ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Fate of Chains-運命の鎖- ( No.1 )
- 日時: 2009/12/01 18:45
- 名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)
Episode00
Secret-始まりの時-
「……で、予知ではこうなったわけだ」
大きい屋敷の一室、三人の人間が何やら内密な話をしていた。一人は長い金髪にエメラルドのような瞳を持つ少女、一人は眼鏡に灰色の髪を束ねた長身の男。一人は銀髪に透き通った蒼い瞳を持つ少女。
銀髪の少女の言葉に、灰色の男が口を開いた。
「へえ、あの白兎(ホワイト・ラビット)自身が動くとはねえ……有難うレイシーちゃん」
「妾にちゃん付けをするなと何回も言っておろう。……まあ、この予知も当たっているか自身が無くてのう。妾の予知は、白兎に邪魔されているからな……」
銀髪の少女——レイシーは、「はあ」と溜め息をついてキコキコとロッキングチェアを揺する。
レイシーの言葉を聞いて、金髪の少女も口を開く。
「大丈夫だとは思いますがね。最近の白兎は、何やらこそこそと準備を始めているようですし……。まあ、あのゴキブリウサギさえ邪魔しなければ、副支部長の予知は絶対ですから」
灰色の髪の男も「うんうん」と同意するように頷く。
「そうそう、私の愛しのルチアちゃんの言う通り……ぐふぇっ!」
男の恥じらいのない言葉に、金髪の少女——ルチアがすかさず蹴りを撃ち込む。蹴りは脛にヒット。「弁慶の泣き所」など言われるところに蹴りを撃ち込まれれば、さすがに痛い。男はこれには慣れているらしく、苦笑しながら脛をさする。
そんな男を余所に、ルチアは話を続ける。
「万が一の事がありましても、私が行けば問題ありません。速攻で白兎を抹殺します」
「ルチアちゃん……殺すんじゃないんだからね? 僕たちは白兎を拘束するんだからね? そこ分かってる?」
「五月蝿い黙って下さいロリコン支部長」
男の突っ込みも軽く受け流し、しかも毒舌を吐き捨てるルチア。男はこれも慣れているらしく、苦笑で受け止める。というか苦笑というよりは、にやけているように見えるのだが。
——此処までいくとこいつもいよいよマゾだな……。
レイシーはふとそう思ったが、心の奥で留めておいた。
「さて、話を戻すとしよう。私達の目的は白兎を拘束し、此処に連れてくる事だ。で、それなんだけど……」
男はちらっとルチアを見る。ルチアも分かっていたようにこくりと頷く。
「んじゃ緊急命令って事で、ルチア=フェデリーチ。お望み通り白兎の拘束を頼むよ。ただし……」
男はくるりと反対方向のドアを見る。するとそこには、いつの間にか一人の少年が立っていたのだ。レイシーも驚いたように少年を見る。
ルチアは少年を見て顔を歪めた後「やっぱりか」とでも言うように溜め息をつく。
「監視係としてクレイグ。ルチアが白兎を殺さないように監視するのと、一緒に白兎の捕獲、頑張ってね」
「はいはい、メンドくせーけど……。支部長命令じゃ仕方ねえな」
クレイグと呼ばれた少年はひらひらと手を振る。そしてちらっとルチアを見た後「チッ」と舌打ちをした。ルチアも快く思っていないようで、クレイグを殺意のこもった眼で睨んでいる。どうやらお互い仲が悪いようだ。
こんな空気がいつまでも続いても仕方無いと思い、男がこの空気を終わらせるように口を開いた。
「じゃあ、いってらっしゃい」
ただ一言、そう言った。
男の言葉に二人は一礼した後、静かに部屋を出て行った。