ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

闇ニ舞ウ記憶ノ欠片【オリキャラ募集中】 ( No.0 )
日時: 2010/06/20 13:26
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: Wvf/fBqz)
参照: http://ameblo.jp/tykkm-rsms/

改めましてこんにちは。
黒翼(こくよく)と申します。
前のスレッドが消えてしまっていたので、立て直しました。
このスレッドでは短編のダーク的(?)な小説を投稿していきます。


【このスレッド内での約束】

 ★ダークが苦手! って方はブラウザの「戻る」でお帰りください。
 ★「中1の駄文小説なんて見たくねーよ」って方もお戻りください。
 ★荒らしさんはバックプリーズ。
 ★3行以下のコメントもお控えください。報告等ならOKとします。
 ★スレ内でのチャットも厳禁です。
 ★時々番外編なんてあるかも。ボカロオリジナルとか。
 ★キリ番を踏んでくださった方(50、100、150、200……)は、自己申告してください。
  リクエストをお受けします。
 ★更新速度はカメさんです。あげるのはOKとして、更新を急かすのはご勘弁を……
 ★連レスもお控えください。
 ★誤字脱字などは教えてください。


以上を守れる心の広い方のみ、下にスクロールしてくださって結構です。





 ——始まるよ。可哀想な少年少女の物語が。
   ボクの名前は『アリス』。このセカイ……物語の案内人さ。
   ボクの鍵が絵本を開く鍵さ。君の魔法とボクの鍵。
   それで開くよ、黒翼の綴る物語を——


★泉水市立翼ノ中学校図書室案内★


——……一気に全部読むの? >>0-

1冊目【狂気ノ歌】 囚人紹介:出雲 雄治>>1
1ページ目:>>2 2ページ目:>>5 3ページ目:>>7
2冊目【鏡影ノ意】 囚人紹介:木川 流星>>8
1ページ目:>>9 2ページ目:>>10 3ページ目:>>11 4ページ目:>>12
3冊目【携帯召使】 囚人紹介:飛鳥 輝>>13
1ページ目:>>14 2ページ目:>>16 3ページ目:
4冊目【戦闘態勢】 囚人紹介:藤野 晶
1ページ目: 2ページ目: 3ページ目:
5冊目【バースト】 囚人紹介:柴田 暁
1ページ目: 2ページ目: 3ページ目:
6冊目【destiny】 囚人紹介:(5名)
1ページ目: 2ページ目: 3ページ目:
7冊目【恋ト誘惑】 囚人紹介:柏 有紀
1ページ目: 2ページ目: 3ページ目:
8冊目【我ニ信仰】 囚人紹介:東雲 彩
1ページ目: 2ページ目: 3ページ目:


 *゜*゜。長編。゜*゜*
【destiny:Ⅱ】 囚人紹介:(6冊目のdestinyの5名+1名)
 1章:出会い
 2章:いざ、帝国へ
 3章:正体

 。゜*。*冊子(番外編)*。*゜。
 【終焉を告げるは夢】>>17

  囚人紹介:藤野 晶  出雲 雄治  飛鳥 輝




 ★本校の図書室にご来室された方★ (引継ぎ)
・nanasi様
・凛様
・リラ様
・†*゜風羽栞゜*†様
・瑠花様

Re: 闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.1 )
日時: 2009/12/01 22:08
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

 ——1冊目の絵本の囚人。彼はこんな人だよ——

出雲 雄治【イズモ ユウジ】
中学3年生 15歳 サッカー部 3年3組
喧嘩っ早く、学校内では暴力的問題児。
彼がブレザーで登校するのは学校集会のときくらいで、常時ジャージ。
真っ黒い短髪、ワックス使用。

闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.2 )
日時: 2009/12/01 22:09
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

  1冊目【狂気ノ歌】 1ページ目

——記念すべき第1冊目は、『雄治』っていう少年の話みたいだよ。
     ……わぁ、学校って、こんなに怖かったっけ……?——





「おはよう、アキ」

 俺はいつもどおり、朝『晶』——通称アキと登校するために会いに行った。
 でも、そこにアキはいなかった。否——変わり果てたアキの姿があった。
 爛れた皮膚、腐れ落ちた目玉。

「あッ……アキ……!」

 情けない。
 俺はアキの姿を見て後ずさりしてしまった。

「ゆ……」
「え……?」
「ゆ……じ……」

 アキは苦しそうに俺の名を呼んだ。
 けど、表情には笑顔を浮かべていた。仲間を求める生ける死体——
 ゾンビとなって。
 俺は震えて動かない足を自分で殴りつける。
 アキが迫ってくる。餌食にされて終わり、なんて——絶対嫌だ!
 たとえアキが相手だろうと、犠牲者だろうと——

『ごめんね、アキ』

 俺は心からそう言った。

「おぁああああぁぁぁああぁッ!」

 俺は自分のチャリを全速力でこいだ。
 学校なら、なんとかなるかも知れない——そう信じて、学校まで
 迫ってくるアキを振り切っていく。

『悪い夢だ』

 そうだ。
 きっと悪い夢なんだ。
 学校へ行ったら、きっと休み時間保健室にいる俺がいて、みんながいて——
 そうに決まっている。こんな親友が酷い目に遭うような悪夢、もう御免だ。
 後ろを振り返ると、アキはまだ追ってきていた。
 よりおぞましさを増し、狂おしさまで伝わってくる。
 もう、アキじゃないような感じがした。
 この位置からは学校が見える。死に物狂いで激チャリだったから、
 10分掛かるところを5分でつけたらしい。
 時計は8時10分を指していた。
 職員玄関前にチャリを置き捨て、土足で校内へと駆ける。

「はぁっ……はぁっ……」

 上がった息を整える暇もなく、手当たり次第に人を探した。
 ホールの中心から、上、横、後ろ——最初に見つけたのは、木川だった。
 安心感を隠せず、だが緊張感も隠せなかった。
 助かった——そう思いたかったのに。

「おいっ! 木川——」

 俺の願いは、儚く散った。


〜NEXT:2ページ目〜

Re: 闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.3 )
日時: 2009/12/02 09:20
名前: nanasi (ID: ODIW5iE0)

あぁぁぁ

やっと見つけた

消えちゃって落ちこんじゃってたんだよね

今度もがんばってください!!

(以上学校のパソからの書きこみでした)

Re: 闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.4 )
日時: 2009/12/02 13:27
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

 nanasiさん

すみませんでした。
学校からって平気なんですか? とりあえず、コメントありがとうございます。
コピー投稿となりますが、目次は随時更新したいと
思いますので、これからもよろしくお願いします!

闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.5 )
日時: 2009/12/02 13:42
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

 1冊目【狂気ノ歌】 2ページ目


「嘘……だろ?」

 ふざけてる。こんなことある訳がない。
 悪夢? 裏組織の陰謀?

「き、木川まで……!」

 アキと同じだった。
 融けた肉に腐敗臭。

「ニン……ゲ……」

 木川は口を動かす。
 あまりよく聞き取れなかったが、俺の事を指したのは確かだ。
 骨の覗く木川の指は、俺を示していた。
 木川以外の人は居ないかと見回したその時だった。

「ニ、ン……ゲン……」
「エモ……ノ……」
「ニン……ゲン……」
「……ンゲ……ン……」

 嘘だ。
 体中に寒気が走った。
さっきまで誰もいなかったのに、今は
 生きた俺を囲むように全校生徒・先生がいる。みんな中心の
 俺に手を伸ばして群がり、唸っている。

「あ……ぁ……」

 虫酸が走る感覚というのが理解出来た。
 プライドが今なら捨ててしまえる程の恐怖感に襲われた。
 腰が抜けて床に座り込んでしまった。
 格好イイとか悪いとか言ってる場合じゃない。

「や……やめ……」

 よせ……俺に近寄るな!
 そう言いたくても、声が上手く出ない。
 恐怖で呂律が回らない。



















 ——孤独。



















 俺の回りはみんな死んでる。
 生きながら死んでる。 木川も、先生も、後輩やみんなも——

『嫌だ……こんな所で死にたくない!』

 目の奥に熱く溢れる涙の意味は、自分でもわからなかった。
 恐怖、後悔、憎悪——負の感情が俺を取り巻く。
 ひとつの手が、俺に向かって伸びる。30センチ、
 20センチ、10センチ——近づく制限時間。
 俺の生命のタイムリミット。
 俺は、それを受け入れる事にした。

『——……』

 心にメッセージを残した。
 一本の腕が振り上がる。
 5、4、3、2、1——

「待て!」

 聞き慣れたような声。
 いつも聞いていたような、
 気が動転しているだけか、気の所為か?

——違う。

 ちゃんと知ってる奴だった。
 中央階段から下り、道を避けるゾンビたちの
 合間を通ってそいつは俺に手を差し延べた。

「大丈夫か、出雲」
「柴田……!」

 俺は“柴田”を見てどれだけ喜んだだろう。
 今の俺には救世主に見えた。

「ニン、ゲ……」
「! 出雲、行くぞ!」
「何処に!?」
「とりあえずついて来い!」

 俺は柴田に手を引かれるまま、一緒に走る。
 メールボックス側の職員室を通り抜け、引き付けた
 奴らを教室側で鍵を閉めて時間を稼ぐ。
 俺たちは最終的に、図書室に行き着いた。

「助かったぜ、柴田……」
「俺たち以外にも生存者がいると思わなかったぜ」
「たち……?」

 柴田ひとりしか見ていないが、どうやら
 図書室の奥にもうひとりいるらしい。

「大丈夫か?」
「柴、田……」
「輝!?」

 そこには、ソファーに横たわった輝がいた。
 顔は青ざめ、腕の傷から血が流れている。

「さっき木川にやられたんだ」

 柴田はジャージのポケットから取り出した
 包帯を輝の腕に巻きながら言った。

「中央ホールに気が集まっている間に鍵をありったけ集めて、
 保健室で包帯とか探して……中央ホールみたらこの騒ぎだ」

 俺は俯いちまった。輝の苦しそうな顔、
 柴田の沈んだ表情から目を逸らしたかったんだろう。

「雄治……」
「うん?」
「傷、から……どんどん腐食……してっテル……俺も……
直に奴らみたいにナる……攻撃を……喰ラう、な……」

 輝の言葉が少しずつ片言になっていってるのがわかった。
 その時。
 柴田が笑った。


「ニ……ゲンの……匂イ……」


 ドア越しに奴らの声が聞こえた。
 俺たちはどうなる? 死ぬか? 死ぬのか?
 ほかに道は?

「——なーんて」

 ……は?
 振り返った。瞬間——
 ふたりは、もう人間じゃなかった。


〜NEXT:3ページ目〜

Re: 闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.6 )
日時: 2009/12/03 17:26
名前: nanasi (ID: FvJ38Rf9)

こっそりすよ。

早く更新していただきたいですね(せかすせかす)

Re: 闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.7 )
日時: 2009/12/04 12:07
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

nanasiさん

頑張ります!
いやぁぁぁぁ……急がなくては……
よし、がんばるぞぉ!

闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.8 )
日時: 2009/12/04 12:07
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

  1冊目【狂気ノ歌】 3ページ目


 ……嬉しかった。だから、ショックが大きかった。

「俺ノわざ……ニンゲン化ケ」
「なっ……じゃあ!」
「わざノ効果ガ切レタダケダ」

 輝の衝撃の発言に、俺は絶望した。

「くそっ!」

 鍵のかかった図書室のドアを、一生懸命に開けようとした。

「無駄ダ」

 開けるのは無謀? そんなコトで諦めるもんか。


“死にたくない”


 それが原動力だ。
 けど、柴田——否、死体が言ってる意味は違った。


“開けても無駄”


「うわッ!?」

 忘れてた。
 ドアの向こうには奴らがいることを。

「ニン、ゲン……食ウ……」

 夢だって言ってくれ!
 現実なら、俺を生かさせてくれ!
 せめて人の元へ行かせてくれ!
 こうなったら逃げ道はひとつ。
 助走をつけて、思いっきり身ひとつで窓ガラスにダイブした。
 キラキラ舞うガラスの破片。
 奴らはそれを呆然と見ていた。





——勝った。





 逃げ切った。
 俺は駐輪場に立ち尽くした。
 追ってこない奴らを見、勝ったと確信した。










 ——刹那。










「雄治」

 背後から擦り寄る冷たいモノ。
 それは確実に俺の身体を捕らえていた。

「——!」
「オレヲ忘レナイデ」





 ——アキは、俺の背でニタリ、と笑った。




















——1冊目終了っと。お疲れ様。
  なんか、ぱっとしなくなかった? 気のせいならいいんだけど……とりあえず、ありがとう。閉じよう——

Re: 闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.9 )
日時: 2009/12/04 12:10
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

 ——2冊目の絵本の囚人。次も男かぁ……——

木川 流星【キカワ リュウセイ】
中学3年生 14歳 男子バスケ部 3年4組 図書委員
頭がよく、大人しい。が、イジられキャラ(下ネタ的な内容で)。成績は学年首席を誇る。
少し長めの茶髪、見かけによらず、極稀にはっちゃける。

闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.10 )
日時: 2009/12/04 12:11
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

  2冊目【鏡影ノ意】 1ページ目


——鏡……影……闇……醜態……この図書室や図書室そのものであるボク自身に
   似ている……可哀想。通常の人間ならね。黒翼や君には、耐えられるかな?——








姿見——それはその名の通り、姿を映し出すもの。
では、自分の醜い姿を映し出す鏡があるならば?
——俺は触れてしまった。もう、戻れない。


『貴方ノ影ニ呪イヲカケマショウ……』

 目覚めた俺の頭に深く刻まれた言葉。
 昨日母さんの買ってきた姿見を見てから、身体の感覚がどうにもおかしい。

「俺の、影——」

 俺は朝日に当たって出来た自分の影を見た。
 特に変わったところはなく、普通の影である。

「気の所為か……」

 俺はリビングに向かう。
 その時だ。

 ——影は意思を持ち、不気味に微笑んだ——

 俺はそれに気づけなかった。
 ただちょっと立ちくらみがしたくらいで、いつもと変わらぬ朝を過ごした。

「行ってきます」

 7時45分。俺は家を出た。

「————……」
「!?」

 突然の囁くような笑い声に動揺してしまった。
 “影”——
 その存在が、俺を追い込む。
 俺の身体が黒く染まっていく——否、影が俺、俺が影になっていく。
 欲望の塊が、一気に俺の身体の中で溢れかえり、気持ちが悪くなる。
 途端、俺は感情の操作が出来なくなる。
 影の影となり、俺自身のコントロールが出来ない。
 影として見ているだけ。

『影ニ支配サレルノハ御免ダ』

 ——違う!
 影はお前だ!
 そう強く思ったときに、影は力を弱めた。

「はぁっ……はぁっ……」

 俺は、脱力してその場に座り込んでしまった。
 腕時計を見ると、8時5分を指している。
 こんなに長い時間、俺は影と闘っていた——精神力の闘い。
 俺は、まず学校に行くべきだと思い、学校へ向かった。
 しかし、歩いていても辛い。気持ちの悪さが晴れず、あの言葉も離れない。

『貴方ノ影ニ呪イヲカケマショウ』


 〜NEXT:2ページ目〜

闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.11 )
日時: 2009/12/04 12:12
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

  2冊目【鏡影ノ意】 2ページ目


『貴方ノ影ニ呪イヲカケマショウ』

 姿見は、俺の欲望を映していたのかも知れない。
 学校に着くと、遅刻ギリギリだった。
 具合が悪く、ゆっくり歩いてきたからだ。

「あれ、流星?」

 俺の名を口にしたのは、と振り返ると、柴田 暁と飛鳥 輝がいた。

「暁……」
「どうした? 顔青いぞ?」
「保健室行ってきたら?」

 暁と輝はそう言って靴を履き替えると、保健室まで付き添ってくれた。

「失礼します」
「どうしたの?」

 保健医の弥勒先生は俺に問う。
 ——言えるかよ。
 「影にとり憑れました」なんて誰が信じる?
 現実的な大人になんて尚更だ。

「……朝起きてから気持ち悪くて」

 適当にごまかした。
 そう言えば大体仮病も通る。

「じゃあ、ベッドに横になりなさい」
「大事にな、流星」
「うん。ありがとう」

 俺は窓際のベッドの布団にもぐりこむ。
 影があれば、また厄介になるからだ。
 ならば、最初から暗がりにいればいい。

「木川くん、熱はかってみようか」

 弥勒先生に渡された体温計を脇に入れる。
 窓からは新ジャージで体育をする1年の姿が見えた。

 ——窓? 上からは蛍光灯?

 俺は咄嗟に左下に目線を落とした。





 影だ。





「……!」

 布団を頭からかぶる。
 影がなければいい。だけど今、作ってしまった。見てしまった。

『影ガ身体使ッテンジャネェヨ』
「!」

 頭に響く、影からの声。

「……んだよ、これ……!」

 俺は——










 ——カ ゲ ?










 俺は、影なのか?
 本当の“俺”は、“俺”ではないのか?
 “俺”の“影”に、俺という存在を否定されたようだった。
 影が俺の身体を乗っ取れば、影からしたら“俺”は“影”。“影”の“影”。

「はぁ……はぁ……」

 呼吸が荒くなる。
 影が身体に憑依し始めたか、手が黒く染まっていく。
 影が色づく。

 影は俺になる。
 俺が影になる。
 俺は影になる。
 影が俺になる。

 頭が狂う。
 訳がわからなくなってきた。数学や理科で解ける問題じゃない。
 こうして精神が不安定になると、影はより力を増す。

「木川くん?」

 弥勒先生の声なんて、苦しくて聞こえなかった。
 朦朧とする意識は、“俺”である“影”に融けて消えた。

「木川くん、大丈夫?」

 俺は、そのままベッドで深い眠りに落ちた。


 〜NEXT:3ページ目〜

闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.12 )
日時: 2009/12/04 12:12
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

  2冊目【鏡影ノ意】 3ページ目


『俺ノ影ハ大人シク影トシテ見テイロ』


「!」

 俺はベッドから飛び起きた。

「今、のは……」

 チャイムが鳴り響く。
 時計を見ると、3時間目終了を告げるものだとわかった。

「先生、眠ィ」

 惚けたような声で保健室に入ってくる誰か。
 声色から察して、出雲たちだ。

「誰か寝てんの?」

 病人覗く馬鹿があるか。
 ベッドのある場所と先生たちのいるところは、出雲が
 開けたことによってカーテンが遮りをやめた。

「……木川? ってその目ェどうした!?」

 真っ赤に充血した目が、窓ガラスに映る。
 だが、それより驚いた事がある。





——映りこんだ俺は、影のように身体を染めている——





「い、出雲……」
「ん?」
「俺の身体……黒くないよな?」

 出雲は目を上下させ、俺の身体の異常を探した。

「大丈夫だけど……つか、性に合わない冗談よせって。身体は黒くならないから」

 出雲は笑ってそう言った。
 初めて出雲を羨ましく思った。

「悩みのない馬鹿も良いものだな」
「なんか言ったか?」
「別に」

 そして出雲たちは先生に促され、教室に戻っていった。

「先生」
「木川くん……大丈夫? さっき発汗して苦しそうに寝てたけど……」
「はい。あの、目薬くれませんか? 目が充血してるみたいで」

 俺は何事もなかったように平気で突き通した。
 余計な心配されてもあれだからな……。
 目薬下手にうつってのもあれだけど、うたないよりはマシか。

「なんだろうね……はい、目薬」
「ありがとうございます」

 上を向き、目薬をうつ。
 ……やべぇ、めちゃくちゃ沁みる……痛い。

「具合はどう?」
「大分よくなりました……授業に戻ります」

 そう言って、俺は保健室を後にした。

「……っ、く……」

 まだ全快していない。
 出た瞬間、膝をついてしまった。
 目眩に吐き気……





——……。





 俺はなにかを悟った。
 4時間目終了のチャイムが鳴り響く。
 俺は3年2組を訪問した。

「あんれ? 木川? 珍しいね」
「柴田……いる?」
「おう、いるぜ。暁ーっ、木川が」





 ——助けてくれ、柴田。俺には、もうお前しかいない。

 〜NEXT:4ページ目〜

Re: 闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.13 )
日時: 2009/12/04 12:14
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

  2冊目【鏡影ノ意】 4ページ目



「信じて……もらえないかも知れないけど……暁、お前にだから言う」

 俺は昨日からの出来事を暁にすべて話した。
 姿見に始まり、影に体調——

「そうか……」
「暁、俺——」
「大丈夫だよ、流星。だったら、その鏡を割っちまえばいいんじゃねぇの?」
「え……?」
「そしたら、鏡の中の影と一緒に消滅、ってね」

 ——鏡を割る——
 忌まわしき鏡を破壊する。
 そこに映る鏡影の俺とともに。

「うん……暁、ありがとう」
「困ったときはお互い様だぜ!」















 それから一週間。
 俺は、まだ鏡を割れてない。
 未だ、あの悪夢と闘っている。拡大する影の力を恐れたからだ。
 だけど、もう決めた。日に日に増す強さに耐え切れず、俺は鏡の前に立つ。

「……ッ!」

 震える手に金属バットを握る。
 頭上にバットを振りかざした。
 だが、タイミングの悪いことに、“症状”がやってきた。

『今度コソ終ワリダ』
「——ぐぁっ……!」

 割れるような激しい頭の痛み、劈くような耳鳴り。
 影が体内に入ってくるのが、はっきりとわかる。
 その逆も。
 俺が体内から抜けて、冷たい闇に融ける感覚。
 そこから見えたのは、反転した“俺”。

 俺は“鏡の中”だ。

「鏡ヲ壊シタイノダロウ?」
『待てッ……駄目だ!』

 立場さえも、鏡に映したように反転した。
 いつ消されるかわからない不安。
 逆は、影の支配という優越感——

「壊シタイト願ッタノハ“俺”ダ、俺の“影”」

 影は人。人は影。
 主の影と、影の主は、同じ事を思う。

『違う! 俺は影じゃない! 俺は——』
「俺ハ“木川 流星”ダ」
『っ……! 俺はっ……! 俺、は……』

 誰だろう。
 証がない。
 そんな迷いが、奴に隙を与えてしまった。
 まもなく、姿見とともに鏡影の俺は割られた。


「流星! なにしてるの! 買ったばかりの鏡割っちゃって……」
「ごめんね、母さん。でも、もういらないんだ」

 傍らの金属バットを手に、“主”は女性を手にかける。
 紅く染まる“主”の部屋。

「いらないんだ、なにもかも」

 ——影は、なにもなかったかのように、俺として過ごす。
 鏡の破片は、影のように黒かった。
 もちろん、俺はこんな“主”につくのは御免だ。
 巡る主と影戦争。
 俺は、俺という主——否、影にこう誓う。





『——復讐シテヤル』

闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.14 )
日時: 2009/12/04 12:15
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

 ——3冊目の絵本の囚人。6冊目まで男て……飽きるわ!——

飛鳥 輝【アスカ ヒカル】
中学3年生 15歳 男子卓球部 3年3組 保体委員
成績は中の上。持ち前のルックスに+眼鏡。
頭は良いのに変なところで馬鹿。
卓越したゲーム技術をもつ。

闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.15 )
日時: 2009/12/04 12:16
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

 ——黒ったら。次は『携帯召使』ねぇ……——
「携帯が働くワケないからね」
 ——う……何故……ま、始まるよ——




  3冊目【携帯召使】 1ページ目


———————————————————————————————
TO:雄治
FROM:090-XXXX-XXXX

 本文
*****************************************

 うちのクラスに転校してきた遠山
 っていただろ? あいつと話した
 ことあるか?
 イイ奴かなーと思って話してみた
 ら、上から目線でくるんだ。雄治
 話すのはいいけど、絶対喧嘩すん
 なよ?

        -END-

———————————————————————————————


「送信、と」

 俺は雄治にメールを送り、携帯を閉じた。
 ベッドに倒れこみ、枕に顔をうずめる。
 一週間くらい前に3組に転校してきた『遠山 睦月』。
 あいつと話してから、どうも苛立ちが収まんない。
 俺でこれだけ腹がたつって事は、雄治と話したらとんでもないと思う。
 雄治はプライド高いから。3年、しかも11月。もうすぐ受験って時に喧嘩なんて
 やったら、高校とか言ってる場合じゃないと思う。
 いわゆる『忠告』? みたいなものだ。
 
「あ」

 耳に着信音が届く。携帯を開き、メールを確認すると、雄治からの返信だった。
 メールには、『逆に殴りたくなるから(笑) おやすみ』
 と、書いてあった。
 寝るの早くない? とか思ったけど、単に雄治のことだから、
 返信がめんどくさいだけなんだろうな、と思い、返信はしないでおいた。

「あー、なんか殴りたいー」

 性にも合わず、雄治より殺気立ってるかも知れない。
 あ、明日金曜日だ。明後日から休み。
 早く寝よう。で、明日真面目に勉強しよう。
 そう考え、俺は部屋の電気を消した。





「さ、暁! 俺ら絶対遅刻!」
「喋ってねーで全力!」

 今日は珍しく俺ではなく暁が寝坊。
 通学路で自転車を飛ばして学校に向かっていた。
 学校が見える位置まで差し掛かったとき、チャイムが鳴った。

「やっべぇっ!」
「今日は遅れすぎた!」

 生活委員に目をつけられないように、自転車だけはしっかり駐輪する。
 3回切符だされたら撤去。遅刻より無理。歩いて30分かかるのに。

「じゃな、暁!」
「おう!」

 階段を駆け上がり、各クラスへ滑り込む。
 セーフだ。3組の担任はまだ来てなかった。
 これで遅刻は免れた。

「また遅刻かよ」

 小さい声で雄治は話しかけてくる。
 笑って頷いて俺は返し、鞄から教科書やら筆箱やらを取り出す。
 ふと、窓側の空席に目がいく。

「ああ、遠山は休み」

 ——なんでだろう。
 顔に思わず笑みが浮かんだ。


  〜NEXT:2ページ目〜

闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.16 )
日時: 2009/12/28 11:03
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: lPEuaJT1)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

  3冊目【携帯召使】 2ページ目


———————————————————————————————
TO:雄治
FROM:090-XXXX-XXXX

 本文
*****************************************

 学校がめんどくさい。
 インフルエンザ第二波、とかで学
 校休みにならないかな?
 塾の宿題片付けたいしな(笑)
 んなこと言っても仕方ないか。
 じゃ、おやすみ

        -END-

———————————————————————————————


『貴方の願いは私の願い』

 受信ボックスにはそう書かれたメールが届いていた。
 送り主のところには、自分の番号が明記されていた。
 なんとなく、そのメールは見るだけ見て閉じ、その日は床についた。


 が。


「もしもし、飛鳥です……出雲さん? はい……」

 次の日は母さんの電話の声で起きた。
 雄治の家から電話がかかってきたようだ。

「おはよう……雄治から?」
「ううん、お母さん。今日から週末まで、学年閉鎖だって」

 ——あれ?
 一瞬身体に寒気が走った。
 思ったことが現実になる? そんな馬鹿な。

「なんで?」
「新型インフルエンザの第二波なんだって」

 ……。
 突然の出来事に呆気を取られた。
 だって、まさかインフルエンザでの閉鎖なんて。そのまんまだろ?
 馬鹿げてるっていうか、なんていうか。
 若干優越感にひたった。

「……じゃ、いいか。宿題片付けよう」

 俺は部屋へと歩みを進めた。
 ドアを開けると、携帯が目に入った。
 メールの受信イルミが点滅していた。俺は携帯を手にとって受信ボックスを開く。

「俺、から……?」

 昨日と同じ。
 俺の携帯番号からのメール。悪戯では出来ない技である。

「“携帯に書き込んだことは現になる”……」

 雄治に送ったあのメール……。
 あれには確かインフルエンザの学年閉鎖みたいな内容を書いたような……。

「あれ、か」

 それはそうとして、どうして俺の携帯にはそんな力が?
 いつから? そもそも誰がどうやって?
 不可解な出来事に、宿題なんか手につかない。
 親に相談なんて笑い飛ばされて終了。無謀。

「んー……」

 気味の悪い携帯、とても便利な携帯、とらえ方はたくさんあるけど、俺は『変な携帯』だと思った。


【時間稼ぎに番外編かきます! 更新はしばしおまちおおお!】

闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.17 )
日時: 2010/02/04 19:58
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: kI4KFa7C)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

 冊子【終焉を告げるは夢】

——時間稼ぎの冊子公開だって。格好悪いよねぇ。
 「仕方ないだろ? 『携帯召使』以降は下書きがないんだから」
——言い訳? 格好悪いなぁ……館長として情けなくない?
 「う、五月蠅い! 取りあえず番外編、始めます! 夏休みに書いたんで文章劣ってます!
  あと名前は置き換えなんで、間違いあったら指摘してください!」





光は射せど——
地へ架かる螺旋の階段は永遠に続いてゆく——



ある街角の路地裏には、奈落へ続く穴があるとその町で噂になっていた。
男子中学生の3人——
だらしなさそうに制服を着崩して装飾した藤野、
ブレザーのボタンを全開に開けて黒髪を僅かに立てた出雲、
ワイシャツの第二ボタンまでが開いた茶髪に眼鏡を掛けた飛鳥が
遊びに、とその場所まで行ったと、彼らの友達は言う。
すぐ戻る、という言葉と裏腹に、取り返しのつかぬ事態になることは誰も想像しえなかっただろう。



路地裏に到着した3人は、着くなり駆け寄って穴を覗きこむ。

「底がねェってのには納得のいく暗さだな……」
「同感だな」

出雲と飛鳥は直径1メートル程の穴を興味深そうに覗き込む。
藤野は出雲に誘われるがまま、穴を覗きに行った。
藤野は「すげぇ」と言わんばかりの顔をして飛鳥と顔を見合わせた。
余程惹きつけられたのか、出雲だけは未だに興味深そうに覗きこんでいた。
穴に吸い寄せられるように風が出雲の態勢を崩した。

「……は?」

出雲は動いてもいないのに足を滑らせたように穴に右足を浮かせた。
そのままバランスを崩して引き寄せられるように右足を穴に踏み入れる。

「ぁえ!?」

藤野が出雲の陥っている状況を半ば理解しないままに驚く。

「なにやってんだよ!」

飛鳥は穴に落ちかかった出雲に手を差し伸べる。
出雲の手を間一髪で捉え、なんとか助けることが出来た。
穴の底から出雲のスクールバッグが地に着く音がした。

「——ッ!」
「大丈夫か!?」

出雲は、性にも合わず怯えながら頷いた。

「死ぬかと思った……ありがとう」
「それより……引き上げん……ぞ……!」

飛鳥は必死で出雲を穴から引き上げる。顔を難しくして、硬直していた藤野も我に返り、出雲の救出を試みた。
藤野は飛鳥の手に自分の手を添えて、出雲を2人掛かりで引き上げる。
その最中に、出雲の横をなにかが過ぎた。

「——落としたか」

そう呟いた飛鳥の顔には、掛かっているはずの眼鏡がなかった。
出雲はフリーだった右手を穴の淵にかけて、次に右足、左足とを自力で乗せて這い上がった。

「ったく……」
「底はあるみたいだな」
「死にかけたドジは凝りとけ」

3人の会話は、いつもと何変わらず楽しそうだった。
だが、底を知ってしまった彼らには、底知れない地獄が待っていた。
底を知った彼らは、好奇心を増していく。
出雲を引きこんだ『彼』は、決して3人を逃がしはしない——



「俺はあんなドジ踏まねェよ」

出雲は胡坐をかいて2人に言った。

「じゃあなんだよ」

飛鳥は笑い混じりに出雲に問う。

「……俺の右足、掴みやがった」

出雲は腕を組み、真面目な顔つきで言った。
藤野は出雲の向かいに座りこんで、話を聞く。

「定番なこと聞くけど、アザある?」
「ん……」

出雲はズボンを捲りあげた。
見事な人の手の形をした青アザが出雲の足首に出来上がっていた。

「アザになるくらい強くはなかったと思うけどな……」
「呪いだったりしてな」
「よせよ、輝」

笑いながらの飛鳥の発言に、出雲もまた笑って返した。
だが、出雲が意識を保っていられるのは、ここまででが限界だった。

『空ケ渡セ』
「——?」
「雄治?」
「今、声が——っ」

出雲はあたりを見回した。後に頭を抱え込み、顔を歪めた。

「——ぁぁあッ!」
「雄治!? どうした!?」

急に喘ぎだす出雲の肩に手を置き、藤野は出雲を揺すった。
飛鳥は自分の鞄から携帯を取り出し、119番に速攻で掛けた。

「——ぁっ……あき、ら……?」
「雄治?」
「俺は大丈夫……それよりさ、底があるなら入ってみようぜ!」

出雲の様子はどこかおかしかった。
嫌に明るく、楽しんでいるような——

「いいのか?」
「せーの、で飛び込もうぜ!」

藤野も飛鳥も、違和感のある出雲に不審を抱いたが、親友を信じ、穴へ飛び込んだ。
出雲——否、『彼』の欲望は、この瞬間に叶うこととなった。

「——痛ッ!」
「輝!?」

落ちた衝撃とその上に着地してしまった藤野で、飛鳥の右足は自由が利かなくなってしまった。

「ごめんっ——!」

藤野は飛鳥に謝った。飛鳥はそれを宥めるように許した。
藤野と飛鳥の声は響くも、出雲の声だけは聞こえない。

「雄治……?」





「ん……」

出雲はゆっくりと目を開け、上半身を起こした。
藤野を見つけようと、見えないあたりを見まわすが、見えるのは漆黒の闇だけ。

「アキ……輝……」
「雄治……其処から前に歩いてきて」

出雲は声だけ聞こえる藤野に言われるがまま、真っ直ぐに歩いて行った。
その場所に、闇に溶けたように藤野は立っていた。

「晶……!」
「雄治!」

抱き合った瞬間、出雲を襲ったのは、痛み——
生温かい鮮血が、出雲の腹から滴る。

「晶じゃ……」
『オ疲レ様』

力なく倒れた出雲の右足首には、青アザがなかった。
変わりに、藤野に扮装した青い——不気味に微笑んだ巨人が立っているだけだった。
『彼』は、欲望に利用した出雲を捨て、次は『彼』自身の手で2人に手を下す。
餌食となる時間は、近し——



「輝……」
「——ごめんな、晶……逃げてくれ」
「嫌だ……置いてけない」

藤野は飛鳥の足を見て憂いの表情を浮かべていた。
俯き、それを悔やむかの様に。飛鳥は「仕方なかったんだよ」と、藤野を慰めた。

『——見ツケタ』
藤野は、その巨人を見た瞬間、肩を竦ませた。
飛鳥もそちらに視線をやり、藤野に笑いかけた。

「晶——逃げて」
「でも……」
「早く! 俺たちの分も生きろ!」

飛鳥は藤野に笑い、そして泣いた。
藤野は、その意思を受け取り。
駈け出した。

「晶、ありがとう——」

飛鳥は、巨人に弄ばれた後に、頭部を失うこととなった。

『後ハ——オ前ダケダ、藤野アキラ——』

残酷な運命からは、逃れることが出来ない——
抗えぬ宿命を、藤野は受け入れなければならない。
好奇心が招く、永遠の悪夢——
それこそが、奈落。



「っ、光——」

穴の下、一筋の光が差し込むところに、光まで届く螺旋の階段があった。
光と陰——人間の性格が表裏一体となったような——を表した歪な階段だった。

「オレたちの落ちたところに階段なんかなかった……穴はほかにもあるっつーのかよ」

藤野のもとへも、やはり巨人は現れた。
不敵に笑みを浮かべ、舌舐めずりをする。
その音に気付いた藤野は、振り返ってしまう。
——藤野だけは、その存在にも恐怖を抱くこととなろう。

「——っ!?」

巨大な顔に収まる大きさの違う目。不気味に笑っている血痕が残った唇。
大きな頭にはつり合わない、160センチ程の身体。

「デカい……!」

藤野の足は震えていた。
立ちあがろうと必死で手を床に立てるが、おぞましい殺気に負けて立てなかった。

『俺たちの分も生きろ——』
「雄治……輝……」

藤野は2人の気持ちを無駄にはせず、その場から走り去った。
背後から追ってくる巨人。『彼』により、藤野の希望はすでにかき消されていた。

「さっきの螺旋階段……!」

藤野は光の射す方向へと駈け出した。
青の巨人は笑った。藤野を追うように、つかず離れずのスピードで——

『無駄ナこと……』



「——長すぎやしねぇか……? コレ……」

藤野は螺旋階段を駆け上がっていた。
青の巨人はまだ現れていない。

『止マッタ時ガ、オ前ノたいむりみっとダ』
「は——?」

藤野の脳に直接伝わる死の宣告——
藤野は止まることを制限され、走ることを余儀なくされた。

「誰だよ!? ふざけるな!」

藤野が止まった時、下から階段を上ってくる音が響く。
走るたびに藤野の足はじきに朽ち果て、2人の二の舞となるだろう。

「はや……い……!」

姿が見えようかという距離で藤野は走り出した。
つかず、離れず。つまり——
藤野は、走っても疲れるだけであり、止まっても自らの終焉を迎えることになる。

「いつまでっ……続くんだよ!」

疾走悪夢——
その螺旋階段に果ては存在しない。
藤野は在りもしない光に向かって、虚しく続く虚無への階段を駆け上がっていった。
永遠に逃れられぬ闇。奈落には底が存在する。だが、いくら手を伸ばそうと光を掴むことはない。
藤野は、延々と続く螺旋階段を上り、巨人から逃げるしかない。
だが、彼を待ち受けるのは——『すべての終焉』。
やがて、射しこむ光は大きくなる——
が、背後の巨人は笑っていた。

『ジラスナヨ』

藤野に巨人の持つ『口』という名の虚無が被さるその瞬間——






 











 











 













 














 














 










 













 







「っつー夢を見たんだけどさ」
「俺もみた!」
「絶対あれ隣町だよな」
「行ってみっか!」

藤野も、出雲も、飛鳥も、生きる好奇心を抑えはしなかった。
夢の中に生きる少年たちは、永遠に目覚めぬ夢主の夢からは逃げだせない。
——現実は、誰かの夢である。

『抗エヌ宿命ダト言ッタダロウ』



光は射せど——
地へ架かる螺旋の階段は永遠に続いてゆく——
見える光、包む闇、掴めぬ光、囚われの無垢な少年たち。
もとの世界には二度と戻ることなかれ——

Re: 闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.18 )
日時: 2010/02/04 20:03
名前: 黒翼@お知らせ ◆ERZNJWqIeE (ID: kI4KFa7C)
参照: http://ip.tosp.co.jp/i.asp?i=wing10_5

こんばんは、失踪していた黒翼です。
えっと、事情はともかく別のサイトに続きを更新しようと思います。
続きを見てくださる方は、お手数ですがそちらを見てください。
すみません。
URLからいけます。

闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.19 )
日時: 2010/06/20 13:00
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: Wvf/fBqz)
参照: http://ameblo.jp/tykkm-rsms/

非常にお久しぶりです。
黒翼です。
申し訳ありませんが、短編を中断して長編を書きたいと思います。
そこで、みなさんからオリキャラを募集したいと思います。
先着4人、執事かメイド(各2名ずつ)になります。
以下のテンプレをご使用ください。
 ※注意※
・応募していただいたキャラは『 絶 対 に 』死にます。
ご了承ください。

———————————————
【名前】
【性別】
【年齢】
【容姿】(髪、瞳などの特徴)
【性格】
【補足】(生い立ちなど)
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Are you a lost-killer? ( No.20 )
日時: 2010/06/20 17:02
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: Wvf/fBqz)
参照: http://ameblo.jp/tykkm-rsms/

 【人物紹介】
一瞬しか出てこない人もいると思いますが。
要は主要人物の5つ子くらいに目を通してくださるだけで結構です。


 *5つ子* 小学5年生・10歳
鮎海シノ <長男> しっかり者の長男。口は悪いが正義感が強い。
鮎海ユキ <長女> ボーイッシュで可愛い元気っ子。意外と毒舌。
鮎海ユウ <次男> お調子者の次男。算数と理科以外はダメダメ。
鮎海トキ <三男> 不思議な雰囲気漂うミステリアスな天然くん。
鮎海ジウ <次女> 血縁はなく、実はアキラの友の子。生年同一。

 *両親*
鮎海アキラ <実父> 鮎海グループの統治者。ジウをあまり良く思っていない。
鮎海ミチル <実母> 鮎海に嫁いだ者。マナー、礼儀作法などはパーフェクト。

 *奉仕人*
縁野シンジ <総責任者>  奉仕人の総責任者。年齢不詳だが、有能である。
紫雲寺ヒジリ <執事長>  執事の最高責任者。世話焼きで、面倒見が良い。
後藤田ホノカ <メイド長> 落ち着いた雰囲気を醸し出す厳しく優しい女性。
摂津ユキハル <庭師>   館の庭を手入れする熟練者。ユウのいたずらに頭を抱える。
南ヨシマサ <料理長>   皆の好物を知り尽くす。苦手を克服させるのもお手のもの。
東レイナ <社長秘書>   アキラの秘書を務める。革の手帳には速記文字がぎっしり。
長谷ナルミ <家庭教師>  5つ子の家庭教師。大学1年だが、とても頭がよい優秀者。
按田ショウ <取引相手>  鮎海と現在取引をしている按田グループの社長。常時笑顔。