬉しかった。