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Re:  SIGN‐サ イ ン  ( No.2 )
日時: 2009/12/05 16:32
名前: 朝喜 ◆rgd0U75T1. (ID: cRxReSbI)

 一人称は「猫」である


 ——人間はウソを吐く。
 好きなのに嫌いと言ったり、自分の想いを真っ直ぐ伝えられなかったりする。
 それが、猫にはとてももどかしく思い、面倒だと感じた。
 まあ、別にどうでもいいけどね。
 だってさ、そういうのって何かめんどくさいじゃん?
 暇な人間は考えるって言うよ? 「人生ってなんだろう?」って。ちなみに女の子にモテなかったり、男運がなかったりすると「恋ってなんだろう?」って考えるらしいよ。
「……それはなにか? 男にモテない私への当て付けか? それとも——」
 言い終わる前に別の少年が言葉を紡ぐ。
「それともアレですかぁ? おれがゲームばっかやってる暇人とでも言いたいってかぁ?」
 ……違うよ暇人。
 猫はそう思った。

 ちなみに、猫に名前はない。猫だ。猫は猫でしかない。

 猫はそう思った。
 “思っただけでそう伝わった”。
「っつまり名前をつけろってか? 猫のぶんざいで偉そうに。私に土下座でもしたら付けてやらなくもないがな」
 猫は猫だ。正座が出来ようものならそれは猫じゃない猫かなんかだ。
「それもそ〜だぁ♪」
 ……何ニヤけてんだよ。
「別にぃ♪」
 ……あっそ。

 ——その後、猫の前にいる二人は考えました。
 猫の名前は何にしようかとか、この猫を誰が飼うかとか、今夜カレーなんだけど刺激的なカレーを作るにはどうしたらいいとか、そんないろんな事を。

 猫は思いました。
 猫は“ヒト”だから、猫は“ヒト”だから別にどうでもいい、そう思った。

 猫の姿で、猫缶をなめながら——
 ——猫はそう思った。

 ふと顔を上げると、そこには幼げな顔の少年と少女が二人——猫を抱き上げ笑っていましたとさ。

 ……人間ってわかんない。




                                   一人称は「猫」である    終