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Re: >>>  ア   ク   セ   ス >>>> ( No.65 )
日時: 2009/12/02 18:20
名前: RADELLE03 ◆X6s/dtSC5A (ID: QYM4d7FG)

  違う————。
  メリットとか、デメリットとか、そんなんじゃなくて———。


 「 しょうがないよ、舞ちゃん…。今警察にマークされたりしたら
   それこそ終わりだよ !」

 「 そうだけど……さぁ」

ただ、全員でひたすら繰り返される速報を眺めながらその時を過ごした。
しかし、居ても立ってもいられないのは舞だけではなかった。

きっと今、みんなそれぞれいろんなことを考えていたが、全員思っていることは同じだっただろう。


  助けてあげたい……けど、今の私達だけじゃ———

今も日本のどこかで、自分と同じぐらいの年の子が必死で逃げ回っていることを
思うと、胸がしめつけられた。
そしてこの時、自分の無力さに気づいたのだった———。


  カチャカチャ……カチャカチャッ

不気味な音がドアのほうから聞こえてきた為、ダルシーの方を振り向くが、
鍵はかけたとでもいうように首を振っている。

すぐさま裕樹はテレビの音を消した。

沙紀は疑う目でドアのほうをじっと見つめているが、開く様子は無い。
それどころか、不気味な音も止まった。

  警察———まさか…尾行された ? !

  でもそんなこと、絶対にありえない——あんなに用心して入ったし———

だらだらと不安な気持ちが溢れ出すように、冷や汗が首筋をつたう。
舞は無意識のうちに、鞄の中の銃を握って構えていた。



何だ、何をしているんだと全員が思ったことだろう。
〝その〟音はしなくなった。
しかし、今度は扉を叩く音が聞こえていた。

全員が互いの顔をいっせいに見るが、誰一人行こうとする勇気あるものが居ない。
それどころか、ケンはほかの部屋へ逃げようとしていた。

  ———一人で逃げようとしやがって、あいつ——!

そこで渋々といった感じで裕樹が立ち上がり向かっていくと、何の躊躇も無くドアを開いた。

 「 ちょっ———」
ダルシーが何か言いかけたとき、入ってきたのは警察でもなければ大人でもない。
自分より少し年上ぐらいの、 眼鏡をかけた男の子だった。

裕樹がすぐさまドアを閉め、鍵をかけたのを確認すると、ダルシーが
その場に居た全員が安堵のため息をついた。


 「 ちょっと——合鍵持ってるんだからあけなよー」
 「 いやぁ、それがどっかに落としたらしくて——ー」

 「 ……はぁ…。舞、仲間の今崎孝助……ね…」
 「 あ、どうも。…孝助って呼んでくれればいいよ」

 「 こちらこそ…舞です、小野田舞…」

 「 あ、うちは沙紀。よろしく !」
 「 うん、よろしく———」

  あれ——沙紀、この人と初対面だったんだ———

 「 さてとー…ケン、あんた、真っ先に逃げようとしてたでしょ」
 「 あ、バレた ?」
 「 バレたじゃないよこの意気地なし ! !」

部屋の隅では、沙紀がケンの背中をゲシゲシと片足で踏んでいた。

 「 あ、久しぶりだなー裕樹 !」
 「 …あぁ…そうだったな——」
 「 え、知り合いなの ? 裕樹…」

舞が尋ねると、どうやら孝助と通う高校が一緒らしい。