ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.13 )
- 日時: 2009/12/04 12:14
- 名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
- 参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/
2冊目【鏡影ノ意】 4ページ目
「信じて……もらえないかも知れないけど……暁、お前にだから言う」
俺は昨日からの出来事を暁にすべて話した。
姿見に始まり、影に体調——
「そうか……」
「暁、俺——」
「大丈夫だよ、流星。だったら、その鏡を割っちまえばいいんじゃねぇの?」
「え……?」
「そしたら、鏡の中の影と一緒に消滅、ってね」
——鏡を割る——
忌まわしき鏡を破壊する。
そこに映る鏡影の俺とともに。
「うん……暁、ありがとう」
「困ったときはお互い様だぜ!」
それから一週間。
俺は、まだ鏡を割れてない。
未だ、あの悪夢と闘っている。拡大する影の力を恐れたからだ。
だけど、もう決めた。日に日に増す強さに耐え切れず、俺は鏡の前に立つ。
「……ッ!」
震える手に金属バットを握る。
頭上にバットを振りかざした。
だが、タイミングの悪いことに、“症状”がやってきた。
『今度コソ終ワリダ』
「——ぐぁっ……!」
割れるような激しい頭の痛み、劈くような耳鳴り。
影が体内に入ってくるのが、はっきりとわかる。
その逆も。
俺が体内から抜けて、冷たい闇に融ける感覚。
そこから見えたのは、反転した“俺”。
俺は“鏡の中”だ。
「鏡ヲ壊シタイノダロウ?」
『待てッ……駄目だ!』
立場さえも、鏡に映したように反転した。
いつ消されるかわからない不安。
逆は、影の支配という優越感——
「壊シタイト願ッタノハ“俺”ダ、俺の“影”」
影は人。人は影。
主の影と、影の主は、同じ事を思う。
『違う! 俺は影じゃない! 俺は——』
「俺ハ“木川 流星”ダ」
『っ……! 俺はっ……! 俺、は……』
誰だろう。
証がない。
そんな迷いが、奴に隙を与えてしまった。
まもなく、姿見とともに鏡影の俺は割られた。
「流星! なにしてるの! 買ったばかりの鏡割っちゃって……」
「ごめんね、母さん。でも、もういらないんだ」
傍らの金属バットを手に、“主”は女性を手にかける。
紅く染まる“主”の部屋。
「いらないんだ、なにもかも」
——影は、なにもなかったかのように、俺として過ごす。
鏡の破片は、影のように黒かった。
もちろん、俺はこんな“主”につくのは御免だ。
巡る主と影戦争。
俺は、俺という主——否、影にこう誓う。
『——復讐シテヤル』